「私だけファンがおじいちゃんばかり…」 11歳デビューの元アイドルが“ガチ恋ゼロ”“無償の愛”のありがたさに気づくまで
田中菜津美インタビュー 中編
「推しがいるのにみんな寝ちゃう」と、自身の自由過ぎるバスツアーの様子が話題になった、元HKT48の田中菜津美さん。【記事前編】では、福岡でフリータレントとして活動する彼女が主催する「おじだらけのバスツアー」の知られざる魅力を聞いた。この中編では、11歳でHKT48に入った時から高齢のファンが多かった理由から、他のアイドルファンとの違い、そしてファンへの感謝を語ってくれた。
【写真26枚】10代なのに“おじ”ファンばかりだった頃…ほか 中高年ファンを魅了し続ける「田中菜津美」の美貌
――そもそも、田中さんはHKT48初期メンバーの中で11歳と最年少でしたが、ファンは反対に高齢が多いというのはなぜなんでしょう?
田中:私は当時「AKBINGO!」「HKT48のおでかけ」と、関東で放送されてるバラエティー番組を見てファンになってくださった方が多いんです。なのでHKT48ファンよりもAKB48を長年応援していたファンで、流れてきてくれた人が多くてシニアが多いと思うんです。

ファンの方に「なんで私のファンになってくれたんですか?」と聞いたら、みなさん「若くしてデビューしたから、卒業まで長く応援できると思って」と答える人が多かったんです。高校生でデビューしたアイドルだと2〜3年で卒業しちゃうと考えているみたいです。
ファンもおじいちゃんなので、ガチ恋みたいな人が一人もいないので、娘みたいに応援してくれてるファンが多かったです。
――そもそもHKT48のファンって高齢だったんですか。
田中:むしろ若い子が多すぎて、デビューしたときは「HKT48のファンは若すぎてマナーが悪い」とか言われていました。私のファンだけ年齢層が高いので、他のファンの方に「シニアしか入会できないんですか、この団体は」と言われて「そんなことないんですけど」って返していました(笑)。
「私だけなんかレーンにいる人、おじいちゃんじゃない?」
――今でこそ年配のファンとの交流を楽しんでいますが、若い頃は「アイドルなのに、私だけファンがなぜおじいちゃんばかりなのか」とは思いませんでしたか。
田中:思ってました(笑)。小学6年生の時は握手会で他のメンバーと隣同士のレーンになったときに「私だけなんかレーンにいる人、おじいちゃんじゃない?」と思っていて。
私のファンって何の見返りも求めないんですよ。他のメンバーだと握手会で「こういうこと言って」「もっとSNSにいいねして」とか求められるんですけれど、私はそういうことが本当になくって。みんな、無償の愛なんです。ただただ、私に売れてほしいという気持ちで応援してくださっているんです。
――すごい。めちゃくちゃいいファンではあるんですけれど、一方で思い描いていたアイドル像は違うとは思いませんでしたか。
田中:そうなんですよ。アイドルだったら、もっと焼きもちを焼いてほしいじゃないですか。ただ「あれ? うちの界隈だけ私に興味なくない?」みたいな(笑)。
ファンのみんな、いい意味で私にそこまで興味がないんですよ。プライベートとか全く聞かれたことなくて「何していてもいいよ」って。SNSで写真を上げても「これ、誰と行ったの?」とかも全然聞かれないし。仕事をしている私にしか興味がない。タレントとして応援してくださっている感じなんです。なのでアイドルのファンではないかもしれない(笑)。
――それこそ“ガチ恋”がいるメンバーは羨ましかったですか。
田中:ちょっと羨ましかったです。「アイドルといえばガチ恋」みたいな感じもあるじゃないですか。楽屋で他の子が「大変なんだよね」と言っているのが、すごくかっこよく見えていました。けれどアイドルを卒業して、やっとファンの人たちのすごさに気付きました。こんな距離感で応援してくれる人たちってなかなかいないですし、めちゃくちゃありがたいです。
私が思春期を迎えたとき、大人の人と接するのが嫌になった時期があったんです。それこそ握手会の対応とかめっちゃ酷かったと思うんですけど、むしろ「みかんちゃん(田中さんの愛称)に反抗期が来たんだ」「どうしたら、これを乗り越えられるか」とファン同士の打ち上げでそれで盛り上がったりしてたらしいです(笑)。
握手会でも10秒くらいで「もういいよ」
