【真壁 昭夫】文在寅の「経済見殺し」政策に、韓国・中央銀行から上がる悲鳴 中銀は、財政出動を求めているが…

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韓国の中央銀行である韓国銀行が、自国経済の先行きに対する危機感を高めている。

10月16日の金融通貨委員会では、景気刺激のため0.25ポイントの利下げが決定された。

中銀は、韓国経済の成長が落ち込むとの見方を強めており、追加の利下げにも言及している。

また、韓国中銀の李柱烈(イ・ジュヨル)総裁は政府に財政出動を求めている。

足元の韓国経済の状況を見ると、むしろ文政権の経済政策の運営が後手に回っている。

すぐにでも金融・財政政策を総動員する必要性がある。

文在寅(ムン・ジェイン)政権の喫緊の課題は、経済の構造改革を進めつつ財政政策を運営し国内需要の創出を目指すことだろう。

〔PHOTO〕Gettyimages

しかし、足元の支持率低下などを気にする文政権の政策運営を見ていると、迅速に効果的な政策を打つことはあまり期待できそうにない。

韓国経済の停滞懸念は徐々に高まる恐れがある。

経済への危機感を強める韓国中銀

10月に入り、韓国中銀は経済成長の鈍化を一段と懸念し始めている。

中銀総裁の発言などを見ていると、金融・財政政策を総動員し、景気安定への取り組みを迅速かつ強力に進めるべきとの強い危機感が読み取れる。

特に、韓国の輸出が減少し続けていることは見逃せない。

韓国最大の輸出先である中国経済が成長の限界を迎えていることなどを受けて、半導体産業を中心に、韓国の企業業績は悪化している。

9月には韓国の消費者物価指数と生産者物価指数の前年同月変化率がマイナスに落ち込んでしまった。輸出依存度の高い韓国経済にとって、この状況はかなり深刻といわざるを得ない。

今後も世界的に貿易取引が落ち込み、サプライチェーンの混乱が続くのであれば、韓国が“デフレ経済(モノの価格が持続的に下落する経済状況)”に陥るとの懸念も高まってしまうだろう。

そうした先行きのリスクを踏まえると、経済への危機感を強めている韓国銀行は、自国経済の状況を冷静かつ客観的に把握していると考えられる。

李総裁は、状況に応じて金融政策をより緩和的に運営し、目先の経済を支える構えがあるとの認識も鮮明に示している。

年内、あるいは年明け以降、韓国銀行が追加利下げに踏み切る可能性は高まっている。

ただ、足許の政策金利の水準は1.25%と歴史的に低く、追加的な利下げが経済に与える影響は限定的との見方も多いようだ。

重要性高まる財政出動とそのタイミング

経済政策の理論から考えると、韓国が景気の安定を目指すためには財政出動の重要性が高まっている。

政府が財政出動を増やせば、一時的には、経済成長率が上向く可能性はある。

重要なのは、財政出動の効果がどの程度持続するかだ。この点に関して、韓国経済には不確実な部分が多いとみられる。背景には複数の要因がある。

まず、文大統領は、潜在成長率の引き上げよりも、検察改革などによる政治基盤の強化と北朝鮮との融和を優先した。

一方、文氏は最低賃金の引き上げや規制強化によって企業経営を圧迫した。

足許、文大統領はサムスン電子などのトップと面会し、経済界との関係改善に動いている。ただ、これまでの政策をもとに考えると、信頼回復は容易ではないだろう。

加えて、もともと厚みを欠く韓国の内需が、追加的に落ち込む懸念もある。

米中の貿易摩擦の影響などを回避するために内外の企業が韓国から海外に生産拠点などを移している。

サムスン電子の半導体工場〔PHOTO〕Gettyimages

わが国でも、オンワードホールディングスのように韓国撤退を決める企業がある。

企業の海外進出は、韓国の雇用・賃金にマイナスの影響を与えるだろう。

現在の政治状況と韓国経済のファンダメンタルズを踏まえると、韓国が金融・財政政策を総動員し、経済が自律的な回復に向かうと想定するのは難しい。

その効果は一時的なものに留まる可能性がある。

むしろ、米国の景気後退懸念の高まりなど外部環境の変化に伴い、韓国が一段と厳しい状況を迎える展開は軽視できない。