八木勇征、芝居の経験が広げたアーティストとしての表現力 「歌詞の読み方が変わった」
現在放送中の月9ドラマ『ヤンドク!』(フジテレビ系)は、橋本環奈演じる主人公が、個性豊かな医師たちと共に医療現場の常識を覆していく痛快医療エンターテインメント。物語が後半戦に突入し、新たなキーパーソンとして登場するのが、八木勇征演じる小田桐蒼だ。FANTASTICSのボーカルとして活躍しながら、俳優としても着実にキャリアを重ねてきた八木。本作では、かつては熱意ある研修医だったものの、ある出来事をきっかけに救命の現場を離れてしまった医師という、繊細な役どころに挑んでいる。憧れだったという月9の現場で感じたこと、そしてアーティスト活動と俳優業が互いに与え合う影響について、話を聞いた。【インタビューの最後には、チェキプレゼント企画あり】
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憧れの月9ドラマへの特別な思い
ーーまずは、今回のオファーを受けたときの心境を教えてください。
八木勇征(以下、八木):お話をいただいたのはかなり前だったのですが、出演が決まったときは本当に嬉しかったです。月9ドラマは、僕が子供の頃から触れてきた特別なドラマ枠です。そこに自分が出演できること、そして医療ものでありながらコメディタッチな描写もたくさんあるような、すごく魅力的な作品に関われたことに喜びを感じました。ファンの方々にも白衣姿を楽しんでもらいたいですね。
ーー八木さんにとって、月9枠のドラマで印象に残っている作品はありますか?
八木:『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系)ですね。当時僕は小学生くらいだったのですが、あの作品が大好きでした。毎週、母親と一緒に観るのが楽しみだったんです。その日は絶対に早く帰って、早めにご飯を食べて備えていました(笑)。今、その枠のドラマに出演させていただけるというのは、すごく光栄です。
ーーご家族でご覧になっていたのですね。八木さんのお母様やお祖母様は看護師をされているとお聞きしました。今回、医者を演じることに対して何か特別な思い入れはありましたか?
八木:実際の病院でのお医者さんの様子を思い出して、どういった先生のタイプがあるかを思い出しながら役作りをしました。それに、コロナ禍で僕たちのアーティスト活動が止まってしまったときも、医療従事者の方々は懸命に戦ってくださっていましたよね。そうした姿にもものすごくリスペクトを持っています。だからこそ、命を救う仕事に対する向き合い方や精神的な部分を大切に、役に同調(シンクロ)したいと思って演じました。
命の重さを知る医師・小田桐蒼
ーー八木さん演じる小田桐というキャラクターについてはどう捉えていますか?
八木:小田桐は、本来はとても心優しい人物だと思います。患者さん一人ひとりと向き合いすぎたからこそ、救えなかった命に対して「もっと自分がこうしていれば」と傷つき、命に関わる現場を離れる決断をしてしまった。一見逃げのようにも見えますが、それだけ命の重さを知っている、ある意味で芯が通っている人なんだと思います。
ーー研修医時代の回想シーンと、現在の小田桐では雰囲気がかなり違いますね。
八木:そうですね。研修医時代はハツラツとしていて、茶目っ気もあるような性格だったと思うんです。でも、そこからある出来事を経ていろいろなことに足を踏み入れるのが臆病になってしまい、丸くなってしまった。そのビフォーアフターのギャップや、落ち着いてしまった現在の姿というのは、現場で監督ともすり合わせて演じ分けました。
橋本環奈は“太陽のような方”
ーー主演の橋本環奈さんとの共演はいかがでしたか?
八木:橋本さんは太陽のような方だと感じました。座長として現場の中心になって、共演者やスタッフの方々と協力して、手を取り合いながら、明るい現場を作ってくださっています。僕がクランクインしたときも、初日とは思えないくらいアットホームで温かい空気で迎え入れてくれて、本当に感謝しています。
ーー向井理さんともかなり多くのシーンで共演されていますね。
八木:向井さんとは撮影の最初のシーンでご一緒したのですが、本当に紳士で優しくて。「僕も40代になったらこういう大人になりたい」と終始思わされるような、スーパーカッコいい方でした。
ーーお母様が向井さんのファンだという話を聞きました。
八木:大ファンなんです(笑)。撮影の合間にお話しさせていただいたときに、「実は母が大好きなんです」とお伝えできました。ただ、まだ母には僕が向井さんにそのことを伝えたとは言っていなくて……ちょっともったいぶっています。
ーー役作りに関してですが、八木さんは事前に準備を綿密にしていくタイプですか? それとも現場の空気感を重視するタイプですか?
八木:最初にキャラクターのキーワードになるものをいくつか探してから現場に臨むことはあります。小田桐の場合は、「もともとなりたかった夢である、命に関わる現場で働くことを諦めてしまうぐらい大きな出来事があった」という一つのポイントを置いて、そこからバックボーンを肉付けをしていく感じです。ただ、お芝居は一人でするものではないので、ガチガチに固めすぎず、現場で監督とすり合わせたり、相手の方のお芝居で生まれたりするものを大切にしています。
ーー対面して感じたのですが、小田桐の持つ“優しさ”は八木さんご自身とも重なる部分があるように感じます。
八木:“心優しい部分”や“人への思いやり”には共感できますね。僕自身、普段からあまり怒らないですし、人にものを伝えるときも言い方一つで伝わり方が変わってくるじゃないですか。そういった配慮ができる部分は、自分自身を強く持っているからこそだと思いますし、演じていて共感できる部分が多かったです。
芝居が変えたアーティスト業への向き合い方
ーー八木さんはアーティスト活動と俳優業を両立されていますが、双方の活動が、互いに良い影響を与え合っていると感じることはありますか?
八木:もちろんです。MV撮影での表情作りや楽曲の世界観の表現など、俳優活動で培ったものがアーティスト業に活きることもあれば、その逆もたくさんあります。お芝居を通して、自分の中になかった感情や、経験したことのない環境に触れることが、アーティスト業にかなり良い影響を与えています。
ーー具体的に、お芝居の経験が音楽活動に活きていると感じる瞬間は?
八木:歌詞の読み方が変わりました。台本からキャラクターの心情を掴んで、感情のルートを考えていく作業って、歌詞を解釈することとすごく似ているんです。曲調は明るいのに、歌詞の一部分だけ切なさや儚さが混じっているような曲もあります。「これはどういう感情なんだろう?」「笑いながら泣いているのかもしれないし、泣きながら笑って歌っているのかもしれない」といった複雑な感情の組み合わせや声色の作り方を、お芝居を経てより深く表現できるようになった気がします。考え方そのものが変わりましたね。
ーー最後に、見どころを含め視聴者にメッセージをお願いします。
八木:物語の後半、小田桐が登場することで物語がかなり変化していきます。コメディらしさはありつつも、より真剣に命と向き合うシーンが増えていくと思います。レギュラー陣の皆さんのキャラクターの魅力はそのままに、小田桐が加わることで新しい化学反応が見られると思いますので、ぜひ最終回に向けて、より深く『ヤンドク!』の世界観にのめり込んでご覧ください。(文=玉置正義)
