子供の安全より受験?コロナ休校中に「ウラ家庭教師」を雇う親の焦り

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 新型コロナウイルスの影響でほとんどの小・中学校、そして塾までが休校状態となった。オンライン授業に移行するなどの動きも見られるが、通常通りに戻るまではまだ時間を要するはずだ。学習の遅れが懸念されるが、そんななかで“家庭教師”の需要が増えているのだという。

◆学校の休校期間中だからこそ“学力の差をつけたい”親

「以前は週に一度、中学生の子どもの家庭教師をしていました。コロナ騒動後は週に二度、多い時では三度通っていました」

 こう話すのは、千葉県内在住の大学3年生・米原裕翔さん(仮名・22才)。彼は家庭教師のアルバイトをしているが、緊急事態宣言下のゴールデンウィークは普段よりも忙しかったと話す。とはいえ、米原さんには後ろめたい部分もあるようだ。“三密”を避けるため、家庭教師派遣会社では自宅に家庭教師を派遣することを中止していたが……。

「じつは“ウラ”なんですよね。僕が登録している家庭教師派遣会社からは、コロナの影響でオンラインの授業のみで行うよう言われています。ただ、それをヨシとしない保護者さんもいて。『こっそり自宅に来てくれないか』と相談されました。週一日はオンラインで、もう二日は、派遣会社を通さずに、対面で授業を行っています」(米原さん)

 家庭教師に向かう際には必ずマスクを着用し、家に入れば手洗いやうがいは欠かさないと話すが……。今、こうした個人間での“頼み事”を引き受ける教育従事者もいるというのだ。ある進学塾の関係者が明かす。

「夏休みなど中長期の休暇期間に子どもを塾に通わせる親御さんが多いのと同様に、コロナによる休校期間中に“学力の差をつけたい”とのことで。こんなときだからこそ、集中的に勉強させたい、と。

 塾は“三密”の危険性が高いので、ほとんどのところではビデオチャットを使った授業を行っていますが、大手ではない塾、個人塾などでは、すでに対面の授業を始めています。また、こんなご時世ですから、親御さんやお子さんに、塾が再開したことを他言しないよう指導までしているんです」(進学塾関係者)

 オンライン授業では集中できないという生徒もいる。コロナ感染のリスクがあっても、みんなが休んでいるこの時期こそチャンス、と子どもに勉強をさせる親たち。気持ちはわからないではないが……。

 千葉県内在住の主婦・Eさん(40代)が、筆者の電話取材にこうまくし立てる。

「本来なら、学校がパソコンやスマホを使って授業をやるべきなんですよ! 国も県も市も何もやってくれない。受験はどうするんですか? うちの子の世代だけ、受験で不利になったら誰が責任を取ってくれるんですか? そういう不安から、塾や家庭教師を使うしかないんです」(Eさん)

 今年中学3年生になったばかりの子どもを持つ親だが、高校受験まで残された時間は僅かと、このタイミングで焦りまくっている様子が伺える。

「ゴールデンウィーク前、塾は授業を再開しないということでやめさせました。ネットで一流大学の学生さんが家庭教師を格安で行うという情報を見つけて、そこに連絡を入れました。現在は週4で、東京大学の生徒さん、私大医学部の生徒さんに来てもらっています」(同)

◆健康よりも受験への「焦り」が先に立つ

 こうした「教育熱心な親」を苦々しい目で見るのは、同じく千葉県内の公立中学校教諭・角田伸太郎さん(仮名・30代)だ。

「お気持ちはわかるし、諸外国に比べてリモート授業のシステムの配備が遅れている事情もあるので、正直私どもはなんとも言えません。ただ、なんのための休校かを、皆さんにはもっと理解していただきたい気持ちはある。それこそ、コロナに感染してしまえば勉強や受験どころではなくなり、大きく将来が左右されます。

 子どもが勉強をするのはいいんですけど、だからと言って、三密のなかで家庭教師を使うのはちょっと……。電話をくれれば、生徒の質問に答える程度のことは今もやっているんです」(角田さん)

 特に受験生の子を持つ親の気持ちに理解は示しつつも、勉強よりもまずは「健康に過ごして欲しい」と訴える教師。いま、全国で緊急事態宣言が解除されつつあるが、教育機関も次々に再開している。

 気の緩みだけではなく、こうした「焦り」が子どもに無用なプレッシャーを与えたり、最悪の場合は感染の「第二波」を呼び込む事態にならないか注意して見守りたい。<取材・文/森原ドンタコス>