W杯までに知っておきたいサッカー用語の第32弾。今回は「偽SB」を解説。(C)Getty Images

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 聞いたことはある、何となく意味も分かる。でも、詳しくは知らない。そんなサッカー用語を解説。第32弾は「偽サイドバック(SB)」だ。

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 クラシカルなサイドバックは、サイドラインを上下動する役割を担うが、偽サイドバックは意図的に内側へポジションを移し、中盤的な役割を果たす。そのポジショニングを指すこともあれば、そうした役割を得意とするタイプの選手を指す場合もある。

 英語では「インバーテッド・フルバック(inverted fullback)」とも呼ばれ、ポジショナルプレーをベースとした戦術が広まる流れで普及した。

 この役割を広く知らしめた指導者が、ペップ・グアルディオラ監督だ。彼が率いたバイエルン・ミュンヘンやマンチェスター・シティでは、サイドバックがビルドアップ時に中央へ入り、ボランチのように振る舞うことで数的優位を生み出すメカニズムが構築された。

 代表的な例は、元ドイツ代表のフィリップ・ラームやポルトガル代表のジョアン・カンセロで、外側ではなく内側でプレーして攻撃の組み立てに関与している。
 
 偽サイドバックの主な役割は、ビルドアップの安定化と中盤の数的優位の確保にある。通常、相手が前線からプレスをかけてきた際、最終ラインと中盤の間で数的不利が生じやすい。しかし、サイドバックが内側に入ることで中盤の人数を増やし、パスコースを確保しやすくなる。

 また、中央でプレーすることでボール保持時の選択肢が増え、ポゼッションの質を高める効果もある。さらには外に開いたウイングを内側から追い越し、ゴールに直接関わるようなプレーが有効な選択肢となりうる。

 偽サイドバックは、攻守の切り替えにおいても重要な役割を担う。攻撃時に中央にいるため、ボールを失った直後のカウンタープレスに即座に関与でき、相手の速攻を未然に防ぐ位置にいる点が大きい。

 一方で、この戦術にはリスクも伴う。サイドバックが内側に入ることで、本来カバーすべきサイドのスペースが空きやすく、相手にサイド攻撃を許す可能性がある。そのため、ウイングやセンターバックがスライドしてカバーするなど、チーム全体での連動が不可欠だ。

 こうした流れは、サイドバックがビルドアップで重要な役割を果たす流れにも適合している。かつてはラームのような選手が異端だったのが、最近ではドイツ代表のヨズア・キミッヒをはじめとしたボランチとサイドバックの両ポジションをハイレベルにこなす選手が増えてきているのは、注目すべき潮流と言える。

文●河治良幸

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