【内田雅也の追球】全得点が本塁打の意味
◇交流戦 阪神4―3ロッテ(2026年5月30日 ZOZOマリン)
千葉・幕張の海岸沿いにあるZOZOマリンスタジアムは外野から内野へ強い海風が吹く。場内で風向・風力計が電光掲示され、この日は左翼か中堅から本塁へ、7〜8メートルで吹いていた。
打者には逆風となる。立石正広の左飛(2回表)など、風で押し戻された外飛が何本かあった。
ただ、風は上空に限ってのことだ。コロシアム風に建てられたスタンドで風がはね返り、外野に向けての追い風となる。
1点差で競り勝った阪神の4点はすべて本塁打によるものだった。佐藤輝明の右翼席への先制弾は打球角度32度で最高到達点30メートルの高い打球だったが、この時の風は左翼から本塁に向いており影響はさほどなかったと思われる。3回表、森下翔太の左越え勝ち越し決勝弾は21度、15メートルという低いライナーだった。5回表、森下の左中間への一撃は28度、29メートルと上がったが飛距離は141メートル。逆風お構いなしの完ぺきな当たりだった=数値は「NPB+」から=。
幕張名物の風はともかく、2019年に左右中間フェンスを4メートル前に寄せた。できた観客席を「ホームランラグーン」と名づけ、本塁打を呼ぶ、いわば演出を施した。福岡、仙台、名古屋……と外野フェンスを前に寄せる改修が目立つ。12球団本拠地球場は次々に打者有利なヒッターズパークに様変わりしている。
佐藤輝が球団に甲子園のラッキーゾーン復活を要望しているのは投手有利(打者不利)なピッチャーズパークへの不満があったのは理解できる。
だが、そんな甲子園に挑んできたからこそ、佐藤輝も森下も大きくなれたのだ。甲子園に比べれば、どこも柵越えはたやすく感じるだろう。
監督・藤川球児は先の日本ハム3連戦で3連敗した後(28日)、「甲子園での野球」という教訓を話した。「ホームランは華だし素晴らしいが、時にはつなぎ役や自己犠牲も必要になる」
逆に言えば、甲子園以外では一発乱舞の空中戦も良しかと考え直す。今季、ホームゲームは14勝12敗1分けだが、ビジターでは16勝8敗、セ・リーグ最高勝率なのだ。
チーム本塁打41本はリーグ最多。一方で三振427個は中日の430個に次いで多い。一発か三振か、という打撃スタイルが見える。かつて得意にした粘り強さを思う。一発の魅力は承知のうえで、その両立を願っている。 =敬称略=
(編集委員)
