「早い段階から“近しい人物”による犯行とみて、防犯カメラの分析などを続けてきた」(捜査関係者)

【写真】三ツ本寛己容疑者の母が購入したという犯行現場の家

 今年11月8日、東京都東久留米市の一軒家で、会社員の二岡一浩さん(55)が惨殺された事件。その1カ月後、逮捕されたのは、“身内”である三ツ本寛己容疑者(28)だった。

自らの犯行を第一発見者として110番通報

 寛己は、二岡さんと長年の内縁関係にある50代女性の次男。現場となったのは、寛己の母が約5年前にローンを組んで購入した新築の戸建てで、寛己の母と妹、二岡さんの3人が暮らしていた。

「発生時、母と妹は11月2日から9日までの日程でイタリア旅行に出かけていて留守でした。母が二岡さんの職場から『出勤して来ない』と連絡を受け、近くに住んでいた次男の寛己に様子を見に行ってもらい、事件は発覚しています」(社会部記者)

 現場は東西に平行する西武新宿線と同池袋線の中間地点に位置し、新旧の戸建てが混在する住宅密集地。寛己が一人暮らしをする東久留米市内のアパートからは直線で2キロ強の距離だった。自らの犯行を第一発見者として110番通報した寛己は、実家の惨状を前に、激しく動揺した素振りを見せていたという。


強盗殺人の疑いで逮捕され、警視庁田無署を出る三ツ本寛己容疑者(左) ©共同通信社

「慣れた強盗犯だとすれば、やり方が雑過ぎる」

 だが、事件には当初から不可解な点がいくつも存在していた。

「家の中は、台所と風呂以外の部屋がほとんど荒らされていたため、金品目的の侵入と見立てて『強盗殺人事件』の特別捜査本部が設置されたが、被害者の財布は残されたまま。また、他の家族が旅行中で、被害者が一人でいる期間を狙い撃ちにされている。家の内情に通じている者が、物取りに偽装して凶行に及んだ疑いがあった」(前出・捜査関係者)

 そして、侵入経路と目された1階の掃き出し窓と周囲の不自然な痕跡。

「窓のガラスに熱を加えて破る“焼き切り”と呼ばれる手口を使って外から開錠した形跡があったが、割られた大きさは、幅20センチから30センチ。慣れた強盗犯だとすれば、やり方が雑過ぎる」(同前)

「割られた窓も偽装の可能性がある」

 外から焼き破られた窓のガラス片は室内にも飛び散っていたが、そこから侵入したにしては、土足でガラス片が踏み抜かれた跡はほぼみられなかった。

「割られた窓も偽装の可能性がある。玄関の鍵をピッキングした形跡もなく、実際の侵入経路として、玄関から鍵を開けて押し入ったとも考えられた」(同前)

 実は過去に一時期この家で同居していて、合鍵を持っていた身内の寛己なら、それが可能だったのだ。

 事実上の“継父”を殺めた寛己とは、どんな人物だったのか。

 母が現場の戸建てを購入する前、一家は西東京市の都営住宅に暮らしていた。

「母親と祖母、3人の子供の5人で、10年ほど住んでいました。未成年だった子供たちは地元の中学校を出て、高校に進学したはずです。次男は礼儀正しくて、ハキハキ挨拶をしてくれる気持ちのいい子でしたよ。成人してからは、福祉関係の仕事をしていたようで、介護施設のユニフォームを着て働いている姿を何度か見かけました」(当時を知る地元住民)

心臓を貫通し、背中に達した傷も

 寛己は職を転々とし、去年まではコンビニのアルバイト店員として主に深夜帯の勤務をしていたというが、逮捕時は無職だった。

 先の住民が続ける。

「越してきた当初から父親はおらず、ある時期から母親の内縁の夫がバイクで通ってくるようになりました。その方も休日は家族と一緒に買い物に出かけていましたし、泊まっていくこともありましたから、子供たちとも仲良くしていたと思うんです」

 一方で際立つのは、二岡さんに向けられた殺意の激しさだ。寛己は11月8日の未明頃、2階寝室で就寝中だった二岡さんに刃物を30回以上、振り下ろしたとされる。心臓を貫通し、背中に達した傷もあり、二岡さんの体に残った傷痕は70カ所にも及んだ。

 逮捕に先立って行われた寛己のアパートの家宅捜索では、複数のナイフが押収されているが、犯行に使われた凶器はまだ見つかっていない。

「同居をやめて一人暮らしを始めた経緯や二岡さんとの関係性など、動機や背景の解明もこれからです。現状は強盗殺人容疑の逮捕ですが、本質的には一方的な怨恨による事件ではないかと。起訴時は単体の殺人罪になるかもしれません」(別の記者)

 逮捕された12月2日、駆けつけた報道陣のカメラに顔を背ける様子もなく、悠然と警視庁の車両に乗り込んだ寛己。調べに対して「やっていません」と容疑を否認する一方で、当日未明の行動については「酒を飲んでいてよく覚えていない」と話しているという。

(「週刊文春」編集部/週刊文春)