豪州代表のデールは韓国に渡りKIAタイガースの正遊撃手として開幕を迎えた【写真:小林靖】

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WBCから続く旅…元オリックスのデール、韓国プロ野球で絶好調

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が終わっても、野球の旅を続けている選手がいる。昨季オリックスで育成選手としてプレーしたジャリッド・デール内野手はWBCに豪州代表として参加。そのまま韓国へ渡りKIAタイガースの正遊撃手として開幕を迎えた。そこから12試合連続安打の大活躍。日韓の野球を体験して感じた差と、大阪での思い出を教えてくれた。

「日本の食べ物は世界で一番おいしいと思いますよ。セブン―イレブンにも行ったし、ラーメンなどいつも何かしら食べていました。日本の食文化は本当に楽しめました。タコヤキも大好きです。日本の食べ物で嫌いなものは、ひとつもありません」

 デールは1年間過ごした大阪での記憶を、ユーモアたっぷりに口にした。現在25歳。16歳だった2017年にパドレスとマイナー契約を結び、米国での挑戦をスタートした。わずかな期間だが3Aまで昇格し、2023年にはWBC代表にも選ばれた。そして昨季、オリックスに育成選手として加わった。2軍で41試合に出場し、打率.297。初めて挑んだアジアの野球では、多くの“違い”も感じた。

「一番驚いたのはバントの戦略の多さですね。本当にたくさんのバント戦術があって、慣れるまでに少し時間がかかりましたが、野球選手として成長する助けになりました」

 オフにはさらなるステップアップにつながる誘いがあった。11月に母国のメルボルン・エイシズに加わり韓国の秋季教育リーグに参加すると、韓国プロ野球に今年誕生した「アジア枠」を使いKIAタイガースが契約を申し出たのだ。オリックスでは支配下に上がることなく終わった。国は変われど、スポットライトが当たる1軍の世界は何よりの魅力だった。

「韓国のトップチームでプレーできるのは自分にとって大きなチャンスだと思いました。自分のキャリアにおいて、韓国プロ野球でプレーするのは非常に重要だと考えたんです」

「日本に残りたい気持ちもあった」奄美大島で感じた両国の違い

 年が明け、参加した春季キャンプは鹿児島・奄美大島からスタート。「だから、まだ日本にいるような感覚がありました」と笑う。「小さな町で、レストランもこぢんまりとした地元の店ばかりだったので、お店はこんなに多くの野球選手が来るとは思っていなかったかもしれませんね」と苦笑い。「でも、一番の目的は野球に集中することでしたからね。施設は素晴らしかったですし、選手にとっては野球に没頭できる良い環境でした」。開幕に向け、チームメートと交流を深めた。日本と韓国の違いにも頭を巡らせた。

「日本と韓国の野球はよく似ていると思います。ただ、日本の方がバントの練習や戦略にはより多くの時間を割いていましたね。韓国でもバントはやりますが、日本ほど徹底してはいません。そういった違いをすべて知っておくのは良いことだと思います」

 KIAを離れて豪州代表に合流した3月上旬、練習試合を戦った宮崎でオリックスナインと再会した。「バファローズで過ごした時間は本当に楽しかったです。素晴らしい思い出がたくさんあります。選手もコーチもみんな大好きでした」。思い出を胸に、前に進む。

「もちろん日本に残りたい気持ちもありましたが、今の自分のキャリアにとっては、KIAでプレーすることがベストな選択肢だと思っています」

 今季、韓国プロ野球が採用したアジア枠は各球団1人で、日本人7人を含む10人が海を渡った。その中でデールは唯一の野手という点でも、どんな成績を残すのか注目されている。WBCでは最後の韓国戦で、準々決勝進出を左右する失策もあった。直後に韓国に渡ったが、オープン戦では打率.129という不振。ただ開幕からは本来の姿を取り戻した。4月14日まで、デビューから13試合連続安打はKIAのチーム記録、さらに韓国プロ野球でも歴代4位だ。出塁にこだわる姿勢と好守で、居場所を作りつつある。

 そして自らのプレーが、今後の豪州球界にまで影響すると知っている。「近年、韓国のプロ野球と豪州には強いつながりができています。多くの韓国選手が豪州のウインターリーグに来るようになりましたし、逆に韓国野球界にとっても新しい選手をリーグに迎えるのは良いことなのではないでしょうか。できるだけ長くプレーできればと思います」。日韓が豪州選手の成長に力を貸す流れがもっと太くなれば、この地域の野球はさらに発展していく。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)