国立劇場

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 日本を代表する二つの大劇場の明暗が分かれている。一つは皇居からほど近い、千代田区丸の内の帝国劇場。近隣地域の再開発計画で今年2月から休館し、令和13年にリニューアルオープンするという。

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クロージング公演は大盛況

「現在、帝劇ではクロージング公演となるミュージカル『レ・ミゼラブル』が2月7日まで上演中です。チケットは発売直後に完売。連日満員の大盛況ですよ」

 とは演劇担当デスク。

「2月14日からは、帝劇と所縁の深い市村正親(75)や井上芳雄(45)といったベテランが出演するコンサートが開幕します。休館前最後の演目で、ここでしか入手できないオリジナルグラスやTシャツなどのグッズ付きのプラチナシートは3万7000円。最も安価な1万3000円の席も、すでに完売しています」

国立劇場

 初代の開館は明治44年。伊藤博文や渋沢栄一らが発起人となり、日本初の西洋式劇場として設立された。大正期には「今日は帝劇、明日は三越」との宣伝文句が流行語になったこともある。

関連イベントも華やかに

 2代目の竣工から59年を迎えた東京のランドマーク。隣接するビルを所有する三菱地所と、出光美術館、東宝が、地上29階、地下4階、高さ155メートルの高層ビルとする計画を昨年12月明らかにしていた。

「帝劇は地下2階から地上4階の低層部分に入り、7階から29階はオフィスとして活用されるそうです。解体・建設工事は本年度中に始まり、5年後の令和12年に完成予定ですね」

 ミュージカルやコンサートを中心とした舞台芸術の中心地だっただけに、関連イベントは華やかだ。

「2月には小説『博士の愛した数式』で知られる作家の小川洋子さん(62)が、帝劇を舞台にした新作『劇場という名の星座』の連載を月刊文芸誌で始めるとか。歌舞伎俳優の松本白鸚(82)や、昨年11月まで24年にわたってミュージカルに出続けた堂本光一(46)にも話を聞いているそうで、いまから話題を集めています」

 翌3月からは、銀座三越で帝劇の歴史をパネルや映像で振り返る「帝国劇場展」の開催も予定されている。

解体工事のめどすら立たず

 対照的なのが、一昨年10月に閉場した千代田区隼町の国立劇場だ。

 日本の伝統芸能を支える“ナショナルシアター”のはずが、いまだに解体工事のめどすら立たずに野ざらし状態が続いている。

 文化部記者も肩をすくめる。

「当初案では、ホテルやレストランを併設した複合施設になる計画でした。ところが、一昨年と一昨昨年に実施された事業者選定の入札が不調に終わった。令和11年にはこけら落としのはずでしたが、いまもまったく見通しが立っていません」

 昨年8月、文化庁は入札のハードルを下げるべく、必須としていたホテルの併設という条件を任意とした。さらには大手旅行会社と提携し、劇場内の舞台裏や楽屋といったバックヤードを見学できる一般向けのツアーを始めている。

「並行して3度目の入札準備が進んでいますが、当初の入札予定価格は最低でも800億円ほど。いまでは資材や人件費などの高騰で、2倍近い1400億円程度まで膨れ上がっています」

 焦る関係者が注視する3度目の入札も、今年度中に行われるかは不明と伝わる。

「仮に時期が決定しても、スケジュール通りに実施できるかどうか……。また、解体から竣工までには最低5年は必要で、営業再開は早くても7年後なんです」

 隣接する国立演芸場も閉場中。昨年暮れには記者会見で、落語協会の柳家さん喬会長(76)が「もっとちゃんとしろよ!」と一喝。国民の多くも同じ思いだろう。

「週刊新潮」2025年1月16日号 掲載