「このまま、一生結婚できないかもしれない…」

そんな不安や焦りに、押しつぶされそうになったことはないだろうか?

見た目は悪くないし、モテなくない。これまでに、結婚しようと思った彼氏だっている。

「でも、どうして"結婚”できないの?」

そんな不安を抱える全ての女性に贈るストーリー。

◆これまでのあらすじ

元カレが3ヵ月で結婚したことをキッカケに婚活を始めるが惨敗続き。そんな時、占い師マダム・カミーリアに出会い、お告げに導かれるように、叶実(かなみ)の状況は好転していく。そして前回は、“リハビリデートをしなさい”と言われるが−。




―なんで予定がある時に限って、帰る間際に仕事が振られるの?

叶実は、この日から始まるビジネススクールのため、急ぎ足で渋谷から銀座線で日本橋に向かっていた。

そして、授業が始まる時間ギリギリに教室に駆け込みキョロキョロと室内を見渡した。

ーえっと、空いてる席は…。

「すみません、お隣失礼します」

叶実は、席をみつけ、隣の男性に声をかけ席についた。隣の彼は叶実を一瞥しすぐに視線をスマホに落とす。

ーなんだか、無愛想な人ね…。

授業が始まると、早速、まずは自己紹介をすることになった。

徳山一洋と名乗る叶実の隣の男性は、36歳で丸の内にある大手商社勤務だという。

「会社にある社内ベンチャー制度を使って、自分で事業をやってみたいなと思い、このスクールに申し込みをしました。最近はプロジェクトが忙しくて、残業続きだったのですがそれも今日で落ち着いて…」

―へぇ。無愛想な印象だったけど、話すとなかなか素敵じゃない?

それに、よく見ると清潔感があって笑顔も優しそうだし。それに指輪もナシ!

あたりを見渡すと、入ってきた時は遅刻ギリギリだったから気づかなかったが、スーツ姿のかっこいい男性がチラホラいる。

ビジネススクールには真面目な動機できているが、不純な動機ももちろんある。絶賛婚活中の叶実としては、男性チェックは外せない。

ーもしかしたら、ここに運命の人がいるかもしれない…。

そんな期待を胸に1日目の授業が終了したのだった。


ビジネススクールに期待を膨らませた叶実は、後輩とのリハビリデートに臨んだが…





翌日の金曜。

叶実は、会社の後輩・金村に誘われ仕事帰りに食事をしていた。

「渋谷にこんな素敵なお店あったんだね。知らなかった!」

叶実が嬉しそうに声を上げると、金村が照れ笑いをしている姿がなんだか可愛い。

「ここの“パエリア“がすっごく美味しいんですよ」

広々としたカウンター席で乾杯すると、程よい距離感も相まって自然とデートモードになる。




お酒と料理が運ばれてきて、二人ともいい感じに酔いが回ると、仕事の話から段々とプライベートな話になり、会話に花が咲く。

金村は最近ゴルフにはまり、月2回は父親や友人と栃木や群馬のゴルフ場に出かけているという。

「へー!金村くん、ゴルフするんだぁ。私も前からやってみたいと思ってたけど、なかなかきっかけがなくて」

「じゃあ、今度一緒に打ちっぱなしでも行きませんか?」

金村は少し照れながらそう言い、ビールをグイっと飲みほした。

―年下だからと言って、恋愛対象ではないと決めつけるのは、間違っていたかも。

マダムの言う通り、これまで“勝手な思い込みで、恋愛対象を狭めていた”、と改めて感じる。

ふと、自分に向けられた視線を感じ叶実は入り口の方に目を向けると、昨日ビジネススクールで出会ったばかりの徳山と目が合った。

ーえっ、確か会社は丸の内って言ったけど、なんでここにいるのかしら?

