雰囲気を一変させられるストライカー、それが小川航基の真骨頂だ。(C)Getty Images

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 最近の小川航基のプレーを見ていると、岡崎慎司や巻誠一郎が残した「利き足は頭です」という名言を思い出す。186センチの高さを活かし、果敢に空中戦に挑むのはもちろんのこと、頭から突っ込んで相手より先にボールに触れようという気迫もある。

 ヘディングシュートの威力は相も変わらず凄まじい。4月19日に行なわれたKNVBカップ決勝戦、対AZ(1−5の敗戦)では左からのCKをドンピシャのヘディング弾でゴール。5月2日のオランダリーグ、対テルスター(1−1の引き分け)では、左からの難しいクロスをヘッドで合わせてバーを強襲。このこぼれ球をFWエル・カチャティがオーバーヘッドで押し込んだが、オフサイドの判定に泣いた。

 残念なのは、彼がチーム内での序列を下げてしまったこと。今季の小川は第20節までエースストライカーとして君臨し、7ゴール・4アシストとまずまずの数字を残していた。しかし第21節の対AZ(3−1の勝利)で突如、出場機会を失った小川はここ3か月、サブに甘んじでいる。この間、ゴールはリーグ戦1点とカップ戦1点、合わせて2得点にすぎない。

 2月、悔しい思いを押し殺して、彼はこう語った。

「メンバーを決めるのは僕ではなく監督。悔しい気持ちはめちゃくちゃあったけれど、僕にはくよくよしている時間がない。そんな暇があるんだったら、監督に使わせたいと思わせる行動を取らないといけない。それがこれまでのプロサッカー生活で、自分の経験、財産として残ってきている」

 小川には試合の空気を変える力がある。KNVBカップ決勝のAZ戦、NECは0−3のビハインドを負ってしまい、小川がピッチに入ったときのNECサポーターはシーンと静まり返っていた。だが74分にピッチに入った小川はその4分後、魂のこもった完璧なヘッドでゴールネットを揺らすと、アドレナリンを爆発させてゴールを喜び、何かを吼えてチームメイトとサポーターを鼓舞し、奮い立たせた。

「あのゴールで『行けるぞ!』という雰囲気になりました。セットプレー、クロスからのクロスは僕自身、得意にしています。反撃の1点という形でしたけれど、あれが決まるのと決まらないのとでは、僕自身、メンタル的なところも全然違う。前掛かりになって攻めたことでカウンターを食らって5失点しましたが、それはリスクを取ったから。チームは負けてしまいましたけれど、下を向く必要はなかったです。

(ゴールセレブレーションは)感情的になりました。なかなか出場機会が得られないなか、しっかり結果を出して素直に嬉しかったのと、『ここからチームとして反撃していくんだぞ』というのを見せたかった」

 俺を使え!――という思いもあったのでは?

「そういう思いは、常に持ちながらプレーしています。『僕が出れば点を取れるんだぞ』というのを見せていかないといけないですし。そういう感情はありましたね」

 67分からピッチに入ったテルスター戦は、ショートバウンドの楔のパスに対し、上半身でボールを被せ、倒れながら味方に繋げたのが、小川のファーストプレー。ひと口に執念と言ってもいろいろあるが、小川のそれはストレートに観る者に伝わってくる。パワープレーで反撃するNECにおいて小川はテルスターのゴール前で制空権を握り、23分間で5本のシュートを打った。

「ゴール前に自分が入ると、味方がああいうふうに僕を見て(クロスを入れて)くれる。それは僕の特徴をみんなが理解してくれている証拠だと思う。決め切りたかったですね。まだまだ甘いという思いです」

 テルスター戦で小川に絶妙のクロスを入れたMF佐野航大に、NECの背番号18について訊いてみた。

――AZ戦のゴールもそうでしたけど、今日もシュートをバーに当てたり、小川選手は短い時間で雰囲気を変えられる。