中国大使館の公式ホームページより

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第二次トランプ政権の発足は、冷戦後の国際秩序を支えてきた前提を根本から揺さぶり、世界の地政学的なパワーバランスを再編させる大きな転換点となっている。

トランプ政権がアメリカ・ファーストの旗印の下で、同盟国を含む全方位への相互関税の導入や、ベネズエラ、イランといった反米国家に対する軍事的・経済的圧力を強める中、米国自身が既存の国際秩序をかく乱する最大の地政学リスクとなっている。

こうしたワシントンの強硬な保護主義と介入主義への回帰は、国際社会、特に経済発展の途上にあるグローバルサウス諸国の間に、かつてない不確実性と米国に対する不信感を醸成している。

米国が多国間の枠組みから撤退し、二国間のディールによる自国利益の最大化を追求する一方で、中国は極めて対照的な外交戦略を展開している。北京は、米国が投げ出した自由貿易の旗手という役割を巧みに引き受け、自らを「グローバル経済秩序の守護神」として演出している。

中国は、一帯一路構想を通じたインフラ投資や、RCEP(地域的な包括的経済連携)のような多国間経済枠組みの強化を前面に押し出し、米国の排他的な姿勢とは対照的な包摂的で互恵的なパートナーというイメージを確立しようとしている。

このブランディングは、米国の制裁や関税によって直接的な打撃を受け、あるいは不安定な市場環境にさらされている多くの途上国にとって、極めて強力な誘引力となっている。

対立する米中を天びんにかける戦略的ヘッジ

グローバルサウス諸国が中国への傾斜を強めている背景には、単なる経済的実利だけでなく、現行の国際システムに対する根深い不満が存在する。これらの諸国の中には、長年にわたりG7を中心とした西側諸国が主導する国際秩序を不公平なルールとして不満を持ってきた国々が少なくない。

トランプ政権の独善的な行動は、そうした認識を裏付けるものとなり、グローバルサウスが独自の声を反映させるための代替案を求める動きを加速させている。

中国は、BRICSの拡大や、開発金融における米ドル依存からの脱却を提唱することで、これらの国々の自律への希求に応える形をとっている。米国の圧力が強まれば強まるほど、これらの国々にとっては、中国との連携が自国の戦略的自律性を確保するための現実的な選択肢として浮上する。

しかし、このグローバルサウスの対中接近が、必ずしも中国の価値観への全面的な同調を意味するわけではない。多くの国々は、米中対立という大国間の覇権争いの中で、自国の利益を最大化するために双方を天びんにかける戦略的ヘッジを行っている。

それでも、米国の予測不可能性が高まり、国際公共財としての安定供給を停止しつつある現状では、中国が提供する経済的安定性や非干渉の姿勢への魅力が相対的に増大していることは否定できない。

米国の保護主義が深まり、国際社会における指導力の空白が広がるにつれ、グローバルサウス諸国の対中傾斜という構造的変化は、一過性の現象に留まらず、次世代の国際秩序を規定する大きな要因となる可能性を秘めている。

なお、グローバルサウス諸国といっても国によって米中それぞれとの距離感や関係性、戦略が異なるため、個別具体的な分析が必要であるが、本稿はあくまでもマクロ的な視点に立って執筆したものである。

文/和田大樹 内外タイムス