北中米W杯開幕を目前に控え、アイスランドとの壮行試合を1-0の勝利で終えた日本代表。元日本代表で、現在はサッカー解説者として活躍する城彰二氏は、この一戦をどう見たのか。

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 怪我明けの冨安健洋や板倉滉の状態、さらには「ジョーカー」として期待を寄せる21歳の新星・塩貝健人の可能性まで。初戦オランダ戦を見据えたベストメンバーと勝ち筋を、日本代表の元エースが分析する。


サッカー日本代表 ©時事通信社

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「さすがだなと思いました」代表復帰した冨安の状態

――壮行試合のアイスランド戦、1-0での勝利でしたが、内容的には今ひとつピリッとしない試合でした。

城 森保監督が前日会見で、今まで試合時間が少ないとか、怪我明けとか、コンディション調整を含めて選手を使うと言っていました。内容的には見るべきところがあまりなかったですが、調整が必要な選手を使えたこと、怪我なく終わることができたのは良かったです。

 遠藤(航)、冨安(健洋)、板倉(滉)はコンディション的にはまだまだだけど、プレーできたのは本人にとってすごくポジティブだったんじゃないかなと思います。

――遠藤は、どう見えましたか。

城 遠藤は45分しか出ていないですが、情報によると手術した箇所は問題がないということ。アイスランド戦は様子を見ながらプレーしていたし、引いた相手に対して前からガンガンプレスに行くシーンがなかったので強度の面はなんとも言えないのですが。

 怪我は問題ないので、あと試合勘とコンディションでしょう。経験値が高いのでW杯までにはしっかりと調子を取り戻してくると思います。

――板倉と冨安のプレーはどう見えましたか。

城 板倉は73分間のプレーでしたが、まったく問題なさそうです。冨安は、チームでようやく怪我から復帰して合流前の試合ではプレー時間が少なかった。

 でも今回、83分間プレーしましたが、守備は問題がなく、攻撃面ではオーバーラップしていいシュートを打っていた。そういうところの感覚はさすがだなと思いましたし、なによりも試合に飢えていると思うので、W杯では問題なくプレーできるでしょう。

「細かい技術で相手を圧倒していた」調子の良さをアピールした久保建英

――三笘薫が抜けた左サイドの構築も今回の重要なチェックポイントでした。

城 右でプレーしていた伊東純也を左のシャドーで起用し、中村敬斗をアウトサイドに置いたのは、良かったと思います。2人はスタッド・ランスでチームメイトだったので、お互いをよく知っていますからね。配置については、今後、状況によっては伊東がアウトサイドに出ることもあるでしょう。

 W杯では、相手にボールをもたれる時間が長い場合、大然(前田)を入れて前にプレスに行かせることもあるかと思いますが、伊東の目処がついたので左サイドもいろんな選択肢が可能になったと思います。

 ただ、基本的にはW杯でも左はこのコンビで行くでしょうね。その左サイドのふたりに絡んだり、右の堂安(律)との連携で攻撃をうまくリードしていたのが久保(建英)です。彼は非常に調子が良いですね。

――確かに久保選手は、動きが良かったです。

城 相手があれだけブロックを敷いて守っているなか、細かい技術で相手を圧倒し、何本かチャンスを作っていましたし、左右に自由に動くことで空いたスペースに堂安や伊東が行くとか、そういう連動したプレーが出来ていた。この調子を維持していくのであれば、日本の攻撃の質がかなり高くなると思います。

「質の高いクロスにうまく合わせられる」と評価したFWは?

――通常はボランチの鎌田(大地)選手が攻撃を指揮しますが、うかうかしていられない感じでしょうか。

城 攻撃面のファーストチョイスは、まだ鎌田だと思います。ボールを受けられるし、展開力もある。ボールを保持しながら相手に脅威を与えられるような攻撃ができるので、そこのプライオリティは変わらないと思います。

 ただ、鎌田がいない場合、今回は久保がうまく周囲を使っているのが見えたので、その時は彼が軸でプレーすればいい。

 久保の場合、コンディションがいいと止められないけど、コンディションが悪いとプレーも落ちてしまうので、その振り幅が大きいですが、アイスランド戦のようなプレーができれば相手に脅威を与えられるし、確実に日本の力になります。

