反響を呼んだメトロ―ル「研削盤“自働化”」の動画

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分かりづらい「精密位置決め」を動画で明示
 メトロールは東京都立川市に本社を置く、位置決めスイッチを製造するメーカー。同社の強みは、製品力を分かりやすく伝える、緻密なマーケティング戦略にある。
 特に海外市場に向け動画で分かりやすく、製品の使い方や特徴を紹介することで、Amazonなどオンラインのチャンネルでの売上につなげている。メトロールの松橋卓司社長、マーケティングを統括する松橋泰取締役に成功の秘訣を、さらに同社の動画製作を担当するカンノ・カンパニーの菅野契也ディレクターにも「動画製作所」サービスの話を聞いた。(文=ライター・山下郁雄)

―動画の利活用に早くから取り組んでいますね。
 松橋社長:合理的、効率的な経営を常に心がけていて、動画の採用はその一環。文字や写真では伝わらないことも一目瞭然で分かってもらえる動画は、合理的で効率的なツールと言え、使わない手はない。当社では、クラウドコンピューティングの導入などで、ルーチンワークには極力、人手をかけないようにし、経理課、人事課といった間接部門を撤廃した。自立した社員が、ルーチンワーク以外の、自分の頭で考える業務を手がけるのがこれからの会社のあり方だと思っているからだ。

―動画をどう使っているか、主な使い道を教えてください。
 松橋社長:精密位置決め装置という当社の製品は分かりづらい面があるので、製品がどう動作して、どんな機能を発揮するかを動画で示している。代表事例がエアセンサーによる研削盤の位置決めで、これまでMC(マシニングセンター)やNC旋盤では全自動化が図れているが、唯一、研削盤だけはアナログな職人技に依存せざるを得なかった。それが、当社製品を使えば全自動化することを映像でリアルに表したところ、大反響を呼び、アマダが自社の研削盤に採用するなど、ビジネスに直結する成果を出した。

―動画はどういうメディア、経路で広めているのですか。
 松橋取締役:ホームページとリンクを張ったユーチューブにアップし、全世界に発信している。女性が主戦力となっている営業部門では、各スタッフがiPadを常備して、動画を使った製品説明を客先で行っている。展示会のブースで動画を流すのは効果があり、メルマガで新作動画のURLを知らせ、見てもらったりもしている。また、トリセツ(取扱説明書)としても極めて有用なので、トリセツ動画をたくさん制作している。
 
―動画の作成を依頼しているカンノ・カンパニーに対する率直な感想をお聞かせください。
 松橋取締役:“カジュアル”なのがいい。ディレクターやカメラマン、照明など撮影クルーが一個小隊で来るのかと思いきや、一人でやって来て、手際よく撮影・編集し、仕上げてくれた。午前中に撮って、午後、編集したベータ版をもとに、こちらのリクエストを伝えて追加修正するといったスピーディーな作業工程がカジュアルそのもの。そのお手軽感に好感を持った。また、ディレクターの菅野さんはITの知識が豊富なようで、iPadでたくさんの動画をスムーズに見せる方法など、いろいろと教えてもらえるのもありがたい。

中小製造業の動画内製化トレーニングにも力を入れる
 メトロールの動画づくりを担当しているのはカンノ・カンパニー(東京都三鷹市)の菅野契也ディレクター。同社の菅野和彦社長の長男で、近く社長に就任する予定だという。菅野ディレクターに、同社の変遷や強み、今後の取り組みなどを聞いた。

―カンノ・カンパニーの今日までの歩みを要約してください。
 もともとはソフト開発会社で、30年ほど前に父親が立ち上げた。父は三井情報開発(現:三井情報)に勤め、三井物産の人事システムの開発・運用・保守などを担当した後に独立した。動画づくりに乗り出したのは5、6年前からで、Viibar(ビーバー)というクラウドソーシングのクリエーター集団に登録していた妹が、キヤノンや航空会社、化粧品会社から動画制作の注文を受けたのがきっかけだ。妹のケースはBtoC系だったが、それをBtoBにも広げようと考えて、中小製造業に照準を合わせたプロジェクト「動画製作所」を2014年に興し、今では動画制作が主力事業となっている。

―メトロールの松橋社長が言うところの「カジュアルさ」が持ち味となっているようですが、どうやってカジュアルを実現しているのですか。
 一眼レフカメラが進化して、高品質の動画を撮れるようになったのが効いている。おかげで、撮影から編集までの工程を、一人でスピーディーに行えるようになり、水準の高い動画を低コストで提供できていると自負している。当社では、一本が60秒から90秒程度の動画3本を2週間で仕上げ納品するといった標準パッケージを30万円でサービス展開している。

 一度撮影した動画を上手に活用してほしいという思いから、当社の動画はテロップがPPTで差し替えられる作りをしている。例えばメトロール様では、自社内で英語や中国語のできる方が翻訳したテキストを、テロップとして差し替え利用されている。


反響を呼んだ「研削盤“自働化”」の動画(メトロールYouTubeサイトから)

―カメラが進化して、ある意味、敷居が低くなった動画制作ビジネスで、他社と比べた優位性、セールスポイントは何でしょう。
ルーツがソフト開発会社で、私自身、プログラマーだったのが動画制作に大いに役立っている。ソフト開発では、夢や理想を語りがちな顧客のニーズを正しく汲み取る要件定義が大切なプロセスになる。動画づくりもまったく同じで、その辺りの経験値が大きな財産だ。また、今でこそポピュラーになったアジャイル開発(小さな単位で実装やテストを繰り返しながら完成を目指すソフト開発手法)に、アジャイルの言葉もなかった時代から携わってきたことから、動画をアジャイル方式でつくれるのも他にはない強みだと思っている。

―今、力を入れている分野や新規事業について説明してください。
中小企業が自ら動画を制作できるように、技術・ノウハウを教える動画内製化トレーニングに力を入れている。ユーチューバーがたくさん出てくるなど、動画制作が身近なものになっており、先行き、内製化がさらに普及すると見ての取り組みだ。ちょうど、ホームページが、外注だけの時代から、外注と内製化のハイブリッドに移行したのと同じ流れになると考えている。新規事業としては、動画のどの部分がよく見られるかをチェックして、例えば、客先で見てもらえる動画の傾向をつかみ営業を後押しする、といったシステムを開発し普及させたいと思っている。

―プログラマーから動画ディレクターへと変身した菅野さんは、その間に別の職業も経験したとか…。
実は4年間のプログラマー稼業の後、イタリアに渡って、3年半ほどパスタなどイタリア料理の修業を積んできた。どう見られるかは分からないが、自分の中では、プログラマー、料理人、動画ディレクターの三つが一つにつながっている感じだ。

取材協力:[https://www.metrol.co.jp/{メトロ―ル}]

[https://douga-seisakusho.com/{中小製造業の技術紹介に特化した動画制作なら「動画製作所」}]


反響を呼んだ「研削盤“自働化”」の動画(メトロールYouTubeサイトから)