2025年のマーケティングおよびメディア業界は、急速な技術進化と市場構造の変化が重なり、これまで当たり前とされてきた前提が揺らぎ始めた1年だった。とりわけAIの進化は、ツールの域を越え、マーケティングにおける生産性と創造性の前提を書き換えつつある。同時に、検索、ソーシャル、コマース、生成AIといった接点が複雑に絡み合い、顧客体験の「入り口」そのものが分散・再編されはじめた。企業は、どこで顧客と出会い、どの瞬間に価値を届けるのかという問いを、改めて突きつけられている。一方で、データプライバシー規制の強化やプラットフォーム側のポリシー変更は、データドリブンな戦略における新たな課題を投げかけた。こうした激動の環境のもと、私たちは既存のビジネスモデルを柔軟に見直し、新しいテクノロジーをどう組み込んでいくかが問われている。Digiday Japan恒例の年末年始企画「IN/OUT 2026」では、当メディアとゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブたちにアンケートを実施。2025年をどのように総括し、そして2026年に向けてどのような挑戦とビジョンを描いているのか。その声を紹介する。花王で、D2Cビジネス部 マネージャーを務める加藤義久氏の回答は以下のとおりだ。

◆ ◆ ◆

――2025年のもっとも大きなトピック・成果は何ですか。

運用を担当している双方向プラットフォーム「My Kao」のコンテンツ活性化によるD2Cビジネスのスケール拡大が、自分にとって最も重要なミッションでした。「My Kao」については、2022年末の立ち上げから約2年間、新規訪問者の獲得やサイト内回遊、再来訪促進のための仕組みづくりと、それらに伴う分析や調査スキームの確立など、環境整備に特化した活動が中心でした。2025年は、これらの環境やリソースを最大限活用し、直販ECであるMy Kao Mallの活性化を視野に入れた生活者とのコミュニケーションやコンテンツづくりに注力しました。My Kaoならではの顧客体験をテーマに、数々の施策を実施できた1年だったと捉えています。

――2026年に向けて見えてきた課題は何ですか。

生活者におけるデジタルリテラシーが高まるスピードが、さらに加速していると感じています。背景には、AIの急激な普及があります。2025年はAIエージェント元年とも言われ、あらゆるツールにAIが実装され、SNSでも生成AIによる動画や画像が溢れました。Webサイトの運用やコンテンツ開発は、生活者の情報ニーズと密接に関係しています。そのニーズをベースとしたアクションが顕著に表れるのが「検索エンジン」です。検索エンジンにAIが実装されたことで、検索結果はよりネクストアクションを生み出しやすいソリューション型へとシフトしています。この状況を踏まえ、私の2026年の課題は「AIエージェントとの向き合い方」だと考えています。独りよがりになりがちなコンテンツ開発において、生活者インサイトやニーズの把握は最重点課題です。GEO、AIO、LLMOなどへの対応を通じて、これらの情報をさらに深掘りしていきたいと思います。

――2026年にチャレンジしたいことを教えてください。

従来のコンテンツSEOに加え、GEO、AIO、LLMOを通じて、カスタマージャーニーとタッチポイントの再定義、ならびにコンテンツ開発スキームの改善に着手したいと考えています。また、自社サイトのUI改修を含め、AI活用についても積極的に取り組んでいきたいです。生成エンジンを自社サイトにとっての脅威と捉えるのではなく、より深く生活者を知るための有効な手段と捉え、共存の道筋をつくることにチャレンジしたいと思います。