ある事件が、永田町で密かに話題となっている。

 7月初め、警視庁は元山口組系暴力団幹部・福家博之被告(50)を電磁的公正証書原本不実記録・同供用などの容疑で逮捕した。その後、福家は起訴されている。

「福家は、都内のエネルギー関連会社H社を乗っ取ろうとして逮捕された。福家は60代の中国人女性経営者と共同代表を務めていたが、2017年6月、女性から株を譲渡されたと偽造した株主総会議事録を法務局に提出。女性の解任など虚偽の内容を登記させた疑いだった」(社会部記者)

 永田町がざわついている理由は、二階俊博自民党幹事長(79)の次男、二階直哉氏(46)が、このH社の役員に名を連ねていたからだ。しかも直哉氏は、福家被告とともに2016年7月15日に、取締役に就任している。

「福家は京都を地盤にしていた経済ヤクザで、過去に複数の逮捕歴がある。9年ほど前に足を洗っているはず」(捜査関係者)

 元ヤクザと大物政治家の子息との接点は、2015年5月、当時総務会長だった二階氏が先導した、約3500人にのぼる大訪中団だった。

 ある企業経営者が証言する。 

「当時福家は、ソーラーパネルを仕入れて販売する太陽光発電事業をやっていた。二階事務所が訪中団に参加する経営者を募っており、福家も参加することになった。そこで、同行していた直哉氏と知り合った。福家のほうから直哉氏に近づいていったようだ」

 女性経営者の知人によれば、2人がH社に関わる経緯は次のようなものだ。

「福家は女性経営者に、『二階はなんでもできる』と紹介した。女性が直哉氏に期待したのが、NK認証の取得でした。直哉氏は『二階の息子と言えば審査は通るよ』と言ったそうです。そこで、2人を取締役に迎えたのが、乗っ取り劇の始まりでした」

 NK認証とは、日本海事協会が、風力発電機の性能などについて適合性を評価するもの。「NK認証がなければ、固定価格買取制度を利用した売電ができない。NK認証の認定試験は非常に厳しく、取得しているメーカーは少ない。取得すれば企業価値が跳ね上がる」(発電事業者)という。

 H社の小型風力発電機は、2人の取締役就任から7カ月後の2017年2月、NK認証の取得に成功する。

「女性は『二階さんの力がなければ取れなかった』と直哉氏に感謝していた。認証を取ったことで、H社はいきなり優良企業となったのです。そこで、福家は、代表取締役会長で大株主だった女性の追放を画策し、偽の書類で密かに解任したのです」(前出・知人)

 乗っ取りは成功したかに見えた。だが、解任されていることに気づいた女性は、無効性を東京地裁に訴えた。その結果、2017年9月14日、地裁は福家被告の代表取締役と取締役としての職務執行停止を決定。さらに、女性は福家被告を刑事告訴したのだった。直哉氏はその間、2017年7月18日に取締役を辞任している。

「直哉氏は、民事訴訟になり、これはまずいと思って辞めたのでしょう。でも、一連の乗っ取り劇を知らなかったとは思えないのです」(同前)

 直哉氏に取材を申し込むと、文書でこう答えた。 

「福家氏が元暴力団員ということは知りませんでした。福家氏ら経営陣の関係が悪くなったという話を聞き、昨年4月ごろ福家氏に辞任の申し出をし会社を辞めました。会社の手続きの遅れで退任登記は7月になっています。(乗っ取りについては)私が辞めた時は知りませんでした」

「二階の息子と言えば〜」発言については「父の名前を出せば、認証が通るなどと言ったことはありません」などと否定した。

 一連の認証について、日本海事協会に問い合わせると「二階俊博氏、直哉氏側からの問い合わせ、働きかけ、圧力の事実はございません」との回答があった。

 直哉氏は、父・二階幹事長が経産相だったころの、2008年8月から2009年9月まで、大臣秘書官を務めている。退官後は、「経産省所管の一般社団法人理事や、コンサルティング業に従事している」(二階派議員秘書)という。だが、公職に就いていたにしては、不用意すぎるのではないか。

 7月27日、自民党本部で父の二階幹事長を直撃した。

ーー直哉氏の事業パートナーである福家氏が逮捕された件を知っているか?
「誰の? 知らねぇよ」

ーーH社という会社に聞き覚えは?
「ない、知らない」

ーー事件が起きた会社だが。 
「別人格だから、息子は。俺は知らねぇよ」

 女性経営者は現在中国に帰国。再来日するつもりはないという。政界一の “親中派” を自任する二階幹事長。子の不始末を、知らなかったではすまされない。
(週刊FLASH 2018年8月14日号)