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ホテルの客室にカセットコンロを持ち込み、鍋や焼き肉を楽しむ──。SNS上では、魚介類たっぷりの鍋や自炊カレーなど、いわば“部屋キャンプ”のような体験談まで散見される。

旅先で手に入れた新鮮な食材をその場で味わいたい、という気持ちは理解できなくもない。しかし、ホテル側にとっては火災や設備トラブルのリスクを伴うだろう。

では、こうした行為は法的にどのように評価されるのだろうか。

●客室で焼き肉→煙で火災報知器が作動

身近にも、客室で焼き肉をした結果、煙で火災報知器が作動し、騒ぎになったという話を聞いたことがある。

実際、多くのホテルでは、利用規約や館内ルールでカセットコンロなどの火気の持ち込み・使用を禁止している。これは、火災の危険だけでなく、煙やにおいによる他の宿泊客への影響、スプリンクラーの誤作動などを防ぐためだ。

ホテルの宿泊は「利用規約」に基づくサービス契約の一種と考えられる。そのため、宿泊客は規約を守って施設を利用する義務を負う。

ホテルから「損害賠償」を請求される可能性がある

にもかかわらず、禁止されているカセットコンロを使用した場合、まず問題となるのは契約違反(債務不履行)だ。

また、煙で火災報知器が作動し、館内の避難対応が必要になったり、他の宿泊客の滞在に影響が出たりすれば、ホテル側に損害が生じる可能性がある。

この場合、ホテルは、対応にかかった費用や営業への影響などについて、宿泊客に損害賠償を請求できる可能性がある。

さらに、油はねや煙によって室内の壁紙やカーテン、寝具などが汚損・損傷した場合も同様で、原状回復費用の負担を求められるだろう。

火の不始末などによって、実際に火災が発生した場合、ホテルの建物や他の宿泊客の財産に損害を与えれば、その賠償責任は極めて重くなる。

場合によっては、刑事責任に問われる可能性も否定できない。

●「出禁」も現実的なリスク

こうした行為が発覚した場合、ホテル側がその客の宿泊契約を解除したり、今後の利用を断ったりする、いわゆる“出禁”をとることも珍しくない。

ホテルは多数の利用者の安全と快適性を確保する義務を負っており、その観点から問題のある利用者を排除することには一定の合理性が認められる。

旅先で手に入れた新鮮な魚介をその場で味わいたい──。その気持ちは理解できる。

しかし、ホテルの客室はあくまで公共性の高い空間の一部だ。火気の使用が認められていない以上、レストランを利用するか、持ち込み可能な範囲の軽食にとどめるのが無難だろう。

軽い気持ちの“部屋キャンプ”が、思わぬ損害賠償やトラブルにつながりかねない。ルールを守った楽しみ方が求められている。

【取材協力弁護士】
大和 幸四郎(やまと・こうしろう)弁護士
佐賀大客員教授。1988年中央大学法学部法律学科を卒業・1996年司法試験合格。
事務所名:武雄法律事務所
事務所URL:http://www.takeohouritu.jp/