【ダーウィン事変】「洋ドラのように楽しんで」うめざわしゅん先生が語る
――『ダーウィン事変』という作品は、どのようにして生まれたのでしょうか?
うめざわ 直前に描いていた『もう人間』という作品で、生命倫理的なテーマを扱っていたんです。そのアイデアをさらに発展させた物語を描きたいと考えていたとき、ネットでヒューマンジーの記事を見つけました。これを媒介にすれば、マージナルな存在から見た人間の姿や、どこまで彼らの権利が保護されるのかといったテーマが描けそうだと思い、制作していったのがこの作品です。
――主人公・チャーリーについては、どのように描こうと考えていたのでしょうか?
うめざわ チャーリーはヒューマンジーという、人間とは異なる種の存在であり、人間にとっての「他者」でもあります。その違いから生まれる”わからなさ”が常にあるところが、チャーリーの魅力なんだろうなと僕は思っていて。彼には彼の世界があるという点は崩さずに描くようにしています。
――特に、どのような点に気を付けて描いていますか?
うめざわ センシティブなテーマを扱っている作品なので、特定の人々への差別や偏見につながらないよう、非常に注意しながら描いています。
――テーマは重いですが、読み口は比較的軽やかですよね。
うめざわ そこはなんとかそうしようと思って、頑張りました(笑)。差別やアニマルライツ(動物の権利)、ヴィーガニズム(人間が動物を搾取せずに生きるべきだとする考え方)など、あまり馴染みのないテーマを扱っているので、「どうすればより多くの読者に手に取ってもらえるか」という点は、担当編集さんといろいろ話し合いました。
難しくなりすぎないようハードルを下げつつ、少しでも興味を持ってもらえるフックをたくさん用意しようと。学園生活に異分子が突然加わる展開や、アクション、サスペンス、ミステリー的な要素など、エンターテインメント性のある作品作りを心がけました。洋ドラ感覚で楽しんでもらえたらと思い、海外ドラマのようなルックにして、物語の舞台もアメリカにしています。
――描いていて楽しいと感じるのはどんなところですか?
うめざわ いろいろな人種を、男女問わずたくさん描けるところですね。特に、ルーシーとチャーリー以外で活躍するキャラクターは中年が多いんですが、僕は中年キャラがすごく好きなので(笑)。描いていて楽しいです。
チャーリーの声は、種粼さんの声を聞いた瞬間に腑に落ちた!?
――アニメ化のオファーを最初に聞いたとき、どう思われましたか?
うめざわ 嬉しさよりも驚きのほうが大きかったですね。「本気?」みたいな(笑)。アニメ化はまったく想定していなかったですし、センシティブなテーマやバイオレンスな表現もあるので、「本当にできるのかな?」と最初は思っていました。
――アニメ化にあたって、制作サイドに要望は出されましたか?
うめざわ 物語のエッセンスや中心となるテーマは、しっかり正面から扱ってほしいということと、原作同様に差別や偏見を助長するような表現にならないよう注意してほしい、という点をお伝えしたくらいですね。監督からは「なるべく原作通りにやりたい」というお話をいただいていたので、基本的にはお任せしています。
――うめざわ先生は、アニメ制作にどのように関わっているのでしょうか?
うめざわ 監修という形で関わっていて、チェックはかなりしています。相談を受けた際には、「原作ではこういう意図なんです」といった説明をさせてもらうこともありますね。
――キャラクターデザインをご覧になったときの印象はいかがでしたか?
うめざわ いい意味で日本のアニメっぽくないデザインで、漫画とはまた違った印象を受けました。とても魅力的な造形だと思っています。
――デザイン面で助言されたことはありましたか?
うめざわ 例えば、ヒューマンジーであるチャーリーの立ち姿は、人間とは重心のバランスがかなり違うんです。そうした、自分が漫画を描いている中で気づいた作画上のノウハウを、初期段階でアドバイスとしてお伝えしました。細かい作画について注文をつけるようなことはしていません。
――メインキャストの声や演技の印象について教えてください。
うめざわ テープオーディションから参加させていただいたんですが、ルーシー役の神戸さんは、テープを聴いた時点で「ルーシーはこの人だ」と思うほどハマっていました。アフレコでも、漫画以上に感情の機微を丁寧に表現してくださって、「まさにルーシーだ」と思いながら聞いていました。
――リヴェラについてはいかがでしょう?
