「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「玉(たま)」。「珠玉」の名作、「玉石混交」の「玉(ギョク)」。「玉」を紐でつなげた形を描いた象形文字です。



「玉」という字は象形文字。

三本の横線が「玉」そのものを表し、縦一本の線はそれらの玉を貫く紐を表しています。

数珠や首飾りの一部のような形を描いて「玉」のことを示しているのです。

古代中国には、この「玉」という漢字そのものの形をした、佩玉(はいぎょく)と呼ばれる装身具がありました。

玉を紐でつなげたこの飾りを、人々は腰帯に吊り下げていたといいます。

殷や周の時代において、その玉は装飾品というよりも、お守りや厄除けとして用いられていました。

当時の人々は、強くて堅い光沢のある玉に、特別な力を感じていたのです。

中国最古の漢字字典『説文解字』によると、美しい「玉」には、人間がそなえるべき五つの徳がある、と記されています。

人を温かく思いやる「仁」の心、澄んだ目をもって正しい道を知る「義」の心。

打てば響く智恵の「智」に、何者をも恐れない勇ましさ「勇」。

そして、清廉で潔い様子を意味する高潔の「虜(潔・ケツ)」。

いにしえの人々は、そんな徳をもつ玉を身につけておけば、その力が我が身にもたらされると考えたのです。

「玉」は死者を再生し、不滅の命をもたらすもの。

独自の体系的方法で漢字の成り立ちを究めた白川静博士は、「玉」には儒教的美徳を超えた、大いなる霊的な力があると指摘します。

実際、中国の戦国時代には玉を使った葬儀の方法がありました。

亡骸にある穴、目や耳、鼻や口に玉を入れてふさぐと、その肉体は腐ることなく、死者が再生すると信じられていたのです。

死者の肉体から離れたひとだま(人魂)を「火の玉」と呼ぶことがありますが、まさに、魂は「玉」であり、人の命を象徴するものだったのかもしれません。

ではここで、もう一度「玉」という字を感じてみてください。

「真玉泥中異」。

これは、禅のことば。

「真実の玉は、泥の中にあっても異なる輝きを放っている」という意味です。

この春始めた新生活を「こんなはずじゃなかった」と思ったり、変われずにいる自分に「なぜまだここに居るのだろう」と落ち込んだり。

たとえ今が泥の中でも、あなたという唯一無二の「玉」を磨き、自分らしく輝こうとすればそれでいいのです。

「艱難汝を玉にす」ということわざもあります。

逆境や困難を越えて磨きぬいたその「玉」は徳を携えて、あなたと、そしてあなたのまわりを、やさしい光で満たすのです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

『続ほっとする禅語70』(野田大燈/監修 杉谷みどり/文 石飛博光/書 ニ玄社)

4月14日(土)の放送では「栞」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。



----------------------------------------------------

【▷▷この記事の放送回をradikoタイムフリーで聴く◁◁】 http://www.tfm.co.jp/link.php?id=7120

聴取期限 2018年4月15日(日) AM 4:59 まで

スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です。⇒詳しくはコチラ http://www.tfm.co.jp/timefree_pr/)

※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用頂けます。

----------------------------------------------------



<番組概要>

番組名:感じて、漢字の世界

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/