【クィン・スロボディアン】【ベン・ターノフ】人間はサイボーグ化、白人の優秀な子孫だけが残る…イーロン・マスクが描く「恐怖の結末」

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マスクが全インフラを支配し、人々の思想にも多大な影響をもつ「マスキズム」の時代。マスクが導く4種類の未来のうち、2つのダークな結末を紹介する。(本記事は、『マスキズム 新たな独占の時代』(飛鳥新社)の内容を再編集したものです)

前回記事はこちら:AIの犠牲になるのは「地球」だ…イーロン・マスクは「環境の救世主」になると言えるのか

第三の未来:「優秀な子孫」だけを残し自前で育てる「塀のなかのマスク」

マスクの最近の方向性と一致するもうひとつのシナリオは、「コンパウンド・マスク(塀のなかのマスク)」と呼べる未来だ。本書がこれまであまり焦点を当ててこなかったマスキズムの頻出テーマである「人口減少」に関するものである。

「人々がもっと子供を持たなければ、文明は崩壊する」とマスクは2021年に警告しているほか、同様の発言を無数に繰り返している。2024年頃には、「出生率の極端な崩壊は、人類文明にとって群を抜いて最大の危険である」と言うようになっている。

2023年にローマで開催された右派の若者のフェスティバルにおいて、マスクは世界の人口が3世代以内に10分の1に縮小すると主張した。実際には100億人へ増加すると予測されているにもかかわらず、である。彼は出生率が「おそらく人口を維持するのに必要な水準の半分程度だ」とも言っているが、世界全体で見れば依然として水準をわずかに上回っている。

マスクの懸念は人類という種に対するもののように見えるが、そうではない。彼は一貫して特定地域の出生率を強調し、他を無視しているからだ。2025年5月、彼は「大人口崩壊」とコメントを付して出生率の世界地図をシェアした。その地図ではサハラ以南のアフリカが依然として高い出生率にあることが示されていたが、そこは無視されていたのだった。

「白人は差別されている」という主張

要するに、マスクの人口減少パニックは白人文明の存続に対する懸念なのである。ヨーロッパやイギリスの極右政党に対する熱狂的な支持表明のなかで、マスクはそうした懸念をあからさまに語っている。「白人は世界人口のなかで急速に減少しているマイノリティだ」と2025年9月に投稿。また同じ月には、「出生率の低下は西洋にとって最大の脅威であり、それに僅差で続くのが移民である」とも投稿した。「このまま続けば西洋は存在しなくなるだろう」。問題はどれだけの人が子供を産んでいるかではなく、「どの人」が、「どこで」産んでいるかだった。

この考え方は、マスクの母国である南アフリカに前例を見ることができる。アパルトヘイト時代の白人政治家たちは(黒人に)「飲み込まれる」ことを懸念し、白人の出生率を高めることで「ゆりかご競争」に勝とうとしたのだ。

2025年、マスクは南アフリカの黒人多数派によって引き起こされている「白人ジェノサイド」の被害者であると主張するオランダ系白人アフリカーナーの過激派をソーシャルメディアで拡散した。彼のプラットフォームを通じて広まったアフリカーナーの主張はアメリカの大統領執務室にまで届き、トランプは南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領に対し、その反白人犯罪という捏造情報を突きつけて非難した。すでにアメリカの難民政策も路線変更がおこなわれているところだった。南アフリカから来るアフリカーナーの受け入れは許可される一方で、他の難民プログラムは凍結されたのである。

南アフリカにおいて、白人に関する「ジェノサイド」という言葉は、少なくとも1960年代から使われてきた――だがそれは移民による置き換えとは無関係であり、胎児を中絶する白人女性を非難するための言葉だった。こうした文脈のなかで、白人人口が縮小していくという見通しは「人種的自殺」の証拠として解釈されてきたのである。

14人の子どもの最初の7人は全員男児だった

マスクは、少なくとも14人の子供の父親になることで、人口減少問題に個人的に取り組んできた。最初の7人は全員男児として生まれてきたが、これは胚移植前に能動的な性選別をおこなったと考えなければ説明できないほど、統計的に起こりにくい事態である。

マスクは、ロケットや自動車に対して取ったのと同じアプローチを子供たちの教育にも採用した。つまりすべてのプロセスを「自社内で」おこなったのである。ロサンゼルスの私立学校に不満を抱いた彼は、2014年にスペースXの工場内に「アド・アストラ」と呼ばれる独自の学校を設立した。家族の成長に合わせて、彼のオーダーメイドの施設も成長していった。テキサスへの移住や、テキサス内での移住の際には学校も一緒に移った。

2021年にブラウンズビル、2024年にはバストロップと、彼の工場や産声を上げたばかりの企業城下町の隣に学校が建てられた。かつてヘンリー・フォードがアマゾンの熱帯雨林に新しい町を建設したように、マスクは国家の壁の内側に、そうした町を築いていた。

