鶴の湯の経営を引き継いだ相良さん。再開に向けての作業が着々と進む(3月25日、調布市で)

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 昨年夏に廃業した東京都調布市の老舗銭湯「鶴の湯」が新たな経営者を迎え、4日に営業を再開する。

 客として通い、ほかにも国内外1000軒以上の温浴施設を訪れたという「銭湯好き」の相良政之さん(27)が、「銭湯文化をつなげたい」と経営を引き継いだ。(宮川徹也)

 3月下旬、鶴の湯では、壁の塗装や床の貼り直しなどオープンに向けた作業が急ピッチで進んでいた。周辺住民が通るたび、相良さんは「復活するので来てください」と声をかける。

 高さ20メートル弱の煙突が目印の鶴の湯は1950年代前半の開業とみられる。この地域に銭湯は少なく、近くの住民が通う憩いの場となっていた。しかし、設備の老朽化などが理由で昨年7月末、惜しまれながら廃業した。

 福島県郡山市出身の相良さんは、18歳で府中市の一般企業へ就職。鶴の湯など周辺の銭湯に通ううちに、店ごとに違う特徴を持つ魅力に気づいた。銭湯を巡り、店主に話を聞いて感想とともにSNSに投稿したこともある。「いずれ自分の銭湯を持ちたい」と考えるようになり、銭湯経営を代行する会社に転職した。

 転職7年目の昨年、鶴の湯の廃業を知った。上京後、間もない頃に通っていた銭湯がなくなる――。いてもたってもいられず、会社を辞めて後を継ぐことを決断した。事業承継の手続きを終え、今年2月、再出発に向けて動き出した。

 廃業期間が長引くと設備の老朽化に拍車がかかるため、再開時期を4月に決めた。しかし、引き継いだ機器は想定よりもずっと傷みが進んでいた。銭湯の心臓部でボイラーの役割をする平釜は壊れ、床下の木材は朽ちていた。配管は割れ、設備を動かすと玄関まで水浸しになる。浴槽に湯を張ることさえできなかった。

 再開時期が迫り、相良さんは当時住んでいた台東区から通うのをやめ、鶴の湯の2階に住み込んで作業した。SNSでボランティアを募ると、約80人が集まった。長年鶴の湯に通っていた常連客も参加してくれたという。

 修復のための資金は日本政策金融公庫からの融資などを充てた。平釜を入れ替え、新たにサウナや外気浴が楽しめるエリアを設けた。高い天井を生かし、広いロビーを確保。ハーブティーやクラフトビールを販売し、湯上がりに家族でだんらんし、楽しんでもらう計画だ。

 営業時間は午前6時〜翌午前1時とし、家族連れから仕事終わりのサラリーマン、高齢者ら全世代が利用できるようにするという。原油高など経営への不安はぬぐえず、しばらくは赤字経営も覚悟する。それでも相良さんは「自分自身も、銭湯でたくさんの元気をもらってきた。今度は自分が、地域の人に愛される鶴の湯を作って恩返ししていきたい」と語る。

都内の銭湯は10年前から3割減

 風呂付き住宅の普及や設備の老朽化などから、都内の銭湯は減少している。

 公衆浴場(銭湯)を管轄する都生活安全課によると、2025年12月末時点での都内の銭湯数は417軒で、10年前の628軒から3割減った。減少を食い止めようと、都は今年度から設備の更新費用補助を拡充する。

 同課の小坂勉課長は「銭湯は公衆衛生に加え、地域交流や災害対応、文化発信など多様な役割を持つ。東京にとって大切な存在だ」と話す。