刑事ドラマ「ボーダレス」は低調スタートを挽回できる? 社会部記者も唸らせる“斬新な設定”も「相棒」「刑事7人」の“水9枠”ではアダになったか
移動するトラックが…
俳優の土屋太鳳(31)と、人気グループ・timeleszの佐藤勝利(29)がダブル主演を務めるテレビ朝日系のドラマ「ボーダレス〜広域移動捜査隊〜」が4月8日にスタートした。
【写真を見る】長寿シリーズも…テレビ朝日で水曜午後9時枠に放送された刑事ドラマ
放送枠は「相棒」、「刑事7人」、「特捜9」など、同局でも人気刑事ドラマシリーズが放送されてきた水曜午後9時枠なのだが……。
「ドラマですから、設定は自由なのはわかりますが、最初に内容を聞いたときは驚きました。特別な刑事たちが、秘密基地のように設けられた場所を捜査拠点にするなら分かりますが、まさか移動するトラックが拠点とは……」(放送記者)
日本の現行警察制度では、事件発生地の都道府県警が捜査を担当し、複数の地域にまたがる事件が起きると広域指定事件に指定され、関係する警察本部が協力して事件を解決することになる。しかし、実際の捜査現場では縄張り意識からくる対抗心や、捜査手法に対する考え方の違いなどから、双方が衝突することも多い。そこで、このような状況をなくし、双方の捜査共助を円滑に行えるようにするために警察庁が試験的に運用を決定した「移動捜査課」が舞台となっている。

同ドラマの公式サイトによると、トラックは2台編成。1号車の通称「一番星」は、長さ11メートル、幅2.49メートル、高さ3.5メートル。2号車は移動取調室で、長さ4.99メートル、幅1.99メートル、高さ3.05メートルで2台が日本中のどこへでも駆けつける。
移動捜査課のメンバーが詰めるのは「一番星」。トラックの内部には捜査本部、取調室、留置施設が置かれ、災害派遣支援物資輸送車の役割まで持っている、機動隊でも持っていないスーパー車両。ここに乗り込んだ移動捜査課の7人の刑事たちが容疑者を追い詰め、事件を解決する姿を描く。
「“トラック”と“一番星”のワードで思い浮かぶのが、70年代の東映の人気シリーズ『トラック野郎』と、故・菅原文太さんが演じた主人公・星桃次郎の通称です。でも、今の若い世代にはまったく馴染みのないネーミングでしょう。これまでの刑事・警察ドラマがほとんどの部署を設定として扱い、そろそろネタ切れだと思われていた中、まさかの移動型捜査本部という“新手”でした」(テレビ局関係者)
警察ドラマといえば、捜査1課や警察署の刑事課が舞台になるものが多かった。それが近年では様々な係や部署を扱うようになり、例えばテレビ朝日なら「相棒」では実際には存在しない「特命係」、あるいは「大追跡 警視庁SSBC強行班係」では防犯カメラの追跡捜査を専門とする捜査支援分析センター(SSBC)。また「科捜研の女」では、捜査を支える、科学捜査研究所が舞台になった。
今作で脚本を担当するのは「踊る大捜査線」、「教場」(いずれもフジテレビ系)シリーズで知られる君塚良一氏。
「『踊る〜』ではドラマの本筋と共に警視庁本部と所轄、キャリアとノンキャリアの対立といった、警察内部の問題点をあぶり出し、原作小説も人気だった『教場』では、警察官を育成する教育訓練機関である警察学校を舞台にしてドラマ・映画ともに大ヒットしました。また、フジでは『東京P.D. 警視庁広報2係』で、マスコミ対応をする広報課を描いたドラマも制作しています」(ドラマ制作会社スタッフ)
特に「踊る大捜査線」シリーズで、警察ドラマに新しい視点を取り込んだ君塚氏だけに、注目が集まっていたという。
配役も主題歌も万全
移動捜査課のメンバーである土屋は、思ったことはすぐに口に出す激情型で、誰にもこびず臆さず相対するが、ある過去を持つ仲沢桃子役。佐藤は新人刑事・黄沢蕾役。1か月前のある事件で、熱血ゆえのミスを犯すが、「大型自動車免許を持っている」という理由で、移動捜査課に拾われた。ほかに課長でチームリーダーの赤瀬則文役を、井ノ原快彦(49)。ノンキャリの刑事役を優香(45)らが演じ、「メカじい」こと、移動捜査課をバックアップする立場である自動車整備のプロ・緑川宗一郎役を北大路欣也(83)が演じている。
「新メンバーの加入で人気上昇中のtimeleszですが、旧ジャニーズ問題以降、映像作品のオファーが激減。しかし、旧ジャニーズからマネジメント業務を引き継いだSTARTO ENTERTAINMENTの所属タレントを重宝するテレ朝が今回、佐藤さんを主演に起用しました」(芸能記者)
井ノ原は主演していた「特捜9」シリーズが昨年で終了。北大路は、旧ジャニーズ(現・SMILE-UP.)の社長として、被害者の補償業務の対応に当たっている少年隊・東山紀之(59)が主演していたシリーズ「刑事7人」に出演していた。いわば水曜午後9時枠の常連でもある。そして主題歌には、矢沢永吉(76)の「BORDER」を起用。豪華な布陣で初回を迎えることになった。
番組はまず、大ベテラン声優の大塚明夫(66)のナレーションで《この物語は、個性的な7人の刑事が移動する捜査本部車・通称一番星で事件を解決するドラマである》と説明し、放送回のタイトルを読み上げるというこれまでの同局の警察ドラマの常識を覆すドラマとなった。
しかし、平均世帯視聴率は4月8日放送の初回が8.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)で、好発進とはならず。同15日放送の第2話が1.4ポイントダウンの7.3%。第2話は裏番組の日本テレビ系のバラエティー番組「上田と女が吠える夜」の7.9%を下回る結果となってしまったのだ。
レギュラー化の壁は8%?
「同じ放送枠で『相棒』はseasonを重ねるごとに視聴率はダウンしているものの、昨年10月から今年3月まで放送されたseason24(全19話)の平均世帯視聴率は9.7%。昨年4月から6月に放送された『特捜9』のfinal season(全10話)は平均で8.1%。平均で8%台をキープできれば、シリーズ化もあるかもしれません」(前出・放送担当記者)
第2話では、死体が発見されたのが警視庁管内、犯人が自首したのが神奈川県警。それぞれに捜査本部が設置されるが、互いのメンツがぶつかり合い、捜査がうまくいかない。そこで、移動捜査課に出動命令が下ることに……。
「社会部の記者に聞くと、実際に警視庁と神奈川県警は仲が悪く、過去にも色々な事件でぶつかっているそうです。ただ、警察内部の事情より、罪を犯した犯人にも様々な“事情”があることを描くなど、刑事ドラマ本来の作りを追求した方が一般視聴者の反応はいいのでは。『相棒』など、重厚なドラマに親しんできた水曜午後9時枠の視聴者は、あまりにも新機軸な設定に視聴を敬遠したのではないでしょうか」(放送担当記者)
最近の犯罪は、トクリュウと呼ばれる匿名・流動型犯罪グループのような、複雑な組織が主流だ。
「それに対抗するためか、捜査員はフルリモートで機動的に動ける。横並びで上下関係がないなど、常識を覆す設定も、本格刑事ドラマに見慣れた層には敬遠されたのかもしれません」(同前)
デイリー新潮編集部
