『地方移住』で叶える豊かな生き方とは?後押しをしてくれる自治体の取り組みもチェック。

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ライフスタイルが多様化するなかで、注目を集めているのが“地方移住”という選択肢。移住先として選んだ町で自分らしく生きる人たちの暮らしについて聞いてみました。

自分で決断をすることが移住生活を実り多いものに。

〈真鶴出版〉を営む川口瞬さんと來住(きし)友美さん。真鶴の自然の美しさや人との心地よい距離感に惹かれて移住して6年目。若い移住者にも慕われるチームリーダー的な存在。

若い世代の地方移住が増えている。都市部に比べて住宅費や生活費などが安いことや、自分の時間軸で生きていくことができるイメージがその主な理由といわれているが、地方に移住した人たちの暮らしぶりはどういうものなのか。6年前に神奈川県・真鶴に移住し“泊まれる出版社”〈真鶴出版〉を立ち上げた、川口瞬さんに話を聞いてみた。

JR真鶴駅からほど近い場所に佇む〈真鶴出版〉。宿泊施設と出版社を併設した“泊まれる出版社”。窓のむこうに豊かな自然が感じられるフリースペース。書籍などの販売も。のどかな背戸道。

「真鶴に移住する前から僕は出版業を、パートナーは宿泊業をやりたいという思いがあったので、地元の魅力や観光スポットを紹介するパンフレットづくりからスタートしました。同じ場所で始めた小さな宿には県外や海外から多くのお客さんが来てくださり、なかには自然豊かな風景や真鶴のゆるやかなコミュニティに惹かれて移住を決めた人もいます」

〈真鶴出版〉の制作物。

どうしたら“町のいりぐち”としてさらに機能できるかを考え、2号店をオープンさせるためにクラウドファンディングで資金を募った。目標額を300万円に設定し、返礼としてゲストハウスの宿泊券や出版物を用意。その動きが注目を集め、真鶴への移住希望者がさらに増えた。

真鶴の高台からの風景。

「自治体によって制度は異なりますが、真鶴は本当にこの場所が好きな人に来てもらいたいという思いから移住の助成金は出さない方針です。移住先で何をするか、どうやってお金を得るのか、自分の人生設計を持つことはとても大切。どんなときも、自分で判断して実行することが移住には不可欠だと思います」

〈真鶴出版〉

町全体をひとつの宿に見立て、宿泊客と町の日常をつなぐ“まちやど”の役割も。宿泊時のオプションに、地元の魅力に触れられる“まち歩き”も。宿泊は1日1組(1名〜最大5名まで)。金〜月のみ宿泊可能。1泊16,000円〜。神奈川県足柄下郡真鶴町岩217

町に新たな魅力を生み出す真鶴のコミュニティ。

〈珈琲店watermark(ウォーターマーク)〉〈珈琲店watermark(ウォーターマーク)〉〈高橋水産〉〈高橋水産〉〈パン屋秋日和〉〈パン屋秋日和〉

〈珈琲店watermark(ウォーターマーク)〉女性店主が移住先の真鶴で始めた小さなお店。自家焙煎したコーヒー豆の販売を行う。神奈川県足柄下群真鶴町岩268-8114:00〜17:00 月〜木休

〈高橋水産〉真鶴で3代続く干物店。干物は絶妙な塩加減で、地元のファンも多い。神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1947-130465-68-185910:00〜17:00 無休

〈パン屋秋日和〉八王子から移住した清水秀一さん・綾香さん夫妻が営むパン屋さん。神奈川県足柄下群真鶴町岩296-20465-46-621511:00〜17:00(日〜15:00)月火休

移住の後押しをしてくれる自治体の取り組み。

都市部から郊外への移住を考える人が増えた今、受け入れ先の自治体からもさまざまなサポートを受けられる。たとえば、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)に在住または通勤する人がそれ以外の道府県に引っ越す場合、都道府県と市町村共同の支援金として最大100万円(単身の場合は60万円)が支給される。また、自治体が独自に設ける支援制度も。結婚や子育ての支援金、就農への支援金、移住先の家賃補助、マイホームの建築費補助などが主な項目だ。長野県では個人と法人を対象にした最長6カ月間の「おためしナガノ」を実施。移動に車が欠かせない兵庫県豊岡市では、免許取得費用を支援してくれる。

【たとえばこんな支援があります】

・都道府県・市町村共同の支援金。(東京圏在住者のみ)・長野県では、引っ越し代や交通費支援のある「おためしナガノ」も。・兵庫県豊岡市では、車の免許取得やペーパードライバー講習にかかる費用を一部負担。

(Hanako1199号掲載/photo : Kenya Abe text : Keiko Kodera)