開幕戦の舞台・東京ドーム

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 いよいよ開幕したプロ野球だが、今季のセ・リーグは「阪神で決まり」――そんな空気が開幕前から広がっている。多くの評論家が優勝予想で阪神を1位に据え、その評価は揺るぎないもののように見える。本当にそう言い切れるのか。昨年の圧倒的な戦績とオフの動きを冷静に見直すと、“死角”とも言えるポイントが浮かび上がる。【西尾典文/野球ライター】

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石井大智の離脱

 昨シーズンは5月下旬に首位争いから抜け出し、夏場以降は完全な独走態勢に入った。2リーグ制導入以降では史上最速となる9月7日にリーグ優勝を決めたが、日本シリーズではソフトバンクに敗れた。それでもセ・リーグでは他球団と一線を画す戦いぶりだったことは確かだ。

開幕戦の舞台・東京ドーム

 オフには目立った大型補強こそなかったが、国内フリー・エージェント(FA)権を取得した近本光司の残留交渉に成功した。メジャー移籍を希望していた才木浩人は残留が決まり、戦力ダウンは回避されている。他球団では、岡本和真(巨人→ブルージェイズ)、村上宗隆(ヤクルト→ホワイトソックス)、ジャクソン(DeNA→ロッテ)と主力の流出が相次いだ。戦力を維持できた点は、相対的に見ても大きなプラスと言える。

 そして迎えた巨人との開幕三連戦。初戦はドラフト1位ルーキーの竹丸和幸に抑えられて黒星スタートとなったが、第2戦は高橋遥人が5年ぶりの完封勝利。第3戦では終盤に打線が爆発し12得点を奪い、2勝1敗と勝ち越した。2022年は前評判の高さとは裏腹に開幕9連敗を喫して優勝を逃した。この苦い経験があるからこそ、開幕カード勝ち越しというスタートに胸をなで下ろしたファンは多かったはずだ。

 ただし、不安要素が皆無というわけではない。まず大きな痛手となるのが、昨年セットアッパーとしてフル稼働した石井大智の離脱だ。2月のキャンプ中に左アキレス腱を断裂。全治は明らかにされていないが、手術を受けており復帰まで長期間を要する可能性が高い。

 その代役として期待されるのが湯浅京己だが、3月29日の巨人戦ではダルベックにツーランを浴びるなど、1回を投げて被安打2、1四球で2失点と不安定な内容だった。昨年石井とともに中継ぎを支えた及川雅貴は、同じ試合で7回から登板し、泉口友汰に一時勝ち越しを許すソロ本塁打を許している。抑えの岩崎優は34歳、途中復帰のドリスは38歳とベテランで、石井の穴を埋めるには、若手の底上げが不可欠となる。

主力に不調が起きた場合のリスク

 一方、野手陣は、近本、中野拓夢、森下翔太、佐藤輝明、大山悠輔と続く上位打線が固定されている点が大きな強みである。しかし、上位打線の安定感の裏には懸念があるという。チーム関係者はこう語る。

「レギュラーが固定されているのは良いことですが、実績がある分、先発から外しづらい側面はあります。岡田彰布前監督は、主力でも状態が悪ければ思い切って外し、それがチームの活性化につながっていました。ただ藤川球児監督が就任した昨年はそうした動きが見られなかった。5人とも結果を残しましたが、これが毎年続くとは限りません。機能しなかった時にどう判断するか。その点は藤川監督の手腕が問われます」

 実際、昨年は1番から5番まで同じ打順で120試合以上スタメン出場した。このようなケースは阪神以外に見当たらない。主力に故障や不調といった不測の事態が起きた場合、一気に得点力が落ちるリスクを抱えている。

 さらにもう一つの懸念は、その主力を支える層の薄さだ。球団関係者はこう続ける。

「一昨年は前川右京が結果を残し、次の中軸として期待されましたが、昨年は成績を落とし、今年も開幕一軍を逃しました。ドラフト1位の立石正広は怪我で出遅れている。捕手登録の中川勇斗を外野で起用していますが、中軸としては物足りない印象です。昨年の日本シリーズでは6番以降が機能せず、それが敗因の一つと指摘されました。この課題は解消の目途が立っていません。立石が6番・レフトに定着する形が理想ですが、離脱が長引けば、日替わり起用でしのぐ形になりそうです」

 佐藤輝明は今オフにもメジャー移籍の可能性がある。チームの将来を見据えれば、若手の底上げは避けて通れない。勝利と育成の両立が難しいことは、ライバルである巨人の歩みを見れば明らかだ。

 盤石に見える戦力の裏側には、中継ぎの不安と野手層の薄さという明確な課題がある。主力依存の構造は、ひとたび歯車が狂えば一気に揺らぐ危うさを抱える。優勝候補の筆頭と目される今季の阪神は「勝つこと」だけでなく、「勝ち続けられるチームかどうか」を示さなければならない。評価の高さに見合う中身を備えているのか。その答えがシーズンを通して突きつけられる。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部