――ただ田中さんはAKB48のシングル総選挙では2017年が50位、2018年は63位とちゃんと票も入っています。ファンの方も熱心に応援してくれた証左ですよね。
田中:だから、逆に怖くて(笑)。なんで私に対して、何の見返りもなくよくこんな金額を使ってくれるんだろうって。総選挙のときにシングルを200枚ぐらい買ってくれた人が握手会で「みかんちゃんも休憩したいと思うから、もういいよ」って言って10秒ぐらいで帰ったりするんですよ。こっちからしたら1秒でも多く感謝を伝えたいじゃないですか。「もうちょっと喋らせて」ってこっちが思っちゃうぐらいでした(笑)。そのくらい、みんなジェントルマンなんです。
――田中さんのファン同士も仲が良いとか。
田中:ファン同士で集まって、30人くらいの宴会をしたり、私がいなくても集まっています。アイドルのファンって、自分だけで応援したいという人も多いじゃないですか。だからファン同士あまり仲良くないことも多いんですけれど、私のファンの中の有志の方が日頃からファン同士で集まる癖をつけようと飲み会を開いていたんです。
そもそも人と喋るのが苦手だったというファンの方も、今では「みんなで集まるのが好き」と言ってくれていて。飲み会で余ったお釣りはずっと貯めてくれていたみたいで「なつみかんちゃんが、もしやりたいことができた時の交通費にしてあげようと貯めているんだ」と話していました。
14年来、福岡移住のファンも
――ファンの鑑じゃないですか。長い方でどのくらいファンなんですか。
田中:最高齢は74歳で名古屋の方です。福岡はなかなか難しいですけど、関東のイベントには来てくれます。ほかにもご家庭がある方もいて、福岡には家族に「出張」と言って来ているそうです。可愛いですよね(笑)。
小6から劇場に来てくれている方で、もう14年応援してくださっています。それこそ関東の方なんですが、私が福岡でタレント活動すると決めてから、福岡にセカンドハウスを借りてくれています。私が出ているラジオやテレビは今、福岡でしか見れないので。福岡に移住した方も2人くらいいます。「同じ場所に住んでみたい」「頑張ってる姿を見たい」って。
そういう話を聞くとより頑張らないと思います。テレビやラジオで結果を残して、ファンの人に見てもらえるようにしようって。
――田中さんは2020年にHKT48を卒業します。アイドルからの卒業という区切りがつくと、徐々にファンが離れていってしまうケースも多いですが、どうでしたか。
田中:アイドルを辞めたら半分ぐらいはいなくなるんだろうなと思ったら、卒業後のイベントでもファンの数は変わらなかったんです。みんな、昔から「劇場公演を見るのも好きだけど、タレントとして活躍するみかんちゃんを見たい」と言ってくれていて。
だから、アイドルとしての私が好きだったわけじゃなかったんだと気付いて。よく考えたらHKT48時代も劇場公演を見に来る人たちは、歌ったり踊ったりしている私じゃなく、「今日どんなこと話すんだろう」と私のMCを楽しみにして見に来てくれていたんです。
なんなら、むしろファンの方は卒業後の私について「みかんちゃんが卒業したら、いろいろと面白いことをやってくれる」とすごく信頼してくれていました。昔から自分で何か企画したりするのが好きで、ファンはHKT48から解き放たれた方が、より楽しいことしてくれると思っていたみたいなんです。
だから私の卒業公演でファンは誰も泣いてなかったんですよ。うちの親めっちゃ泣いてんのに。むしろワクワクして「いつから活動再開しますか」みたいな(笑)。
――田中さんはアイドルというより、人として好かれているし、ファンとお互い信頼し合っている。推し活の理想系ですよね。
田中:アイドル時代は警備の関係で、握手会で横断幕を出すだけでも許可が必要だったり、いろいろと制限もあったんです。運営側としてそれは正しいんですけれど、一方で「私のファンはこんなに素敵な人ばかりで、何もされないぐらい信頼関係があるのにもどかしいな」という思いがあって。なので卒業して、バスツアーやイベントでその頃の思いを実現できる機会が増えています。今が一番楽しいですね。
***
【記事後編】では「生存確認電話」「安否確認LINE」というユニークすぎるファンクラブ特典の狙いなどについてインタビューしている。
徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:@tatsunoritoku
デイリー新潮編集部