彼も少し驚いたような表情をしたが軽く会釈し、同僚とみられる男性と2人慣れた雰囲気で席についた。

叶実も会釈を返し金村との会話に戻るが、なんとなく徳山のことが気になり会話に集中できなくなってしまった。

その様子に気づいたのか「叶実さん、大丈夫ですか?」と心配そうに金村が尋ねてくる。

「あ、うん、なんだかお酒が回ってぼーっとしちゃってた」

慌てて取り繕うが、「飲ませすぎちゃって、すみません」と金村はソフトドリンクを頼んでくれたりと気を遣ってくれる。

そして早々にお会計をし、駅まで送ってくれた。

「叶実さん、これに懲りずもしよかったらデートしてください」

子犬のような目で言われ、思わず「こくん」とうなずいていしまう叶実だった。


楽しいデートをしていたのに、心がざわついた理由とは…


―はぁ…、金村くんに、悪いことしちゃったな…。

帰路についた後も、モヤモヤした気持ちを消化できずにいた。

「こんな時、マダムはなんて言うんだろう…」

叶実は、無性に彼女に会いたくなり恵比寿で途中下車した。




マダムの部屋に着くと、胸元にパールのネックレスを合わせ黒いドレスを着た彼女が優しく迎えてくれる。

「今日は、この前話した後輩くんとデートしてきました」

「あら…あなた、まだこんな時間よ。つまらないのは、男性?それとも、あなた?」

デートが早く終わった原因は、『私』にあると思っているわけ!?と一瞬、ムッとするが、今回に限って言えば、自分に原因があると思い直す。

「つまらなくは…ないと思うんですけど、途中まで楽しく食事していたのに、知り合いを見かけちゃって…」

叶実はビジネススクールで出会った徳山の話をする。

「あら…、そう。心がざわついたのね」

マダムは右手を顎に添え、なにやら考えているようだが、すぐに口を開く。

「あなた、リハビリデートで女としての自信を取り戻すどころか、そもそも自分を見失っているじゃないの」

−いや、自分のことくらい分かっています!  

反論したくなったが、マダムは一言も発する隙を与えることなく続ける。

「自分がどんな相手を求めているかも分からずにデートするなんて、本末転倒よ!」

そう言われて、思わずギクッとしてしまう。確かに、最近は結婚に焦りすぎて、ビジネススクールで会った徳山や、先週の打ち合わせで出会った顧客担当者の顔が頭に思い浮かび、相手が独身男性だと分かると何かを期待している自分がいたことを思い出したからだ。

「確かに…結婚に焦るばかりで、もはや独身男性であれば誰でもイイってなっているかもしれないです…自分でも呆れるんですけど…」  

マダムは本人を目の前にしながら、いつものようにズバズバと続ける。

「まぁ、かわいそうに。まさかここまで重症だったとは思わなかったわ」

マダムは机の引き出しを開け、「ちょうど良いのがあるわ」と言って、銀座『鳩居堂』の便箋を一冊取り出す。

「この便箋、あなたに差し上げるわ。この便箋にね、あなたが男性に求める事と求めない事の両方を書けるだけ書き出してみてちょうだい」

手毬が描かれたその便箋を受け取りながら叶実は言う。

「求めるコトと求めないコト…ですか?」

マダムは、左手にはめられたブレスレット型の腕時計をそっと優しく撫でながら話始めた。

「この時計はね、1960年代のティファニーのアンティーク時計なのよ。アンティークの時計は、ほとんどが海外からの輸入で、しかも、同じデザインのものはほとんどなく“一点物”と言っても過言ではないわ」

叶実は、何の話だろうと思うが、数えられないほどのダイヤが散りばめられ、華奢で繊細な作りのその時計を思わず、うっとりと見てしまう。

「私はね、この時計をお店で見つけた時、躊躇することなく買ったわ。だって、私が求めているものだとすぐに察知できたからよ。あなたは、そういう“チャンス”が巡ってきたとき、ちゃんと自分のものにすることができるかしら?」

叶実は、マダムに言われて断捨離した時に、“自分に必要なものは何か?”を考えらえるようになったけど、“もの”ではなく、“男性”だったら、どうだろうと考える。

「オードリー・ヘップバーンもね、『チャンスなんて、そうたびたび巡ってくるものではないわ。だから、いざ巡ってきたら、とにかく自分のものにすることよ』と言っているの」



自宅に帰ると、さっそくマダムからもらった便箋をバッグから取り出し、テーブルの上に広げる。

 ―自分の理想って何だろう。 容姿や仕事、年収、家族、性格など沢山の理想が思い浮かんだが、とりあえず思いつくものから書き始めてみた。

・優しい
・身長は175cm以上
・年収1,500万円以上

その時、テーブルに置いたスマホが揺れた。金村からのLINEだった。

『今日はありがとうございました。すごく楽しかったです。体調大丈夫ですか?今度は打ちっぱなしとか一緒にいけたらいいですね』

早々と解散したデートにもかかわらず、金村が「すごく楽しかった」と言ってくれることにチクリと胸が痛む。

ーゴルフねぇ。 

なんと返信すればよいか迷いながら、叶実は金村が自分の理想の人と一致しているのか考えるために、再び“求めるコト”を書き始めたのだった。

【マダム・カミーリアの9ルールズ】
ルール1 余裕が必要。引越しをしなさい。
ルール2 スペースを空けよ。身の回りの整理整頓をすること。
ルール3 行動せよ。“必要”と感じることは全ておやりなさい。
ルール4 自分に興味を持ってくれる男性とデートせよ。
ルール5 男性に求める事と求めない事を書き出せるだけ、書き出してみるの。

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自分が求める事を書き出してみたら、見えてきたものとは?