『窓ぎわのトットちゃん』を読んだのは小学生の当時だったという

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「ごくフツーの家庭で、フツーの学校で、フツーに育ったフツーの子。そんな私が自信を持てるよう、母は個性を見つけようと必死だったみたいです。“通信簿が悪くても、何か好きなことが見つかればいい”って。『窓ぎわのトットちゃん』(’81年3月発売)の影響なんでしょうね」

そう、小・中学生だった’80年代を振り返るのは、お笑い芸人にしおかすみこさん(46)。個性を育むトモエ学園で過ごす、黒柳徹子さんの幼少期が描かれた自伝『窓ぎわのトットちゃん』が出版されたのは、にしおかさんが小学校に入学したころ。

「電車の車両の中に教室を作ったり、自由な学校だなって羨ましく思って。でも、やっぱり私よりも母のほうが、本の影響を受けていました」

母親はいつも、わが娘の個性を見つけて、伸ばそうとしてくれた。

「でも私には、黒柳徹子さんのように、周囲からはみ出してしまうような個性が何もありませんでした。せいぜい、捻挫をして包帯を巻いたときに、目立ってちょっと気持ちよくなるくらい。だからトットちゃんのことは、すごく羨ましかったんです」

姉が始めた影響で、幼いころから続けていた水泳もーー。

「年を追うごとにまわりとの実力の差がついて、自分が3流、4流の選手だとわかったので、高校3年でやめました。ぽっかり心に穴が開いて“私には何が残っているんだろう”って悩みましたけど」

映画『フラッシュダンス』(’83年)が好きだったこともあり、ダンスに興味を持った時期もあった。

「ブレークダンスの練習をしたんですが、なかなか上達しませんでした」

■芸能界に入ったら目立てるかもしれない

特技を見つけられなかった大学時代、オーディション雑誌で、お笑い芸人の新人ライブのオーディションがあることを知った。

「お笑いが何かもわからないまま、芸能界に入ったら目立つかなっていうだけの理由でした。でも当時は女性芸人が珍しかったので、すぐにステージに立てたんです。勘違いして“とんとん拍子で売れるかな”って思ったけど、まあ、スベる、スベる」

10年間は居酒屋でバイトをしながらの貧乏芸人生活。長いトンネルの中で、自分の“個性”を追い求めた。

「そこで行き着いたのが、ムチを片手にボンデージ衣装に身を包んだSMの女王様キャラと、その姿のまま、ブレークダンスの練習で培った三点倒立をする“犬神家”という一発ギャグでした」

“トットちゃん”の影響で“個性とは”と意識する機会が多かったことが、芸人として知名度を上げる結果につながったのだ。個性を大事にしてくれた母親も、さぞや喜んだのでは?

「いえ、ぜんぜん。私のSM女王姿に愕然としていました。“キャラ作り”であることを理解してもらえず、『ムチを振り回すな』とか、『露出がはげしいからカーディガンを着なさい』とか、電話でイチイチ指摘してきて。まさかトットちゃんを読んで、SMに行き着いてしまうとは思っていなかったんでしょうね(笑)」