『ジョーカー』

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10月4日に日米同時公開された映画『ジョーカー』が異例のヒットとなっている。世界66ケ国で公開週No.1を記録し、映画通からも熱狂的な支持を得ている。映画史上に残る怪演を見せた主演ホアキン・フェニックスにインタビューした。

◆悪役ジョーカーの誕生秘話、名優が役作りにかけたこだわり

 『ジョーカー』は、実にたくさんの要素が詰まった映画だ。重く、悲しく、苦しく、バイオレント。虐待や精神疾患、社会福祉の欠点など、タイムリーな問題にも触れている。ただし、『バットマン』の人気悪役を主人公に据えた本作に、スーツを着たヒーローは一人も登場しない。これはジョーカーがジョーカーになる前の、アーサーという孤独な男の物語なのだ。

 トッド・フィリップス監督は、脚本執筆の時点で、この役にホアキン・フェニックスをイメージしていた。だが、いざオファーを受けると、フェニックスはまずオーディションをしてほしいと自ら願い出ている。脚本に何度も出てくる独特の笑い方が自分にできるか、自信がなかったからだと彼は語る。

「その笑い方は、アーサーにとってすごくつらいものなんだ。それは脚本にも書かれていて、だからこそ僕はこの役に惹かれたんだよ。最初のミーティングでトッドは、突然笑いだしてしまう人の動画も見せてくれた。ただ、それは強い感情が噴出するようなもので、僕がそれまでジョーカーに持っていたイメージとはかけ離れていた。

 だから、果たしてそれが自分にできるのか、不安になってしまったんだ。だって、撮影中はそれを必要なタイミングで確実にやらないといけない。早朝、渋滞の中を現場に向かい、時間をかけてメイクをし、さあ撮影、というときに自然にできないといけないわけだからね」

 そうして自分から提案したテストで、フェニックスは苦しんだ。アーサーが初めてその独特の笑い方をする瞬間を会得するのに悶々とする彼を見て、トッド監督は「君はこんなことをしなくてもいい」とやめさせようとしたが、フェニックスは「これは必要なことなんです」と言い張ったという。

「あの笑い方が見つけられなければ、僕はアーサーの本質を絶対にとらえられないと思ったから。とはいえ、撮影中『よし、これだ! 僕には彼がわかったぞ』と思ったことは、一度もなかったけどね。逆に、『ああ、失敗した。自分は何をやっているんだ』と思ったことなら、何度もある。毎日、撮影が終わった後、家に帰る途中でも、トッドに電話をしてキャラクター作りについて話したよ。

 役のことを完全にわかったという状態を、僕は信じない。いや、そういう役者もいるのかもしれないけど、僕はわかってしまったら、もうやることがないじゃないか、と思ってしまうんだよね」

◆過去のジョーカーは一切参照していない

 肉体面での準備も怠っていない。この役のために、フェニックスは20坩幣紊眤僚鼎鰺遒箸靴燭里澄

「薬物を常用している人たちについてリサーチしたら、ほとんどの人は副作用で極端に痩せているか、太っているかのどちらかだった。それで『僕は太ることにしようと思うんだ』と言うと、『いや、痩せてもらえないかな』と言われてしまって……。太るほうなら、ハンバーガーとかフレンチフライを山ほど食べればいいだけで、ラクだったのに(笑)。

 でも、アーサーは栄養失調気味で弱々しい人物としたほうが役に合っているから、痩せるのが正解だった。それに、これは自分でも予測しなかったんだけど、あそこまで痩せると体の動きが変わるんだよ。身のこなしのためにも、肉体改造をしたことのメリットは大きかったと思う」

 劇中でアーサーは、階段でダンスをしたり、ピエロのパフォーマンスを披露したりもする。