【訃報】電子掲示板システム「BBS」の共同開発者ウォード・クリステンセン氏が78歳で死去
インターネット上で記事を書き込んだり閲覧したりコメントをつけたりできる電子掲示板(BBS:Bulletin Board System)の共同開発者であるウォード・クリステンセン氏が、2024年10月11日に自宅で亡くなっていたところを発見されました。78歳でした。
Ward Christensen, BBS inventor and architect of our online age, dies at age 78
1945年に生まれたクリステンセン氏は1968年からIBMで働き始め、1970年代に自分のコンピューターを手に入れて独学でプログラミングやコンピューター科学を修得しました。1977年、他人とプログラムを共有する方法を開発するため、クリステンセン氏はバイナリ転送プロトコルであるXMODEMを発明しました。このXMODEMはバイナリファイルをパケットに分割してアナログ電話回線経由で配信するためのもので、クリステンセン氏がMODEM.ASM端末プログラムに実装しました。
XMODEMの成功後、クリステンセン氏はコンピューター愛好家のイベントで出会ったランディ・スース氏と共に、「コンピューター化された留守番電話とメッセージセンターを開発する」というアイデアを実現するべく、開発を進めました。
1978年、アメリカ北部が記録的な大吹雪に見舞われて交通網が機能しなくなったことで、クリステンセン氏とスース氏は顔を合わせることができなくなりました。これにより2人は、温めていたアイデアを実現する必要に迫られたとのこと。そこで、吹雪で会えない間にスース氏はハードウェアを、そしてクリステンセン氏はCBBS(Computerized Bulletin Board System)を開発。そして、1978年2月16日に世界初の電子掲示板システムが誕生したというわけです。Bulletin Board(掲示板)という名前にしたのは、大学や店舗に設置されているような、チラシやメッセージを自由にピンで止められる地域コミュニティを支える掲示板をイメージしたからです。
以下が実際にクリステンセン氏とスース氏が開発したCBBS用マシン。クリステンセン氏らは「取り急ぎででっちあげた」と思われたくなかったために、当初は「開発には4週間かかった」とウソをついていたそうですが、実際は2週間ほどで開発されました。
当時はモデムを使って直接CBBSにダイヤルする必要があり、CBBSのマシンは1本の回線にしか接続されていなかったため、ユーザーは交代でアクセスする必要がありました。しかし、クリステンセン氏がこのCBBSシステムの仕様を公開したこともあり、このシステムは高く評価され、後の電子掲示板システムに大きな影響を与えました。クリステンセン氏やスース氏も、ユーザーアクセスの隙間を縫ってCBBSへの書き込みに参加していたそうです。
クリステンセン氏と共にBBSの生みの親であるスース氏は、2019年に亡くなっています。
【訃報】オンライン掲示板の生みの親ランディ・スース氏死去 - GIGAZINE
クリステンセン氏の訃報は、テクノロジストのローレン・ワインスタイン氏によって公表されました。IT系ニュースサイトのArs Technicaによると、連絡が途絶えたことを心配した友人が警察に通報し、アメリカ・イリノイ州の自宅で亡くなっているクリステンセン氏が発見されたとのこと。
BBS誕生のドキュメンタリーを執筆したジェイソン・スコット氏はクリステンセン氏に密着取材した時のことを振り返り、「クリステンセン氏はとても静かで感じが良く、優しい人物でした。静かに庭の手入れをする管理人のようです」と述べ、謙虚さ、オープンさ、そして分かち合いの精神がクリステンセン氏の残した重要な遺産だと語りました。
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