2019年、NBAの試合観戦に訪れた大谷は、八村塁と記念撮影(写真・USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

「Different breed.(モノが違うね)」
 5月12日、現代のNBAを代表するスター選手であるケビン・デュラントが、大谷翔平(26)を評してこうツイートした。

 今、大谷に注目しているのは野球界だけではない。全米メディアは、大谷がNBA(バスケットボール)やNFL(アメリカンフットボール)の世界でも活躍できるのではないかと、報じ始めているのだ。

「アメリカでは、子供のころからバスケ、アメフト、野球を掛け持ちする選手が多いんです。だから、大谷選手がそういう取り上げられ方をされても不思議ではありません」

 そう語るのは、日本人として初めてNBAのコートに立ち、現在は宇都宮ブレックスに所属する田臥勇太(40)だ。

「僕も3歳から水泳を始め、現在もトレーニングに取り入れています。小学校のソフトボールクラブではキャッチャーでしたし、ほかのスポーツの経験が、バスケに生かされてきたことを実感しています」

 NBA時代、田臥は他競技を経験した選手のプレーに驚嘆することがあったという。

「NBAでもブラジル出身の選手は、プレーにサッカーのステップが入ってくるんです。サンズでチームメイトだったスティーブ・ナッシュは、サッカーとアイスホッケーの経験があり、体幹がものすごく強かったですね」

 田臥が一流のアスリートの条件として最初に挙げるのが体幹の強さ。大谷にはそれがあるという。

「NBAでは、大谷選手の193cmという身長は、平均よりも小型になります。しかし、走るスキルが非常に高く、フィジカルも強い。ゴールリングへと切り込んでいく姿が目に浮かびます。野球のボールを処理するときの瞬発力や、ジャンピングキャッチなどの動きは、バスケとも共通するものですから」

 田臥のポジションであるポイントガードは、ボール運びやフォーメーションを統べるいわば司令塔だ。では、大谷に向いているポジションはどこだろうか。

「大谷選手は状況を見てバントヒットを狙うなど、冷静なプレーも得意ですよね。バスケでも相手の動きに対応し、自分のやれることをその場で見つけられるタイプの選手になると思います。そういう意味ではポイントガード向きですが、ほかのポジションでも、マルチにこなしていけるでしょうね」

田臥勇太(左)と栗原嵩(右)は大谷を絶賛。(田臥写真・(C)TOCHIGI BREX INC.)

 一方のNFLも、公式サイトで大谷の特集を組むなど、熱視線を送っている。

 これまで、NFL入りした日本人選手はいない。そんななか、 “NFLにもっとも近づいた日本人” と呼ばれるのが、2013年、2014年にボルティモアレーベンズのルーキーキャンプに参加し、現在Xリーグ・イコールワン福岡SUNSに所属する栗原嵩(33)だ。2015年には、世界選手権でベストイレブンに選ばれている、日本人トップ選手である。

「アメフトは、高校や大学から始めても、プロになれる競技です。ポジションによってやるべきことがまったく違うため、身体能力が高ければ、それぞれの経験をそれぞれのポジションで生かせるわけです。間違いなく “日本一のアスリート” である大谷選手は、NFLでも活躍できる可能性はおおいにあると思います」

 大谷は「(パス攻撃の起点となる)クオーターバックが向いている」と、NFL選手が語ったという報道もあったが、栗原は自身が務める「ワイドレシーバーの大谷選手を見てみたい」と言う。

「花形ポジションのクオーターバックは、NFLの選手だと190cm100kgが当たり前の世界です。大谷選手は体格的にも、肩の強さからも向いているポジションだと思います。一方のワイドレシーバーは、クオーターバックが出したパスをキャッチするポジション。足の速さや捕球能力が求められます。レシーバーだと、193cmはかなり大型の部類に入るんです。その場合、クオーターバックはより高いパスを投げることができ、有利なんです」

 大谷は盗塁数でもリーグ7位タイ(6月16日時点)を記録し、スピードも申し分ない。栗原の強みもスピードだ。

「僕は身長が180cmと、チーム内では小柄でした。小柄な日本人選手が海外で戦うとき、どんな競技でも『スピードに特化する』のが定石です。僕もNFLに挑戦したとき、勝負できている実感はあったのですが、やはり身長やサイズがないと、世界レベルのトップ選手にはなれないんです」

 ところが大谷は、世界の一流選手に体格で負けていない。

「お尻が大きいし、筋肉も引き締まっています。そのうえ、日本人特有の繊細なテクニックも発揮できるという……。もう、最強ですよね」

 打席に立ち、先発投手として登板したあとに外野の守備につく“三刀流”と称される大谷。NBA、NFLを掛け持つ “五刀流” も、夢物語ではないのだ。

たぶせゆうた
1980年生まれ 神奈川県出身 秋田県立能代工業卒業。2004年、日本人初のNBAプレーヤーとしてフェニックス・サンズと契約。2008年より宇都宮ブレックスに所属。173cm73kg

くりはらたかし
1987年生まれ 東京都出身 法政大学在学中の2009年に関東学生最優秀選手。2016年、IBMビッグブルー在籍中にパールボウルMVP。2019年、ボブスレー日本代表に選出。180cm85kg

取材&文・鈴木隆祐

(週刊FLASH 6月29日・7月6日合併号)