東京23区ー。

東京都の中心となる23の「特別地方公共団体」の「特別区」のことを、私たちは東京23区と呼ぶ。

23ある中の、どの区に住んでいるかによって、その人の傾向や特徴は如実に表れるもの。

料理研究家として活動する青柳里香(28歳)が、各区の男たちとデートを重ねることで感じた、それぞれの特徴と生態とは・・・?

前回は、渋谷区スタートアップ系男子、絶対王者港区男子やダークホース品川男子、千代田区プリンスを見てきた。今週は?




-待ち合わせは、三軒茶屋の駅でいいかな?


大学時代の友達・裕樹から来たLINEに“OK”と返事を打ち、私は待ち合わせ場所へと向かう。

裕樹は学生時代からの友達だが、特に恋愛感情もないまま何となく日々が過ぎていた。しかし、最近向こうが長年付き合っていた彼女と別れたらしく、急に連絡が来るようになったのだ。

学生時代にはよく来ていた街、三軒茶屋。だが社会人になり、年齢を重ねるにつれてすっかり足が遠のいてた。

久しぶりに降り立った三軒茶屋は昔と何も変わっておらず、ビッグエコーやエコー仲見世商店街の風景に懐かしさを覚えていた、その時だった。

「里香!久しぶり!」

背後から登場した裕樹は、デニムにカジュアルなシャツを合わせ、その上にはダウンジャケットを羽織っている。そして手ぶらという、清潔感があって学生時代から変わらぬ姿にどこかホッとする。

「裕樹、全然変わってないね(笑)」
「里香もね。いや、里香は綺麗になったか」

そんなことを話しながら、私たちは商店街を抜け、今日のお店を目指す。

この街のように個性があるはずなのに、その特徴を一言では表現しづらい裕樹。

昔からそうなのだが、彼はどこにも悪い点はない。実はそれが、逆に欠点でもあったのだ。


女性からすると魅力を感じないとは、どういう意味?


裕樹が予約してくれていたのは、アットホームな雰囲気で美味しい料理を提供してくれる『トロワ』だった。

「裕樹もこんなお洒落なお店に来るようになったんだね」

学生時代、常に“お金がない”とか言っていた裕樹からは想像できない姿に、ちょっとした驚きと感動を覚える。

白を基調とした店内は気取っていないけどカジュアル過ぎもせず、その絶妙なバランスが今日のデートにぴったりだった。




「まぁ、一応真面目に働いてますから。この界隈って、小さいながらも美味しいお店が多くてさ」

そう言いながらささっとオーダーしてくれる裕樹。こんなに頼もしかったっけ?と思いながら、楽しい食事が始まった。

「でしょ?というか、里香も今は学芸大に住んでるんだよね?近いじゃん」
「そうなんだよね、でも意外にこっちの方に来なくて」

来る時は頻繁に来るのに、来なくなったらパタリと足が遠のく不思議な場所である。

「またそうやって。どうせ港区の方がカッコイイとか思ってるんでしょ?」
「バレた?(笑)」

-何だか居心地がいいなぁ。

学生時代から知っているという安心感からなのか、それとも裕樹の飾らない人柄のお陰なのか、久しぶりに素の自分で話せていることに気がつく。

「でもさ、どうしてまた三軒茶屋なの?」

前まで裕樹がどこに住んでいたのかは知らないが、等々力、成城、深沢などの閑静な高級住宅地がある世田谷区は、どちらかというと家族で住むエリアのイメージが強い。

「港区とか渋谷区と比較すると、家賃が安いんだ。それに、緑も多いし、何と言ってもファミリーが多いから街全体がアットホームなんだよね」

ちなみに、世田谷区は東京23区中人口が第1位、面積では第2位を誇るんだよ、とも付け足した。

「そうなんだぁ」

たしかに住みやすそうな街である。

三茶住民は、一度この三茶に住んでしまうとこの街から出なくなると聞いたことがあるし、店内やここまで歩いてきた道も、地元住民が多そうな雰囲気だった。

「結婚して子供を育てるなら港区よりもこっちの方で育てたいなぁと最近よく思うんだよね」

-ほう。彼には、結婚願望があるのか。

最近デートしてきた渋谷区スタートアップ系男子を始め、港区男子などと一緒にいても結婚は想像できなかった。

でも裕樹も同じ独身のはずなのに、ちゃんと結婚生活が想像できるし、いいパパになりそうだな、とも思えるのだ。

-ちょっといいかも。

そう思っていたのだが、この後の彼の行動で、私に迷いが生じることになる。


ちょっと微妙・・・?世田谷区男子の欠点とは!?


「もう1軒行こうよ!」
「もちろん」

裕樹の誘いを断る理由もなく、私たちはこれまたこじんまりとした、地元住民が集うバーへと移動した。

しかし、そこで私はちょっとした世田谷区サプライズを受ける。

店内にいる人がほぼ全員知り合いのようで、入ってくるお客さん達がお店の人に対してだけでなく、お客さん同士も代わる代わる皆に挨拶をしているのだ。ちなみに、その中にはテレビでよく顔をみる若手俳優も普通に混ざっている。

「みんな知り合いなの・・・!?」

「うん、まぁね。常連さんが多いから、みんな顔馴染みかも。それにこの界隈って店が多いから、わざわざタクシーに乗ってどこかへ出かけようとも思わないんだよね」

港区の、狭くて、ブランド主義のコミュニティーとはまた違う。芸能人もこうして肩を並べて普通に飲んでいることが、この街らしさなのだろう。

それに加えて飲んでいる人たちは “三茶最高!”と言わんばかりの和気あいあいとした、ゆるい雰囲気に満ち溢れており、地元住民たちの独自のネットワークと文化があることを改めて知った。




「そう言えばこの前、里香も知ってるタカシに会ってさぁ」
「へ〜元気だった?」

ニコニコと話す裕樹に相槌を打ちながら話を聞いていると、まるで学生時代に戻ったような平和な気分になる。周囲で飲んでいる人たちを見ても、皆とても楽しそうで、とにかく和やかだ。

「なんか、いい街だね」

思わず口からそう出るほど、ここまで平穏な幸せが溢れている場所も珍しい。

街を歩く男女も比較的カジュアルで、全く虚勢を張っていない。街全体にファミリー感が溢れており、ラブ&ピースという言葉が東京で一番似合う区だと思う。

しかし、そんなことをぼんやりと考えている時だった。

「この後、どうする?」

不意に裕樹に聞かれ、私は急に現実に引き戻された。

「え、あ・・・か、帰るよ!」

急に男としての顔を出してきた裕樹にうまく答えることもできず、私は慌てて視線をそらす。

素晴らしくいい人だし、人としては大好きだ。

でもどうしてだろうか。友達の延長でしかなく、トキメク相手としては見ることができない自分がいる。




落ち着いており、優しい彼の人柄はまさに世田谷区を体現している。だが、それは“良きパパ”的な落ち着きであって、“良き彼氏”的な落ち着きではないのだ。

もっと何度かデートを重ねれば見方も変わってくるのだろう。

そう思いながらも、急に友達を異性として見ることは出来ず、私は気まずい思いを抱えたまま世田谷区を後にした。

-結婚したら、この区に住みたいなぁ。

そう思いながら。

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【世田谷区男子まとめ】

・幸福度が高い
・地元大好きで、飲むのは近所率高し
・仲間が大好き
・異性問わず友達が多い
・結婚願望あり
・基本的にフラットで無駄な見栄など張らない

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