男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-あの時、彼(彼女)は何を思っていたの…?

誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。

さて、今週の質問【Q】は?

▶前回:「初デートで映画、何が悪かった?」見終わったあと、夕食の誘いを女が断ったワケ




― どうして、この人と結婚してしまったのだろうか。

結婚して、わずか9ヶ月。まだ子どもはいないけれど、私たち夫婦は離婚の危機に瀕している。

正確に言うと、一方的に別れを切り出されている。

「祥子とは、もう無理だわ」
「え…嘘でしょ?」

交際期間、わずか半年だった。

外資系投資銀行に勤める夫の鉄二の稼ぎは優に5,000万を超えており、今は港区のタワマンに住み、夢のような生活を過ごしている。

それなのに、今、その生活が音を立てて崩れそうになっている。

― もしかして、他に若い女ができた…?

別れたら、私の人生が終わる。だから何としてでも、離婚は阻止したいが、鉄二の意思は固く、離婚届けを突き付けられている。


Q1:男が結婚を決めた理由は?


鉄二と出会ったのは、食事会の席だった。日系の航空会社で客室乗務員をしていた私は身長が167cmあり、モデル体型で顔もどちらかというと整っているおかげか、デートのお誘いは絶えなかった。

そんななか、外資系投資銀行相手の食事会があり、ここぞとばかりに気合を入れた私。

そこにいた一人が、鉄二だった。

東京出身、東大卒の外銀勤め…。

滅多に市場に出てこない、超優良物件だ。もちろん私は最初から彼に狙いを定めた。食事会の間、ずっと隣の席をキープし女性としての武器を使えるだけ使った。その結果、彼は見事に私の策にハマったのか、連絡先をこっそり聞いてきた。

ここからは、簡単だった。

デートは毎回、一軒目で帰る。一見、派手に見えるかもしれないけれど、どれほど真面目な生活をしているかをアピールしてみる。

決め手となったのは、三度目のデート。

いつも通り、ブランド品を一つも持たず、超シンプルな服装で私はデートの場所に指定された、「コンラッド東京」に入っているバー&ラウンジ『トゥエンティエイト』へと向かう。




「鉄二さん、お待たせしちゃってすみません」
「ううん、俺も今きたところだから」

このバーは、私のお気に入りの場所でもあった。

28階から見える東京の夜景は絶景で、いつ来ても凛とした気持ちになると同時に、心が華やぐ。

「本当に、綺麗」

夜景を見ながらそう呟くと、目の前にいる鉄二はとても優しそうな表情を浮かべている。

「祥子ちゃんって、意外だよね。派手そうに見えるのに、あまり店とか知らないし、実はとっても家庭的な感じもするし…しかもご実家もちゃんとしているって最高だよね」
「まぁ実家は一応、都内にあるけど…でもそうなの。みんな、外見で判断してくるけど、実は家に引きこもって動画とか見るのが好きだし」

実家は都内といえども、ギリ都内だ。でもそれを詳しく言う必要は、今はない。そして“家にいるのが好き”とアピールすることも、この手の男性には有効だと思う。

「それがいいよね」
「本当に?私生活が地味すぎて、恥ずかしいよ」

この言葉を、どれほど鉄二は信じてくれていたのだろうか。




33歳の私は、かなり焦っていた。

なぜなら、周りはみんなお金持ちと結婚し、幸せな家庭を築いている。それなのに、いまだに私は仕事を続け、独身のまま…。

いくらデートの誘いが絶えなくても、自分の年齢を客観的に考えると、早く結婚相手を見つけるのが最善の策だとわかっていた。

だから私は、どうしても鉄二で決めたかった。私の描いている幸せな将来を作ってくれるのは、彼しかいないと思ったから。

「でも鉄二さんも、意外と言えば意外かな。お仕事すごく忙しそうなのに、こうやって会う時間作ってくれて…嬉しい」
「それは、俺も会いたいなと思ったから」
「そうなの?嬉しい」
「実は最近、婚約破棄してさ…だからこのタイミングで祥子ちゃんに会えたのは運命なのかなって。親とかにも会っていて、式場も予約していたから結構辛くて」

