栃木強盗事件、殺人を実行していない「指示役夫婦」に死刑判決はあり得る? 弁護士が解説
栃木県上三川町の強盗殺人事件で、逮捕された指示役とされる夫婦が、実行役とみられる少年とリアルタイムで通話し指示していた可能性があることが報じられました。
報道によると、逮捕された夫婦は、少年4人らと共謀して、栃木県上三川町の住宅に押し入り住民を殺傷したとして強盗殺人などの疑いが持たれています。
この夫婦が現場で殺害を実行したわけではありませんが、指示役として関わった場合、有罪となったら罪の重さはどのくらいになるのでしょうか。解説します。
●自ら犯罪を実行していない指示役も「強盗殺人罪」で処罰されうる
夫婦は現場で強盗行為そのものを実行したわけではありません。
しかし、このような場合でも「共謀共同正犯」(きょうぼうきょうどうせいはん)として、実行犯と同じ法定刑が適用される可能性があります。
共謀共同正犯とは、たとえば自らが犯罪を計画し、主導的な立場で犯罪に関わったような場合には、自ら犯罪を実行していなくても、正犯として責任を負うしくみです。
●強盗殺人の法定刑は「死刑か無期」の二択
刑法240条は、強盗が人を死亡させた場合の刑を「死刑又は無期拘禁刑」と定めています。有期拘禁刑(たとえば「20年」など)の選択肢は、条文上ありません。
ただし、「酌量減軽」という制度(刑法66条)で、裁判所が特に考慮すべき事情があると認めた場合、有期刑(最長30年)に下げることができます。
実際に、強盗致死の事件で酌量減軽が認められ、有期刑が言い渡された裁判例もあります(宇都宮地裁令和元年(2019年)12月6日など)。
なお、「強盗殺人」と「強盗致死」という用語は、実務上は使い分けられています。
最初から殺害して財産を奪うつもりで死亡結果を発生させた場合が「強盗殺人」、財産を奪うつもりで暴行を加えた結果(殺害するつもりまではなかったが)死亡結果が発生した場合が「強盗致死」と呼ばれています。
ただ、条文上はいずれも刑法240条であり、法定刑は死刑か無期拘禁刑です。
●被害者1名でも死刑となった裁判例もある
死刑と無期を分ける基準として、最高裁は昭和58年(1983年)の永山事件判決で、犯罪の性質・動機・犯行態様(残虐性など)・結果の重大性(特に被害者の数)・遺族の被害感情・社会的影響・犯人の年齢・前科などを総合的に考慮するとしました(「永山基準」)。
実務上は、被害者が1名の場合、無期にとどまることが多いと考えられます。
ただし、被害者1名でも死刑が確定した裁判例もあります。
たとえば、1979年に北九州市で起きた病院長の殺害事件は、被害者1名、共犯者2名による強盗殺人事件です。この事件では、共犯者2人に死刑が言い渡されています。
事前の緻密な計画、遺体の切断・海への投棄、反省のない態度などが重視されました。その後死刑が確定しています(最高裁第2小法廷昭和63年(1988年)4月15日)。
また、2007年に名古屋で起きた「闇サイト殺人事件」では、インターネットで集まった3人により、強盗目的で女性が拉致され、殺害されています。
この事件では、計画性の高さと犯行の悪質性が重視され、2名に死刑、自首した1名に無期懲役刑(現在の無期拘禁刑)が言い渡されています(名古屋地裁平成21年(2009年)3月18日)。
いずれも計画性・主導性・残虐性が顕著だった事案で、被害者数の少なさを補うほどの悪質な事情があったと評価されたと考えられます。
●無期が有力だが死刑もあり得ない話ではない
本件も、亡くなった方が1人であることからは、基本的には無期拘禁刑となる可能性が高いと考えられますが、事前の計画性の高さ、犯行の悪質性、反省の態度、前科などの様々な事情が明らかになった場合には、より重い選択がされる可能性は否定できません。
具体的な事情は今後明らかになると思われますが、たとえば、計画性が高い組織的な犯行だったり、首謀者として中心的な役割を果たしていたり、リアルタイムで犯行を指示・統制し、少年らを脅迫的に支配下に置いていたなどの事情が裁判で認められた場合、より重い選択もあり得ます。
特に、当初から殺害までを計画し、そのような指示をしていたか否かは大きな問題になりそうです。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)
