いじめ防止対策推進法に基づく対応の流れ

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 いじめの疑いがある「重大事態」について、奈良市教育委員会が2月以降、第三者委員会を設置できない状態が続いている。

 いじめ防止対策推進法は、調査組織を設けるよう教育委員会などに義務付けているが、委員となる弁護士の報酬を巡り、奈良弁護士会が「低すぎる」と派遣を見合わせているためだ。報酬額は各地で引き上げられており、奈良市も見直しを検討している。(奈良支局 小松夕夏)

重大事態2件、めど立たず

 奈良市教委によると、現在、重大事態と判断している事案が2件あり、いずれも調査委員会を設置できないままになっている。

 うち1件で被害を訴えている市立小学校の女児の保護者によると、昨年夏頃から同級生に金銭を要求されたり、足を踏まれたりし、昨年10月から半年近く不登校になった。現在も精神的に不安定な状態が続いているという。

 市教委によると、昨年11月に重大事態に該当すると判断し、今年1月、奈良弁護士会に委員の推薦を依頼。だが、弁護士会は「業務量に報酬が見合っていない」と推薦を見送り、現在も設置のめどは立っていない。

 女児の保護者は取材に、「子どもの命に関わるかもしれないのに、市教委も弁護士会も危機感が足りない」と憤り、「時間がたてば、関係者の記憶があいまいになり、調査結果にも影響が出てしまう」と危惧した。

「業務負担量を考えて」

 奈良市の規則では、調査委は教育や法律、医療などの有識者7人以内で構成すると定める。市教委は委員の選定にあたり、公平性・中立性を確保するため、特定の個人ではなく、奈良県医師会や奈良弁護士会に推薦依頼を出している。

 報酬は条例で、▽会議(日額1万4000円)▽調査(同2万5000円)▽報告書作成(30分5000円、1日8万円が限度)――などと規定。奈良弁護士会は、今の報酬では委員のなり手がいなくなるという危機感から、全ての業務について、1時間当たり2万2000円以上の報酬を要求している。

 大手の弁護士事務所の場合、1時間3万〜5万円で企業からの依頼を請け負うケースも多い。奈良弁護士会によると、いじめの調査は聞き取りが数十人に上ることもあり、他の依頼を断って請け負う弁護士もいるという。上羽徹会長は「今の額では事務所経営が成り立たない。市には業務負担量を考えてほしい」と訴える。

 市教委は、報酬に関する条例改正を検討している。金額は弁護士会と協議し、6月議会での改正案提出を目指している。市教委の担当者は「児童と保護者には調査を長く待たせてしまい申し訳ない。きちんと調査し、再発防止を図るため、準備を進めたい」としている。

各地で増額

 大阪府では2019年、報酬額の低さから大阪弁護士会が弁護士の派遣を見合わせ、半年以上、第三者委を開けなくなった。府は20年、会議や調査などの報酬を日額9800円から1時間9800円に改定。今年4月にも同1万700円に増額した。

 広島県尾道市も委員から報酬の改定を求められ、昨年4月、それまでの日額1万円(会議費のみ)から、審議は日額3万円、調査・報告書作成は日額2万円などとした。

 日本弁護士連合会は18年、第三者委の委員推薦に関するガイドラインで、「報酬は拘束時間を基準とするのが妥当」と指摘。各地の弁護士会による有料法律相談は「30分5000円程度」と紹介している。

 いじめ問題の解決に取り組むNPO法人「ストップいじめ!ナビ」(東京)の須永祐慈副代表(46)は「調査委の報酬が低いと、弁護士は事務所を運営していくため、他の業務も多数引き受けなければならず、調査が長期化することもある」と指摘。「自治体の財政規模で報酬に差が生じないよう、国が補助金を出すなどの対策が必要ではないか」と語る。

 いじめ防止対策推進法=2013年9月施行。いじめで子どもの生命や心身、財産に大きな被害が生じたり、長期間不登校になったりした疑いのあるケースを「重大事態」と定義し、教育委員会や学校に調査組織の設置を義務付けている。重大事態は24年度、過去最多の1404件だった。