――FWは上田(綺世)選手がスタメンでしたが、後半から小川(航基)選手が出場し、後半42分に決勝ゴールを決めました。

城 上田は、そんなに良くなかったですね。逆に小川は、存在感を示したと思います。菅原(由勢)のクロスの精度が高く、回転しながら落ちるようなボールだったので、小川は沈み込んで相手の前でボールに触れた。うまく頭をひねりながら逆サイドに決めたのは、まさに技術。

 質の高いクロスにポイントでうまく合わせられるのは、彼の大きな武器です。少ない時間でワンチャンスをものにできるのが小川の特徴ですが、その決定力を証明することができたのは大きいです。

「今回のW杯でブレイクするかも」と絶賛した意外な選手とは

――途中から後藤(啓介)選手、塩貝(健人)選手が入りましたが、彼らの動きはどう見えましたか。

城 後藤は、後半28分からの出場で時間も短かったし、ほとんどなにもできずに終わりました。小川との共存を試みていたけど、後藤はやはりワントップの選手。ボールを収めて展開するというプレーができないと使いどころが難しくなる。今のところは上田、小川に次いで3番目の選手です。

――塩貝選手の評価は、いかがですか。

城 塩貝は、非常におもしろい。21歳だけど負けん気が強くて、気持ちを表現できる。入ってきたらいきなりスイッチが入って、がむしゃらにプレーしていた。今の代表の選手はうまいし、きれいに戦っているけど、泥臭く、ギラついた感じを出してプレーする選手がいない。だからこそ塩貝がすごく輝いてみえました。

 スタメンは分からないけど、拮抗したり、負けている時、リズムを掴めない時にピッチに入ると一気にリズムを変えてくれそうですし、チームを引っ張って行く気がします。少なくともジョーカーとして活躍するでしょうし、もしかすると今回のW杯でブレイクするかもしれないですね。

「日本もベストメンバーで行く必要がある」W杯初戦・オランダ戦のスタメン予想

――チームは途中から瀬古歩夢選手をアンカーに置いて、2トップにシステムを変えるシーンがありました。

城 守田(英正)を外した理由がそれだったということでしょう。瀬古はセンターバックもできるし、ボランチもできる。ボランチ単体で言えば守田の方が上だけど、2つのポジションができるところを評価したのでしょう。

 W杯は、不測の事態が起こり得る大会ですし、常にベストメンバーで戦えるわけでもない。何かが起こった時、瀬古をこういう形で使えるという目処がついたのは、ひとつ収穫だったと思います。

――今回の結果を受けての初戦のオランダ戦の11人は、どうなりますか。

城 オランダは4-3-3のオーソドックスなスタイルですが、個のレベルは相当高い。そこに対抗するには日本もベストメンバーで行く必要があります。GKは鈴木彩艶、センターは板倉、左に伊藤(洋輝)、右に冨安。鈴木淳之介も良い選手ですけど、初戦は経験と安定感のある3人で行く方がいいでしょう。

 ダブルボランチは、鎌田と佐野海舟、右アウトに堂安、左アウトに中村、右シャドーに久保、左シャドーに伊東、トップは上田。これが現時点で一番戦えるメンバーだと思います。

――そのメンバーで戦うオランダ戦は、どんな展開を予想していますか。

城 W杯の初戦は、どこと対戦しても難しい。特に試合の入りは慎重にいかないといきなりやられてしまう可能性がある。そうなると苦しい展開になるので、最初からいい緊張感で入ること。

 試合はオランダに主導権を握られると思うので、日本の持ち味である堅い守備で我慢し、相手の長所を消していく。そこで相手のミスを突いてカウンターを狙っていくのがベストな戦い方だと思います。

 あと、日本はイージーなミスをしないこと。壮行試合ではイージーミスが散見されたので、初戦までに修正していくべき。初戦は勝利が一番だけど、個人的には勝ち点1で十分だと思います。ここで勝ち点を奪って切り抜けたらトップ通過も見えてくるでしょう。

――日本は、北中米W杯で世界を驚かすことができますか。

城 オランダを始め、世界各国は自分たちが思っている以上に日本を警戒している。相手も日本と戦うのは嫌なんじゃないかな。そのくらい相手国が日本を警戒するW杯は過去なかったでしょう。

 今の日本は4年前とは異なり、強い選手を抱え、戦える力も十分持っている。W杯で、何かを起こしてくれるんじゃないかなと期待しています。

取材・文=佐藤俊

(佐藤 俊,城 彰二)