当時多数出回ったコピー品に対して、タイトーは著作権訴訟を起こしました。新聞には「インベーダー侵略された」という文字が並びます。

さらに同番組内で、任天堂の山内溥社長(当時)が、ゲームの著作権に対してコメントを残しています。

(山内社長)「遊び方にパテント(特許)はないわけです。したがってですね、コピーをしようという気持ちがあればね、一定の時間があればコピーできるわけです。しかもそれに対してですね、適切な手が果たしてあるかと申しますとないわけです。要はですね、そういう考え方を捨てて、これからのアミューズメント業界の発展のためにはですね、むしろ相互にそういうソフトをね、もう公開して、そしてこの新しい、しかも巨大な、そしておそらく衰えることない、インベーダーは衰えても、マイコンを軸にした遊びは栄えていく。これらのものを発展させていくために、当然その秘密とかなんだとかいう考え方を捨ててね、そしてお互いの開発した、そういう優れたものを交流していくと。そういうことが望ましいんであるわけですね」

この発言は、TVゲームの歴史を語る上で、今でも時々引き合いに出される伝説的なコメントです。現在の状況と照らし合わせて考えると、色々と感慨深くてたまりません。個人的には、ニコニコ動画やYouTubeなどが抱えるネットにおける著作権問題にも通じるものを感じました。最近、角川デジックスの福田正社長が、『らき☆すた』や『涼宮ハルヒ』が売れたのは、ファンによる動画のアップロードのおかげだと発言して話題となりましたが、現行の著作権で何もかも縛るのはよくない、という発想は昔からあったようです。

■カメラはそんな山内社長の城である任天堂内部を映していきます。
「この会社は、元々トランプや花札などを作っていたおもちゃメーカーでしたが、時勢の移り変わりと共に、光線銃などから、次第に電子ものを作るようになりました。オリジナルメーカーから訴えられているのは、この会社ではありませんが、昨年機械と勝負するゲーム機というのを開発しまして、自信を持って売り出したところ、なんとインベーダーにやられて見事失敗。今年に入ってからは、インベーダー生産に切り替えて、もっか独自の改良機を考案中と言われております」

ここで、画面に映ったのは「スペースフィーバー」(任天堂レジャーシステム)の試作機でした。これは、当時50社以上から出ていたと言われるインベーダーゲームの亜流の一種。元祖「スペースインベーダー」(タイトー)に似てはいますが、「スペースフィーバー」はタイトルも微妙に違いますし、キャラクターデザインも違うものになってたので、数ある亜流の中では、独自の工夫がしっかり見られる機種だったのではないかと思われます。ちなみにキャラクターデザインは、あの宮本茂氏が担当しています。

邦光氏は、業界トップクラスの(株)セガ・エンタープライゼスにも乗り込みます。当時のセガの社屋は、完全に町工場の外観。社員が使う電話はダイヤル式で、書類はほぼ手書きというのがたまりません。販売契約書の作成にはタイプライターが使われていました。 

そして、若かりし頃の中山隼雄社長(当時)が登場! セガマニア的にはたまらない映像です。それにしても当時から既にあの特徴的な髪型(九一分け)をしてたとは……(さすがに毛量は多めですが)。企画会議の様子も出てきますが、その書類もことごとく手書き。パワーポイントで書かれた小綺麗な企画書にはありえない、凄まじい執念みたいなものが、あの手書きの企画書に込められているような気がした次第。

■ブームにおける光と影についても触れます。
「一説では、今度のブームで一挙に日本映画を抜いて、この業界が3千億円の収入、あるいは5千億円産業になったなどと急成長を謳っております」
「留まることを知らないインベーダーに押されて、今まで室内娯楽の王座を誇っておりましたパチンコ業界でも、やはり総会を開いて対策を昂じなくてはならないことになりました」
「インベーダーは風俗営業でないため、取り締まる方法がないということで、小中学生への悪影響が出て参りました。業界では保護者の同伴のない、15歳未満の児童にはやらせない。あるいは18歳未満は午後11時以降になりますとゲーム場内へ立ち入りを禁止する、などといった自粛規制を出しております」

いわゆるゲームセンターが、風俗営業の許可を取る必要が出てきたのは、1985年からですので、インベーダーの時代はある意味やりたい放題でした。ゲーム代欲しさに窃盗をするなどの社会問題も起こり、現在まで続くゲームに対する負のイメージはここから始まったと言えます。

■邦光氏は、最後にこうまとめています。
「この業界はルールなきブームといいますか、ブームの方が先に来てしまったと。そこでこれからどういう具合にそれを形作っていくかというところで、業者自身がまだはっきりした姿勢ができてないと。そういうように思います。ですからこれが単なるブームに終わるか、一種のアミューズメント産業として育つかと、そういうあたりはまだ今後の課題であろうと思います」

今では、TVゲームは一大産業に成長しました。ただ、インベーダーの頃とはまた別の問題・課題が出てきていますので、順風満帆という感じでもありません。ゲームの未来がどのようになるかはわかりませんが、人々がゲームに求めるものは、今も昔もあまり変わらないことが、この番組を見て再確認できた気がします。ゲーム業界の方々には、温故知新の精神で、これからも頑張っていただきたいと願う次第であります。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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