女子パシュートの韓国代表、キム・ボルム(画像は韓国スケート連盟の公式サイトから)

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平昌五輪スピードスケート女子パシュート韓国代表チームで起きた「内紛」は、その後の7・8位決定戦まで尾を引いた。

騒ぎの発端はその前の試合、チームのノ・ソンヨンが隊列から大幅に遅れ、これを同チームのキム・ボルムとパク・チウが責めるような発言をしたこと。だが、チーム内の確執は五輪前から表面化していた。

「淡々と終えたという印象を持ちます」

韓国は2018年2月21日に行われた7・8位決定戦のポーランド戦に臨んだが、様子がおかしかった。400メートルリンク6周で争う女子パシュートで、2周を終えて3秒超、3周では4秒66もの遅れをとった。テレビ解説の青柳徹氏(88年カルガリー五輪から4大会連続五輪出場)は、4周を終えた時点で「韓国チームは追い上げたいですけど、そのような様子は見られないですね。これはどういうことでしょうか」と疑問を口にした。

結局、ポーランドに4秒19遅れでゴール、タイムは3分7秒30。1つ前の準々決勝・オランダ戦より3秒54も落とした。青柳氏は「選手たちを見ても、力を出し切ったという表情ではないですね」と述べている。

インターネット掲示板でも、

韓国やる気ねえ」
「無気力で叩かれそう」
「なんだこのギスギスした空気は」
韓国のいじめっ子2人が遅い奴に合わせるとこんなに遅くなるんですよって言いたいんじゃね?」

と「無気力」の指摘が相次いでいた。

韓国女子パシュートは「内紛」状態。19日の準々決勝・オランダ戦でノ・ソンヨンが置き去りにされて敗北すると、チームのキム・ボルムとパク・チウがソンヨンを「順調だったのに最後で差が開いて残念な結果になりました」と恨み節。3人目がゴールしたタイムで争われるパシュートは隊列を組んで滑走し、チームプレーが問われるにもかかわらず、個人攻撃したとして炎上状態となった。韓国大統領府ウェブサイトには、ボルムとチウの代表資格剥奪を求める請願が寄せられ、50万人の賛同が集まった。

すると20日にボルムとチウが緊急会見を開き、「後ろの選手を気遣いませんでした。自分の過ちが大きかったと思います」などと謝罪。ところが、この会見が新たな火種を生んだ。

「五輪なのに確認しきってなかった点に落ち度がある」

22日放送の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)によると、会見に同席した韓国代表のペク・チョルギ監督は「隊列の真ん中で滑るより、スピードを維持させて後ろからついていかせる方が良い記録が出ると、ソンヨンが私に直接言ってきた」と発言。だが、ソンヨンは「私は後ろから行くと言っていない。前日まで私は真ん中に入ることになっていた。チームの雰囲気は良くなかった。競技について会話もなかった」と反論したという。

こうしたムードの中で冒頭の7・8位決定戦を迎えたわけだが、亀裂はもっと以前、17年10月からの代表選考過程の中で生じていたようだ。

20日付の朝鮮日報(日本語版)は「チームワークの崩壊は予想されたことだった」と報道。ソンヨンの「代表チームで一度も一緒に練習していない」という言葉を伝えた。元々パシュート代表のみに選ばれていたソンヨンだったが、パシュートの五輪出場には個人種目の出場資格も必要であるという規定を、韓国スケート連盟が認識していなかった。連盟の「手違い」で五輪代表から外れたソンヨンは、その後インターネット上で「連盟は選手を道具として考えている」などと非難した。

ところが、ロシアの1500メートル代表選手がドーピング違反で五輪出場権を剥奪され、繰り上がりでソンヨンが同種目代表入り。パシュートのチームにも復帰できたが、非難していた連盟とは深い溝ができていた――。こんな経緯で平昌五輪に臨んでいたというのだ。

長野五輪金メダリストの清水宏保氏は上記「モーニングショー」で、「連盟に育ててもらっているというのは実際あります。非難してしまったことでの確執は生まれます」としたが、一方で「パシュートのルールに関しては、2006年から五輪の正式種目になったこともあり、常に変わっています。韓国の連盟は五輪なのに確認しきってなかった点に落ち度があるのかなと思います」と指摘。その上で

「僕は現役時代にソンヨン選手と戦ったことがあるんですが、非常におとなしいイメージがありました。自分から発信していくイメージはなかったんです。ルールが変わっていく中でお互いに認識し合えていない部分はあったと思います」

とソンヨンの印象を述べている。