盗難の標的となったポケモンカード、世界で被害相次ぐ コロナ禍以降に急増

ニューヨーク(CNN)先月7日未明、米ワシントン州グラハムの店舗で、2人組の窃盗犯が防犯用フィルムの貼られた窓を打ち破って侵入した。警報が鳴る中、大型容器に商品を詰め込み、2分足らずで約1万ドル(約158万円)相当を持ち去った。
標的はポケモンカードだった。
今回被害に遭った店舗「ネクスト・レベル・ザ・ゲーマーズ・デン」では、こうしたコレクター向けカードを狙った盗難被害は初めてではない。これまでにも複数回にわたり被害に遭っているが、犯人は一度も逮捕されていない。
店舗オーナーのアンドリュー・エンゲルベック氏は、2018年の開業当初を振り返り、「最初の3年間は問題なかった」と語る。その一方で、「コレクター市場が過熱し始めて以降、状況は明らかに悪化した」と指摘した。
コロナ禍以降、ポケモンカード市場は急拡大し、それに伴い世界各地で盗難が急増している。今年だけでも、ラスベガスやニューヨーク、カナダのバンクーバー、英ノッティンガムなどの店舗が被害に遭い、盗まれたカードは総額50万ドル(約7900万円)を超える。
ポケモンカードは過去1年で価値が2倍以上に上昇し、小型で持ち運びやすいこともあって狙われやすい。
認定トレーディングカード協会の最高経営責任者(CEO)、ニック・ジャーマン氏は「犯人は数枚のカードを持ち去るだけで、数千ドルから数万ドルの価値を手にできる」と説明する。「転売も非常に速く、流動性が高い」
被害はコレクター向け商品を扱うショップにとどまらない。2月には、「ポケディーン」と名乗るポケモン関連の動画投稿者が、自宅が荒らされた被害の様子を投稿した。
数日間家を空けて戻ると、棚は空になり、部屋中で箱や引き出しが荒らされていた。ノートパソコンやゲーム機には手が付けられておらず、盗まれていたのは高価なポケモンカードだけだったという。
熱狂の背景最近の盗難増加の背景には、2月のポケモン30周年に向けた動きが影響していた可能性がある。
ポケモンは、日本のゲームクリエーターである田尻智氏によって開発され、幼少期の昆虫採集の体験が着想の源となった。最初のゲームは1996年に発売され、同年にはトレーディングカードゲームも登場した。その後、カードは約3年後に米国市場へ進出した。
それ以来、主力商品であるトレーディングカードの価値は上昇を続けている。トレーディングカード分析サイト「カードラダー」のデータによると、過去1年間でその価値は145%以上伸び、今年1月だけでも購入額は4億5000万ドル(約710億円)に達した。さらに2月には、インフルエンサーのローガン・ポール氏が、1枚のカードを過去最高額となる1650万ドルで売却した。
コレクター市場の専門家によると、著名人の影響力と世界的なファン層が、ポケモンの長期的な人気と価値の爆発的上昇を支えている。ノスタルジーと現在の人気が相まって文化的な存在感を保ち、ポケモンは史上最高の収益を上げるメディアフランチャイズとなった。
ジャーマン氏は「需要は世代を超えて広がっている」と語る。「子どもだけでなく、かつて親しんだ大人も含まれており、需要は衰えるどころか、常に更新され続けている」と指摘した。
トレーディングカード市場ゴールディンのCEOによれば、ポケモンカードは過去20年でスポーツ選手のトレーディングカードを上回り、S&P株価指数に対しても3000%上回る伸びを記録した。
巨額の利益と刑罰高額なポケモンカードの盗難は短期間で大きな利益を生む可能性がある一方、重い刑罰を伴うこともある。多くの州では1000ドルを超える商品の窃盗は重罪とされ、ポケモンカードの盗難はその基準を超えるケースが多い。
例えば、米フロリダ州タラハシーでは先月、窃盗の疑いで男が逮捕された。男は昨年7月から今年2月にかけて、複数の店舗でポケモンカードを計75回にわたり盗んだとされる。重罪の小売窃盗や盗品取引、マネーローンダリング(資金洗浄)の罪に問われ、最長で90年の禁錮刑に直面している。
ただし、犯人の検挙はまれだ。カードにはシリアル番号がないため、追跡がほぼ不可能だとジャーマン氏は指摘する。
エンゲルベック氏によると、ワシントン州の自店舗には四半期に一度の頻度で侵入未遂があるという。同氏は自ら対策を講じ、敷地内に監視カメラを設置したほか、警察の警告灯を模した赤と青の点滅ライトやサイレンも導入した。
こうした犯罪の中心にある小規模事業者は、物的損害や商品の損失だけでなく、保険面でも影響を受けている。
小規模店舗の経営者によると、ポケモンカードを狙った犯罪の増加により保険会社がカードショップの保険引き受けに消極的になっているという。
エンゲルベック氏も、自店の商品に保険を提供してくれる会社は1社しか見つからなかったと話す。
「盗難は小規模事業者に深刻な打撃を与えている」と同氏は言う。「実際の人間が被害を受けているのであって、決して被害者なき犯罪ではない」
