年金14万円の67歳母、孫の学費援助で定期預金を解約。「100万円」を振込み「ありがとう」の電話を待ち続け2週間…息子からは一切の音沙汰なし、理由を尋ねて激怒したワケ
内閣府が公表した「令和3年度(2021年)高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査」によれば、子どもや孫がいるシニア層のうち、自分の資産を「子どもや孫に譲りたい」と考えている人は40.2%。特に教育資金の援助は、相続税対策も相まって生前贈与の定番となっています。しかし、贈与によるお金のやりとりを機にトラブルとなってしまうケースも少なくないようで……。今回は、マツコさんの事例からシニア世代と子世代のあいだの「お金と感情の温度差」を考えていきます。※事例の人物はすべて仮名です。
節約生活で貯めた100万円を、孫の大学進学のために
マツコさん(67歳)は、1年前に夫を見送り、現在は地方の持ち家で一人暮らしをしています。月々の収入は、自身の基礎年金と遺族年金を合わせた約14万円。物価高の影響で、日々の生活は決して楽ではありません。エアコンの使用を控え、食費を切り詰め、冠婚葬祭以外では遠出もしない――。そんな生活を続けてきたのは、ある目的があったからです。
一人息子のタカシさん(45歳)の長男であり、マツコさんにとって唯一の孫の大学進学費用を援助してあげたかったのです。今春、孫が無事に都内の私立大学に合格したという知らせを受け、マツコさんは定期預金を解約。タカシさんの口座へ「入学祝いと学費の足しに」というメッセージとともに、100万円を振り込みました。
「ありがとう」の電話を待ち続けた2週間
振込み後、マツコさんはタカシさんに「振り込んだから、ハルトにもよろしく伝えてね」とLINEを送りました。しかし、待てど暮らせど返信はありません。既読はついているものの、感謝の言葉どころか、着金の確認連絡すらありませんでした。時間が経つにつれ、マツコさんは不安と不信感でいっぱいに。
しかし、2週間が経過したとき、マツコさんの不安は怒りへと変わりました。孫本人のSNSには、新しい大学生活を謳歌する写真が投稿されているのに、お礼の一言もないのです。
たまらず息子に電話をかけると、彼は慌ただしい様子で電話に出ました。
「ああ、母さん。お金受け取ったよ。忙しくて連絡が遅れてごめん」
「届いてるなら、どうして一言くれないの?」
マツコさんが声を震わせると、タカシさんは少し困惑したような口調でこう答えました。
「いや、100万円なんて大金、LINEで『ありがとう』のスタンプ一つで済ませるのも違うかと思ってさ。次に顔を合わせたときに、直接ちゃんとお礼をいおうと思ってたんだよ」
「お礼を催促される」ことへの、息子夫婦の違和感
マツコさんはその言い分に納得がいきませんでした。
「直接いうつもりだったって……それまで一言も連絡がないなんて、もらった側の態度じゃないわ。それに、サヤさん(嫁)からも一言あっていいはずでしょう」
電話の向こうでタカシさんがため息をつくのがわかりました。
「サヤだって仕事に息子の新生活の準備にバタバタしてるんだよ。……母さん、そんなに急がなくってもいいじゃないか。そんなにお礼が欲しいなら、もう送ってくれなくてよかったのに」
タカシさんの言葉にマツコさんは凍りつきました。自分にとっては身を削って捻出した100万円。しかし、住宅ローンや子どもの教育費、そして共働きの忙しさに追われる息子夫婦にとって、そのお金は「いずれ自分たちが相続するはずの資産の前倒し」程度の認識だったのかもしれません。
「わざわざ電話までしてお礼を求めるなんて、年寄りは暇でいいな」直接口には出さないものの、タカシさんの話ぶりからはそんな苛立ちが交じっていました。やりとりそのものを面倒に感じている息子と、100万円に人生を投影していた母。決定的な価値観のズレに、マツコさんは震える手でスマホを切りました。
すれ違いが招く親子のギャップ
マツコさんの事例は、現代のシニア世代と子世代のあいだの「お金と感情の温度差」を浮き彫りにしています。
マツコさんにとって「なにかをもらったら電話や手紙で即座にお礼をする」のは絶対的なマナーでしたが、息子にとってLINEは「単なる業務連絡のツール」。息子側には「中途半端にLINEで済ませたくない(=後に回そう)」という、彼なりの敬意があったのかもしれません。しかし、それが親側の「不安」や「認められたい」という感情を逆なでする結果となりました。特にお金が絡む場面では、コミュニケーションの取り方には親子であってもそれぞれに感じ方が違うことが少なくありません。
マツコさんが「お礼がない」と憤る背景には、自分の犠牲を認めてほしい、という切実な願いがあったのでしょう。しかし、贈与された瞬間に、お金の主導権は受け取り側に移ります。使い道や感謝の形までコントロールしようとすると、それは贈り物ではなく重荷に変わってしまいます。
「あげるなら、忘れる。忘れられないなら、あげない」冷たく聞こえるかもしれませんが、お互いに依存しない、異なる世代間の親子関係を健全に保つのに必要なのは潔さです。自分のお金は、自分の人生のために使い切る。その自立が、現実的な愛情表現といえるのではないでしょうか。
