『アニメ大先生』第6回八木美佐子/書:八木美佐子

写真拡大

人生に迷ったとき、元気がほしいとき、あるいはただ日常を忘れて泣きたくなるとき――そのような瞬間にそっと寄り添う存在がアニメである。アニメには人生のヒントや生きる力が詰まっている。
本コラム『アニメ大先生』は、「人生で大切なことはすべてアニメが教えてくれる」をテーマに、アニメを通じて得られる学びや気づきを綴る連載である。

まだまだ夏は終わらない。第6回は、アニメ愛止まらぬアナウンサー・八木美佐子が4度目の登場。語るのは、ホラーも笑いも詰め込んだ怪作『ダンダダン』。

◆ドキドキは怪異だけじゃないじゃんよ! 全部乗せ青春『ダンダダン』

都市伝説や心霊体験――。現代科学では説明できない不思議な存在に心惹かれる人は多いのではないでしょうか。
B級ホラーが好きな私もそのひとりです。もしラーメン屋さんのように注文できるなら「オカルトマシマシ、怪異濃いめ、後味悪め!」と頼みたいところです。
幽霊も宇宙人も、妖怪もラブコメもバトルも”全部乗せ” ――それが、今回ご紹介するアニメ『ダンダダン』です。オカルト現象に翻弄されながら、友情と恋愛とバトルを繰り広げる青春ストーリーとなっています。

私はB級ホラーに漂う”オカルトを絡めた不条理コメディ感”が好きなのですが、この作品にも独特の持ち味を感じます。未知への怖さと笑いが背中合わせになったアンバランスさ、怪異に巻き込まれながらも力業で突破していく勢いは爽快です。

『ダンダダン』は、非現実的な展開の中で、いまどきの高校生たちが活躍する作品です。会話には現代的な言葉遣いが多く見られますが、たとえば妖怪・ターボババアは「クソだらあ」(「だら」は遠州地方の方言)を口癖としています。一見乱暴にも聞こえるこれらの言葉が、むしろ作品世界にリアリティを与えているように感じられます。

実を言うと、暗い学生時代を過ごした私は、大人になった今、アニメのラブコメで心の均衡を保っています。文化祭では、カップルの間を何組割って通れるか心の中で数えていたものです。どれほど歪んでいたのでしょうか。悪質で最低な行為に違いありません。そんな青春コンプレックスを抱えた私でも『ダンダダン』には甘酸っぱさを感じます。不意に差し込まれる等身大の仕草や会話が、まぶしいほどの青春のきらめきを運んでくれるのです。
もし学生の頃に放送されていたら、高校入学時の自己紹介で、「この中に幽霊や宇宙人がいたら、あたしのところに来なさい! クソだらあ」と、涼宮ハルヒばりに言い放っていたかもしれません。本当に危ないところでした。

現在は第2期が放送中で、物語は民俗学的なオカルトへと踏み込んでいきます。「因習」などの要素が好きな方にもおすすめです。アニメならではの演出やテンポにも毎話驚かされます。特に第1期7話は、原作で展開を知っていたにもかかわらず、思わず涙してしまいました。「アクロバティックさらさら」の”生前”を描く回想から、最後のバレエ場面はまさに芸術と呼ぶにふさわしい名シーンでした。

ここでひとつ、怖い話をさせてください。私がいつも説明に困るのは、主人公のひとりオカルンの呪いのきっかけです。心霊スポットでターボババアに遭遇し「あるもの」を奪われるのですが、ネタバレや昨今のコンプライアンスを考えると、口にするのもはばかられます。ああ、なんて怖い。「奴はとんでもないものを盗んでいきました」と、『カリオストロの城』銭形警部の台詞を借りるのが私は一番しっくりきています。何を失ったのか――ぜひその答えはご自身の目で確かめてください。そして、私のこの話を信じるか信じないかはあなた次第です。(今回どうしてもこのワンフレーズを入れたかったゆえの余談です。お付き合いいただきありがとうございます)

【関連写真】八木さんが一番くじで手に入れたセルポ星人とオカルンをチェック!

『ダンダダン』は、オカルトという非日常の中でこそ輝く、10代のまぶしい青春が詰まったアニメです。笑って、驚いて、ちょっぴり泣ける――そんな”全部乗せ”の魅力を、ぜひ味わってみてください。