うめざわ 大塚さんが演じているキャラクターを、僕がコミカライズしているんじゃないかと感じるくらいのハマり役でした(笑)。テロ組織の指導者ですが、あのカリスマ性で語りかけられたら、洗脳されてしまうだろうなと思わせる迫力がありました。
――チャーリー役については?
うめざわ チャーリー役はオーディションでは決まらず、監督が種粼さんを一本釣りした形でした。実は僕自身、チャーリーの声のイメージが特になかったんです。感情はあまり表に出さないけれど、ないわけではないキャラクターなので、そのバランスをどう調整するかがポイントだと思っていました。ですが、種粼さんがアフレコで話し出した瞬間に「あ、そういうことか」とストンと腑に落ちました。とても自然体で、納得のいく演技だったと思います。
――この3人の中で、お気に入りのキャラクターは?
うめざわ 描いていて一番好きなのはリヴェラですね。悪役だから自由に描けますし、すごく楽しいんです(笑)。大塚さんとも「悪役って楽しいですよね」「同じですね」なんて話していました(笑)。
銃器フェチが制作陣に? こだわりのガンアクションに注目
――完成した映像をご覧になっての感想を教えてください。
うめざわ 「なるほど、ヒューマンジーってこうやって動くんだ」と思いながら拝見しました。僕自身、アニメにものすごく詳しいわけではないですが、アニメーターの方々が非常に力を入れて作画してくださっているのは伝わってきました。美術も細部まで描き込まれていて、クオリティの高いアニメに仕上げていただいているなと、嬉しく思っています。
――原作をベースにしつつ、アニメならではの工夫も多く感じられます。
うめざわ 特にアクションシーンは工夫が盛りだくさんで、漫画以上の迫力があります。物語構成についても、アニメとしてより面白く見えるよう、うまく再構成していただいていると感じました。
――作者視点で、特に注目してほしい見どころはありますか?
うめざわ 連載が始まってすぐにコロナ禍になってしまい、現地取材ができなかったんです。アメリカに初めて行ったのも、2025年の春でした(笑)。アメリカの映画やドラマ、小説、ポップカルチャーが好きなので、それらを頼りに想像を膨らませて描いてはいたんですが、「描写は本当に合っているのかな?」という不安は常にありました。
その点、アニメではきちんと監修が入り、美術設定なども細部までこだわって作られています。特にガンアクションは、制作陣にかなりのマニアがいるらしく(笑)、銃器描写がフェチズムにあふれていますので、ぜひ注目してほしいですね。
――チャーリーと人間たちとの関係性について、どこに注目してほしいですか?
うめざわ チャーリーは感情をあまり表に出さず、口数も少ないので、変化のないキャラクターに見えるかもしれません。でも、新しい関係性が生まれていく中で、彼もグラデーションのように少しずつ変化していきます。
ルーシーや両親、学生たち、街の住人、さらにはテロリストたちと触れ合う中で、チャーリーがどんな存在なのかという答えが、プリズムのように少しずつ浮かび上がってくる。その微妙な変化も楽しんでほしいですね。他者との関係性を保ちながら、それがどう変化していくのかという点は、共生や共存というテーマにもつながっています。そこも本作の重要なポイントなので、ぜひ注目してもらえたらと思います。
――最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします。
うめざわ キャスト陣や制作チーム、主題歌を担当されているアーティストの方々など、多くの才能ある人たちが全力で取り組み、高いクオリティのアニメを作ってくださいました。配信もされるので、グローバルに多くの方へ作品が届くのも楽しみです。物語の舞台であるアメリカの人たちに、どう受け取られるのかも気になっています。
初めて触れる方はもちろん、原作漫画のファンの皆さんにも新鮮な驚きを感じてもらえる作品になっていると思いますので、ぜひ洋ドラを見るような感覚で楽しんでもらえたら嬉しいです。
うめざわしゅん
1978年生まれ。1998年に「ヤングサンデー増刊」に掲載された短編『ジェラシー』でデビュー。短編集『ユートピアズ』、オムニバスシリーズ『一匹と九十九匹と』、作品集『パンティストッキングのような空の下』などを手掛けた後、2020年より月刊「アフタヌーン」にて『ダーウィン事変』を連載開始。同作は「マンガ大賞2022」大賞、第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、フランス・第50回アングレーム国際漫画祭にて「BDGest'Arts アジアセクション」選出、ACBD2023アジアBDなどを受賞している。
外部サイト
関連情報(BiZ PAGE+)
-
アクスタ,
アクリルキーホルダー,
カンバッジ,
声優
