連休の読書にお勧めしたい本を紹介する。犯罪を憎むとともに、警察組織の腐敗をも憎む。国家公務員は公僕であるという原理原則を、「そこまでやるか」と思うくらいに貫く警察官僚の物語である。


2013年4月1日の時点で、国家公務員の人数は30万人弱、地方公務員は276万人弱となっている。公務員とは、公衆に奉仕する僕(しもべ)、すなわち公僕だと言われる。国家公務員は国民の全体に対して、地方公務員は勤務地の人々の全体に対して、奉仕者であるべきことが「国家公務員倫理法」で定められている。とりわけ、国家公務員のキャリアには、国民全体に奉仕するという原理原則の下、国家の屋台骨を支えていくことが求められる。


だが、キャリアと呼ばれる官僚たちは、自らが属する組織の利権確保と自己保存のために動くことが多い。また、公務員には「私利私欲」を求める行為が禁じられているが、その最たるものである「天下り」は、キャリアの間でいまだ堂々と行われている。キャリア以外の公務員にしても、実際には「仕事の中のひとつ」として公務員を目指し、試験を受験し、合格したら普通に仕事をこなしていくという人が多いのではないか。


このように公務員が公僕だという原理原則が形骸化する中、その原理原則を貫き、絶えず国のことを想いながら仕事をする警察キャリアがいる。大森警察署の署長で警視長の竜崎伸也だ。といっても竜崎とは、今野敏の小説『隠蔽捜査』シリーズ(新潮社刊。シリーズが4作品。スピンオフが1作品)の主人公なのだが……。


警視長という竜崎の階級は、警察組織の中では警視総監、警視監に続く上から3番目のものである。そんな警察のお偉いさんが、犯罪者だけではなく、警察という組織とも対峙する。ときにユーモラスに、ときにシリアスに、竜崎と家族の関係なども紹介されつつ、ストーリーが進んでいく。平易な文章でありながら、内容のクオリティーは高い。だから、さくさくと読み進めるのだ。


写真で紹介した最新刊『隠蔽捜査4 転迷』の帯に、池上彰氏が「正しく生きようという勇気が湧いてくる小説です」というコメントを寄せている。筆者が子どものころ、正義の味方と言えば仮面ライダーやゴレンジャーであった。そして、50歳を目前にした今、正義の味方が誰かと問われたら、間違いなく竜崎伸也だと答える。


『隠蔽捜査』シリーズで竜崎の姿を追っていると、「こんな官僚が本当にいたらいいのになぁ」というかすかな希望を胸に抱く。警察の内情を語る小説というよりも、現代における大人のヒーローを描いた作品なので、警察小説に興味がない方にもお勧めできる。おそらく、シリーズ4作品は3日あれば読破できてしまうので、お時間のある方はぜひ!


(谷川 茂)