教育を自社の壁で囲うようなコンパウンド的アプローチは、シリコンバレーの同業者たちが立ち上げていた事業とも通じるものがあった。テキサスでは「ベゾス・アカデミー」のプリスクールが作られ、パランティアの共同創業者ジョー・ロンズデールもオースティン大学を設立。2023年には、マスク自身も1億ドルを投じ、大学建設まで見据えた新しい初等・中等科学学校を立ち上げた。それを讃え、テキサス州のグレッグ・アボット知事は「マスク大学>ハーバード大学」と投稿している。マスクはより子供じみた名前を提案した。「テキサス工科理科大学(Texas Institute of Technology & Science)」――略して「TITS(おっぱい)」である。

白人だけをエリートとして教育する

一方で、マスクは自称「出生主義者」であるシモーヌとマルコム・コリンズ夫妻と過ごす時間を増やし始めていた。マルコムの兄弟で、不妊治療クリニックを運営しており、のちにDOGE(米政府効率化省)に加わった。

2022年、コリンズ夫妻は人工子宮を完成させた億万長者が、自身のDNAで文明を再構築するかもしれないという予測を述べている。彼らの子供たちの名前は、タイタン・インヴィクタスやインダストリー・アメリカスといったもので、マスクとの共通性は明白だった。

右派インフルエンサーのアシュリー・セントクレアが、自身とマスクのあいだにロムルス――ローマの神話上の建国者――という名前の子供をもうけたと発表したとき、血統による帝国建設という空想が明確に感じられた。ローマ帝国の家父長制の血統モデルが、マスキズムには付きまとっている。衰退は、新たな帝国の血統を築くことによって、ふたたび繁栄に向かうだろう。

あるときマスクは、セントクレアにこんなメッセージを送っている。「アポカリプスの前に『軍団レベル』の数に到達するためには、代理母を使う必要があるだろう」。

コンパウンド・マスクは、人類の地平を白人出生率の防衛へと縮小させ、さらにその地平を、子どもたちが公教育の外で育てられる私的居住地の内部へと縮小させる。かつて銀河にまで広がっていた未来は、家庭の周囲を囲むフェンスのなかへと収束していく。壮大でありながら閉鎖的なコンパウンド・マスクにおいて、マスキズムの宇宙的なスケールは、たったひとりの家父長の財力によって多くの子宮の果実を養うという、小さな現実へと萎んでしまう。

第四の未来:機械が世の中を統治する「サイボーグ・マスク」

4つ目の未来は、本書の後半で取り上げたテーマである「サイボーグ・マスク」だ。2025年初頭の保守政治行動会議にチェーンソーを振り回して登場したマスクは「先延ばししているのではない、『サイドクエスト』をやっているのだ」と書かれたTシャツを着ていた。DOGEの発足から1カ月のことだ。

それから数カ月後、政府を去った後のイベントでマスクは、なかば分かりきったことだがワシントンは「政治的すぎた」と語った。それは「興味深いサイドクエスト」だったが、いまはメインクエストに戻るという。

彼にとってのメインクエストとは「ヒューマノイド・ロボットとデジタル超知能への全力投球」。人類の未来の姿を「機械の末裔、あるいはほぼ機械の末裔」と表現し、サイボーグという手札をテーブルの上にすべて晒してみせたのだ。

人間の10倍の数のロボットが支配する世界

マスクは、10年以内に地球上には人間の10倍もの数のヒューマノイド・ロボットが存在するようになるかもしれないと予測した。遅くとも2026年までにはデジタル超知能が登場すると考えている。

この水準からすると、DOGEの取り組みはビーチから「注射針や糞便やゴミ」を掃除するようなものだったとマスクは振り返っている。

「しかしやがて高さ1000フィートの水の壁がAIの津波として向かってくる。1000フィートの津波が襲ってこようとしているときに、ビーチを清掃することにどれほどの意味があるというのだろう?」

この解釈に基づけば、国家という最後のボスを倒す試みだと多くの人が解釈していたマスクの政府での仕事も、別の光を帯びてくる。

もし彼が、デジタル超知能は1〜2年以内に到来し、ヒューマノイド・ロボットも10年以内に人間の10倍になると信じているのであれば、そこから考えられるのは2つのことである。

ひとつめは、彼自身が支配権を握る必要があること。2025年後半、彼はテスラの株主に対し、自身の持株比率を大幅に引き上げうる措置の承認を強く迫った。

「テスラにおける自らの議決権に対して抱いている根本的な懸念は、もし私がこのまま巨大なロボット軍団を構築し続けたとすると、将来のどこかの時点で私が追放されてしまう可能性があるのではないか、ということだ」

ふたつめは、人間による統治そのものが永続的でないという点だ。DOGEは、国家の非効率性に対する恒久的な修正というより、次なる支配までの移行的なプロジェクトであった。つまりAIの「津波」が到達するまでのあいだ、人間が管理する官僚機構を安定させておくための「つなぎ」の手段である。目的は、政府を長期的な目で完成に導くことではなく、その帳簿を整理し、コードを合理化し、これから参入してくるアルゴリズムと自動機械たちにとって、国家を読み取り可能な状態にしておくことだったのだ。

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