ザックを変える必要はないと考える一番の理由
そして、11月に対戦するオランダとベルギーはセルビア、ベラルーシ以上の難敵だ。
監督交代は閉塞感打破のきっかけになり得る。だが、時間の無さはどのように解決するのか。
その次の集合は、5月のメンバー発表後になる。過去の例をなぞれば、W杯までのテストマッチは3試合と考えるのが妥当だ。代表同士ではない練習試合を含めても、もう1試合加えられる程度である。
そのスケジュールのなかで、新監督を迎えるのが現実的なのか。僕の答えは「NO」だ。
マルセロ・ビエルサを招聘できたとしても、彼の戦術をW杯までに消化できるのか。日本人の学習能力と柔軟性なら、ある程度の水準には達するだろう。ただ、対峙する相手のレベルが上がれば、現在のチームが直面している課題が再び目の前に立ちはだかる。
ザックのサッカーは決め事が多いと言われるが、最終的に問われるのは選手自身の応用力だ。高い位置からプレスをかけるのがチーム戦術だとしても、相手がロングボールを多用してきたら違った対応が必要になってくる。ロングボールの出どころにプレッシャーをかけつつ、最終ラインで跳ね返したあとのセカンドボールの回収を怠らない、といった選択肢も視野に入るはずだ。
W杯はテストマッチではない。日本の強みと弱みをしっかりと把握したうえで、対戦相手はピッチに立つ。そこで重要なのは即興性であり、選手(たち)自身の判断である。監督の指示を待っているわけにはいかない。新監督を招いたところで、選手自身が変わらなければ同じ迷路へ入り込む。
守備に軸足を置いてカウンターに勝機を見出す戦いは、チーム内の共通理解を固めやすい。攻撃も守備もある程度パターンにはめ込むことができる。個々のタスクは明確だ。
攻撃的なサッカーは違う。相手に研究されたなかで、どのように攻め、どのように守るのか。選手自身が判断する場面が多くなる。ピッチ内での臨機応変な対応を促さない限り、日本はこれからも同じ課題にぶつかっていく。
世界の舞台では、攻撃的なサッカーなど覚束ない。
チーム内には危機感が芽生えている。「このままではW杯で勝てない」という議論が交わされている。
指揮官ザックの方向づけは大切だが、実際に戦うのは選手たちだ。ピッチに立つ当事者が導き出す答えは、突き詰めれば監督を上回る。個人のエゴではなくチームが勝つための判断なら、監督は尊重する。尊重されなければならない。
攻撃力を強みとして世界へ挑むなら、ザックを越えて行け。衝突を恐れるな。監督交代が囁かれる事実を、チームへの叱責と受け止めろ──それが、僕が監督を変える必要はないと考える一番の理由である。
関連情報(BiZ PAGE+)

1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している