今から考えると、39歳になる鉄二も鉄二で、結婚に焦っていたのかもしれない。

「そうなの?それは大変だったね。でもご縁がなかったのかも…それに、その彼女のおかげで、こうして鉄二さんに会えたからむしろ感謝しないと♡」

この反応が良かったからだろうか、この日タクシーの中で「うち来る?」と誘われた。

しかしもちろん丁重にお断りをした結果、五度目のデートでなんとなく交際が始まり、半年で入籍に至った。

自分でも、あまりにもトントン拍子で驚いた。

しかし一緒に暮らし始めて、なぜ彼がこんなにも早く結婚を決めたのか、なんとなくわかることになる…。


Q2:男が結婚を決め、そして早々に離婚を決めた理由は?


あまりにも順調に駒が進んだ鉄二との結婚。結婚式は、「トラウマがあるから嫌だ」と断られ、式は挙げられなかった。

それでも良かった。なぜなら当初は幸せいっぱいで、もちろん私は仕事を辞め、専業主婦になれたから。

「鉄二。私、仕事を辞めたいんだけど…。妊活もしたいし」

そう言うと、意外なほど快諾をしてくれた鉄二。

「わかった。でもせっかくなら…落ち着いたタイミングでいいけど、祥子がやりたい事をやってみたら?」

しかも「やりたい事をやっていい」とまで言ってくれる、最高の夫だ。

そんな鉄二との結婚生活は快適そのものだった。

移動は基本タクシーで、お誕生日やクリスマスには、オレンジのボックスも買えるようになった。鉄二のおかげで、“エルパト”もできるようになった。




生活費は全部鉄二のクレジットカードで済むし、もちろん家賃もかからない。高級外車も、タワマン生活も…すべてが手に入った。

でも徐々に、鉄二の帰宅が遅くなっていることに、気がついていなかったわけではない。

結婚して半年経った頃から、夫婦の会話は減ってきて「仕事が忙しい」ことを理由に、鉄二の帰宅時間が遅くなってきた。

そんな時、決定的な出来事が起こる。

「鉄二、最近遅いよね」

不意に漏らした私のこの一言が、鉄二の気に触ったのか、彼は急に声を荒らげた。




「お前、家にいて何もしていないくせに、よくそんな文句ばかり言えるな?文句あるなら、働いたら?」
「そんなこと言われても…」
「俺がお前と結婚したメリットって、何?何があるか、述べてもらっていい?」

鉄二の急変っぷりに、ショックよりも恐怖心が勝った。

「ごめん…」
「一旦、家族カード止めるから」
「え、嘘でしょ?それだけは勘弁して!!」

ここから私のブランド物のバッグが投げ捨てられそうになるくらいの大ゲンカに発展してしまった。

しかもクレジットカードを止められたら、終わる。シンプルに、私の人生が終了だ。

だからこれ以降、私も強く言えず、鉄二の帰宅時間が遅くても何も言わないようにしていた。

それなのに…。

これだけ我慢したのに、結局離婚を突きつけられている私。急に妻である私に対してシビアになった夫に対し、文句も言わずに付き合ってきた。

― もしかしてサイコパス?

そう思っても、夫だから付き合ってきた。

腹立たしい気持ちはもちろんあるけれど、この先どうすれば良いのか、どこでどうボタンを掛け違えたのか…。

そもそも、最初からこの結婚は間違っていたのだろうか。もしそうなら、どこから巻き戻せばいいのだろうかと、途方に暮れている。

▶前回:「初デートで映画、何が悪かった?」見終わったあと、夕食の誘いを女が断ったワケ

▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由

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男が離婚を決めた理由は?