野党は具体的な対案を示せなければ、安倍自民党に勝つのは難しい~田原総一朗 - BLOGOS編集部
※この記事は2015年12月30日にBLOGOSで公開されたものです
2015年もまもなく終わろうとしている。集団的自衛権の行使を認める安保法制の成立をはじめ、今年も政治で大きな動きがあったが、田原総一朗さんはどう見ているのか。年の瀬が押し迫るなか、話を聞いた。
安倍自民党を支える「弱すぎる野党」
今年の政治を振り返ってみると、安保法案の成立が大きな焦点だった。反対運動が起こり、安倍政権の支持率も下がったが、政権が揺らぐほどではない。なぜ安倍自民党がこんなにも安泰なのか不思議だが、それにはいくつか理由がある。一つは野党が弱すぎるというのがある。もう一つは、自民党の中に反安倍派がいないこと。秋の自民総裁選のときに野田聖子さんが出馬しようとしたが、結局、主流派の切り崩しにあって断念した。しかし、出馬を邪魔したのは失敗だったと思う。「自民党は閉じた政党」という印象を世間に与えてしまったからだ。
安倍政権に対する批判としては、「反知性主義」という言葉がある。内田樹さんや白井聡さんなどが、安倍首相のことを「反知性主義」と言っている。これは、ある意味で真理を突いている。安倍首相は、今までプロフェッショナルが「危ない」と言って手をつけられなかったことをどんどん進めているからだ。
その典型は、アベノミクスだ。財政赤字が大きな問題になっているにもかかわらず、巨額の財政出動をして、「異次元」といわれる金融緩和をおこなった。その結果、株価が2万円を超えるレベルにまで上昇し、失業率も下がった。アベノミクスの成果に対しては、「求人が増えたといっても多くは非正規社員だ」とか、「失業率が下がったのは人が減ったからだ」という反論もあるが、いまのところ、反論のほうが弱いといえる。「反知性主義」が一定の成果を出しているとみることもできる。
集団的自衛権の問題も、冷戦が終わったころから、どの政権も考えていたが、怖くて言い出せなかった。しかし、安倍政権は集団的自衛権にも手をつけて、法案を国会で成立させるところまで漕ぎ着けた。ただ、今のままだと、実際に集団的自衛権を行使した瞬間にいろいろな矛盾が出てくる。今後はその矛盾とどう向き合っていくかという問題がある。
野党は「具体的な対案」を打ち出せるか
さらに、今年の最後になって大きくクローズアップされたのが、軽減税率の問題だ。軽減税率については、朝日新聞や毎日新聞が強烈に批判していたが、新聞が軽減税率に組み込まれることが決まった途端に批判をやめたのが滑稽だった。今、批判的なのは週刊誌だが、出版が軽減税率の対象に組み込まれたら批判をやめてしまうだろう。消費税の問題は、根本的には税金と福祉の問題をどう考えるかということに行きつくが、その点、日本の政治では「ねじれ現象」が起きている。
欧米の政治では、保守とリベラルという2つの大きな潮流があって、保守は自由競争を重視して「小さな政府」を志向するのに対して、リベラルは格差を縮めるために福祉に力を入れ「大きな政府」を志向する。
ところが、日本の場合、与党の自民党は本来「保守」のはずだが、やっていることは「リベラル」というおかしな現象が起きている。国民も、「税金は少なく、福祉は充実しているのがいい」という矛盾した要求をしている。その結果、国の借金が増えて、いまでは1000兆円にまで拡大しているわけだ。普通ならば、「小さな政府」の政策が必要なのだが、福祉を減らすということが、日本ではなかなかできないという矛盾がある。
来年は、夏に参議院選挙が控えているが、いまの情勢からすると、衆議院とのダブル選挙になる可能性がかなりある。自民党としては、野党の体制が整わないうちに、一気に選挙をしてしまったほうが得策だからだ。橋下さんは、次の選挙には出ないだろうが、本当に引退するなら安倍さんと会うなんてことはしないはずだ。入閣する可能性もゼロではないと思う。
野党は、自民党に対抗するために連携する必要があるが、足並みがそろっていない。共産党が本気になっているが、民主党の党内がまとまらないなど、大きな流れにはなっていない。一つの問題は、野党統一候補を出したときに何を政策として打ち出すのか、ということだ。
ポイントは、安倍自民党に対して具体的な対案を示せるかどうか、だ。これまでの選挙では、野党が対案を打ち出すことができず、敗北した。今度も、安倍政権をただ批判するだけでなく、具体的な対案を示せなければ、野党が安倍自民党に勝つのは難しいだろう。
