ホンダが新「MEV-VAN」の実車初公開! 画期的な内装の反響は? すぐに電池交換で「1日100km超走行」を想定

写真拡大 (全3枚)

ホンダが提案するN-VANベースの脱着式バッテリーEVとは?

 2023年3月15日から17日に開催された「第13回国際スマートグリッドEXPO」のホンダブースに出展された軽自動車「N-VAN」ベースの電気自動車「MEV-VAN Concept」が話題となっています。

見た目は「N-VAN」とソックリ! ホンダが新たにお披露目した「MEV-VAN Concept」とはどのようなモデルなのか?(撮影:加藤博人)

 今回で13回目の開催となる「国際スマートグリッドEXPO」とは、単体でのイベントではなく、<スマートエネルギーWeek>(主催:RX Japan株式会社)として、H2 & FC EXPO(旧名称:FC EXPO 水素・燃料電池展)、PV EXPO 太陽光発電展、BATTERY JAPAN(旧名称:二次電池展)などと同時に開催される合計7つの展示会の中のひとつです。例年、関東と関西で春、秋に開催されています。

【画像】これは凄い! ホンダが画期的な軽バンを初公開! 「MEV-VAN Concept」の画像を見る(28枚)

 第13回国際スマートグリッドEXPOに初めて展示されたN-VANのコンバートEVは着脱式のバッテリー「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」(以下、MPP)を採用しています。

 MPPはさまざまな電動モビリティ/機器の動力源として活用が可能な、1.3kWh以上の大容量電力を貯蔵するリチウムイオンバッテリーです。

 すでに発売されているホンダのビジネスバイク「BENLY e:」や「GYRO e:」などにも搭載されています。

 また3月17日から19日に開催された「大阪モーターサイクルショー」ではMPPを搭載した新型電動モデル「EM1 e:」が日本初公開されました。

 そのMPPを初めてホンダ四輪車に搭載したのが、今回のN-VANベースのコンセプトモデルとなるMEV-VAN Conceptです。

 エンジンの代わりに車体の前後にドライブユニットを搭載、さらに後部座席位置の下部(N-VANでは燃料タンクがあるところ)にMPPを8個搭載しています。

 8個すべてを満充電した状態での航続距離は75kmとなり、合計電圧は50.3V、最大出力20kW、容量10.4kWh、総重量82.4kgで、ドライブユニットの出力は14kW、最高速度70km/h、最大積載量250kgを実現しています(開発中の数値)。

 注目すべき特徴としては「ガソリン車のN-VANをEVにコンバートすることが可能」、「充電ステーション『Honda Power Pack Exchanger e:』の活用で待ち時間なくバッテリー交換が可能」、「脱着式バッテリーMPPは電動バイクなどとも共有できる」などが挙げられます。

ベース車であるN-VANとは何が違う?

 ベース車であるN-VANは、ホンダの軽商用バンとして2018年に登場。ホンダの軽自動車「Nシリーズ」のN-BOXのシャシやパワートレインをベースに商用車に最適化して開発。また特徴として、軽商用車として初の助手席側のセンターピラーを廃したモデルでもあります。

 そんなN-VANですが、今回のMEV-VAN Conceptとはどのような違いがあるのでしょうか。開発を担当した本田技術研究所先進パワーユニット・エネルギー研究所の小野浩一氏は次のように話を伺いました。

―― MEV-VANのコンセプトや想定される使用状況などを教えてください。

 今回出展したMEV-VAN は着脱式バッテリーMPPによって軽バンを走らせるためのスタディモデルになります。

 MEV-VAN が目指すところはガソリン軽商用車の代替ではなく、いわゆる「ラストワンマイル」需要にこたえるもので、1日100km超の配送を想定しています。

 フル充電でスタートし午前中の配送を終えたところで営業所に戻ってバッテリーを交換。お昼の休憩をはさんで午後の配送に出かけるというような使用です。

 近い範囲にエリアをしぼった配送などを想定しているので、必要最小限の航続距離と動力性能になっています。ホンダが2024年春に発売する「新型軽EV」や日産「サクラ」などの軽EVとのすみ分けもできると考えています。

―― ベースとなるガソリン車のN-VANとは何が異なりますか。

 MEV-VAN はN-VANを改造して作った、コンバートEVのコンセプトモデルです。

 エンジンを下ろした部分にモーターを搭載し、元々は燃料タンクがあった床下部分にバッテリーユニットを搭載し、着脱式バッテリーMPPを8個収めています。

 また、クルマの状態をモニターするためのタブレットを付けています。

 大きな荷物も積みやすい大開口部を実現した助手席側のセンターピラーレス(ドアインピラー構造)などは変更ありません。

――室内高ついてはいかがでしょうか。

 N-VANの大きな特長である荷室高1365mmは変更ありません。ただし、床下にバッテリーパックを収めている関係で最低地上高だけが少し低くなっています。

―― 最大積載量に変化はありますか。

 N-VANの最大積載量は軽バンとしては一般的な350kgですが、MEV-VANではバッテリーパックが約80kgになるため、最大積載量は250kgとしています。

床下にバッテリーを8個搭載する「MEV-VAN Concept」(撮影:加藤博人)

―― 8個のバッテリーは同じように減っていくのでしょうか。

 8本同時に減っていきます。8個のバッテリーパックをフル充電するには約5時間を必要とします。

 またバッテリーを入れ替えるときも8個が同じ充電量であることが必要になり、個々のバッテリーパックに電圧差があるとうまく作動しない仕様になっていますが、フル充電じゃなくても8個が同じ残量であれば問題ありません。

―― 来場者の方々からの反応はいかがですか。

「最高速度が約70km/hで満充電からの航続距離が75km位です」とお伝えすると、「それでは高速道路を走れませんね」、「長距離は無理ですね」という反応を最初に頂きます。

 しかし、私たちが目指すところのラストワンマイル需要や開発のコンセプト、他の軽EVなどとの違いやすみ分けについてご説明すると、ご理解いただけるようです。

※ ※ ※

 なお、ホンダは2024年春にN-VANをベースにした「新型軽商用EV」の発売を公表していますが、こちらの新型軽商用EVは従来通りのシャシにバッテリーを固定搭載する方式となり、今回のMEV-VAN Conceptとは全く異なるEVです。

 現在のところ、MEV-VAN Conceptの実用化や発売予定はないとのことですが、着脱式バッテリーの採用で充電に時間を要さないことはもちろん、既存の軽バンからEVへのコンバートが可能という点でも実用化への期待が大きく高まりそうです。