新型コロナの影響でさまざまな問題が起こっている(2021年4月、時事)

写真拡大

 会社の中で社員を管理する業務を「労務管理」と言います。労働時間の管理、給与計算、安全衛生、労使関係、諸手続きが当てはまります。今、新型コロナ感染拡大の影響で企業経営が圧迫され、長時間労働、未払い残業代などさまざまな問題が発生しています。

 労働者はリスクに備えるために、労働法や雇用についての知識を底上げしています。従来であれば、専門性がなければ知り得なかった情報も入手できるようになりました。しかし、誤用している知識も多いことから、情報をアップデートする必要があります。

解雇の序列が存在する

 今、書評を書くために「労務管理の基本的なところ全部教えちゃいます」(ソシム)を読んでいます。労務管理を得意とする社労士が漫画で分かりやすく解説している点が新しいところです。この本は「人事総務部・労務管理部」向けの書籍ですが、平易であることから、一般の労働者でも十分理解できる内容に仕上がっています。

 むしろ、コロナ禍という世相を鑑みれば、このような本は労働者が読むべきだと考えました。雇用に不安を感じ、不測の事態に備えるのであれば、労働者自身が知識を吸収しなければなりません。

<解雇される序列とは>

 正社員は期限の定めがない雇用契約なので、よほどのことがなければ解雇はできません。会社は次の解雇の4要件を満たさない限り、裁判で負ける可能性が高いからです。

1.人員整理の必要性
2.解雇回避努力義務の履行
3.被解雇者選定の合理性
4.手続きの妥当性

 整理解雇であっても、手続きの妥当性が問われます。説明、協議、納得させるための手続きを踏まない限り無効とされるからです。そのため、人員整理の対象はまずは非正規社員に向かいます。非正規社員は契約期間が過ぎてしまえば、労働者でなくなるからです。パートも同じで、短期契約期間が満了すれば、更新される保証はまったくありません。

 過去の判例では「非正規社員は正規社員より先行して解雇される」ことが明示されています。正社員を整理解雇するためには、非正規従業員の解雇を先行させなければ、解雇権の乱用にあたるとする判断が示されています。

 非正規社員の次は正社員に移行します。影響度が大きければ、正社員も身分を失うことになります。高みの見物をしていられるのは政治家と公務員くらいのものでしょうか。年度末を迎える前に予防策を考えておくことが必要です。

クビを言い渡されたら

 会社から退職を迫られるようになると、何らかの手段を打たないと、時間の経過とともにどんどん苦しい立場に追い込まれます。あなたの選択肢は2つあります。解雇措置の不当性を訴えて会社に残る道を模索するか、厳しい状況を覚悟しながら、次なる働き口を探すかです。まず、どんな行動に出るべきなのか、ここからが本題です。

<労働基準監督署に駆け込む>

 こんなとき、「労基署に駆け込め」とアドバイスする識者が結構います。通常は窓口であしらわれて、相手にしてもらえません。運よく監督官と面会できたとしても、監督官のさじ加減一つです。監督官の知り合いがいれば事情は変わりますが、そういう人はめったにいないでしょう。

 また、労基署が後ろ盾になり、解雇の撤回を求めることはありません。違反があれば是正措置はするかも知れませんが、事案(例えば、解雇)が有効か否かの判断はできません。労基署には司法警察としての権限がありますが、労働契約などの個別の事案については対処のしようがありません。

<労働委員会に調停を依頼>

 労働委員会に調停をお願いするとどうなるのでしょうか。労働委員会は都道府県の行政機関で、労働者個人と事業者の間に生じた職場のトラブルについて、「個別労働関係紛争処理制度」によって、中立・公正な立場でその解決を支援してくれる組織です。

 しかし、労働委員会に相談をしても、実際のあっせん案が出されるまでに1年以上かかります。また、あっせん案に強制力はありません。労働委員会に依頼しても、今の状況を改善することは難しいでしょう。

<スピードがあるのは労組>

 個人で加入できるユニオンも存在します。管理職、非管理職、アルバイト、契約社員を問わず加入が認められています。緊急性を要することを伝えれば、すぐに入会することは可能でしょう。加入手続きをしたら、速やかに団体交渉の申し入れをするはずです。

 この時点で、会社は無視できなくなります。無視すれば、そのまま不当労働行為事件として認定されるからです。団体交渉が開始されれば、解雇はしにくくなりますので、あなたは時間を稼ぐことができます。

最後のとりでは労働審判

 労働審判に出るという手もあります。労働審判とは、不当解雇などに代表される労働者と雇用主との間のトラブルを、労働審判官1名と労働審判員2名が審理し、迅速かつ適正な解決を図ることを目的とする裁判所の手続きのことです。

 連合総研レポートによると、労働審判では解決率が約8割と言われています。平均審理期間は80日です。最高裁によると、2018年に終結した労働事件の平均審理期間は14.5カ月です。5分の1程度の時間で解決できることは大きなメリットです。

 会社を相手に争うには根気が必要です。仮に復職できてもいばらの道です。本来は次のキャリアパスを探した方が生産的かもしれませんが、さまざまな事情や理由により、中にはそれができない人もいるでしょう。本稿を一つの参考にしてください。

 また、冒頭で紹介した労務管理の専門書を読んで知識を深めることも大切です。ユニオンが出版した「会社と戦うための本」などもありますが、実際に争うとなると先鋭化し、後戻りができません。まずは会社の言い分を理解することです。会社の言い分が分かれば、対峙(たいじ)方法のイメージがつきやすくなります。