この記事をまとめると

■ウインカーを作動すると「カチカチ」という音がする

■昔は装置の中のリレーの音として出てしまうものだった

■法的には音がなくても問題はない

もともとは装置が作動するとき「出てしまう」音だった

 ターンシグナルレバー(ウインカーレバー)を操作して、左右いずれかに曲がる意思表示をした際、カチカチとウインカーの作動音が聞こえてくる。さて、この作動音だが、なぜ音がするのか、考えたことがあるだろうか? 法令で定められているから?

 ウインカーの作動音について、道路運送車両法を調べてみたところ、とくに、どんな音を発しなければならないとか、音を発しなければいけないといった規定は見当たらなかった。つまり、作動音どんな音でもよく、逆に発しなくもよい、と解釈できるものだった。

 では、なぜ作動音がするのか、という理由だが、これは方向指示器の発達のなかで生まれた音だった。ご記憶の方もいるかもしれないが、初期の方向指示器は「腕木式」と呼ばれるスタイルで、進行方向を変えようとした場合、内照式の指示器、左右のいずれかを振り上げることで、ドライバーの意図を周辺車両や人に知らせる方式だった。振り出した指示器の形が、人間が腕を振り上げたような形に見えることから、腕木式という名前がついたものである。

 この方式から進化した形式が、ウインカーレバーの操作によって、左右に設けたランプのいずれかを点滅させ、進みたい方向を示す現在の方式である。この際、ランプを規則正しく点滅させるために使われた機器がウインカーリレーで、ランプ点滅のため作動電流を一定のリズムで断続する作動音が「カチカチ」という音だったのである。

現在は音を作ってあえて出している!

 現在のウインカー機構は、電子回路で構成されるため、基本的には無音作動である。なお、点滅によるウインカーシステムが確立され始めた時代には、曲がり終えたら手動でウインカーレバーを中立位置に戻す作業が必要だった。この手間を省くために実用化されたものが、ウインカーレバーのオートキャンセル機構である。車両が向きを変えステアリングが中立位置に戻る際、その動きに連動して自動的にウインカーレバーを中立位置に戻す機構である。この機構の実用化により、ウインカーレバーの戻し忘れ(ウインカーが作動したままの状態)が事実上なくなったのである。

 さて、ウインカーの作動音だが、ウインカーレバーのオートキャンセル機構が実用化されたことで、ウインカーの作動に関する問題はなくなったと言ってもよかったが、作動音にはドライバーにウインカー機能が働いてることを伝える働きもあった。これはハザードランプ作動時も同じだが、作動音がドライバーに注意を喚起するのである。

 今も続く作動音だが、ウインカーやハザードランプが働いていることをドライバーに知らせる意味があり、使うならシンプルで耳に馴染んだものがもっともわかりやすいと考え、伝統的に聞き慣れた音、一種のウォーニング音にもなる、あの「カチカチ」という音が使われ続けてきたわけである。こう考えてみると、作動音が携帯の着信音のようなメロディーを持ったものでは耳障りかもしれないし、わかりやすく違和感がないという点では、やはり「カチカチ」という音が最適なのかもしれない。