2021年から国産新型車への自動ブレーキ搭載が義務に

対歩行者プリクラッシュセーフティの作動画面(トヨタ)

クルマが障害物を認識し、自動でブレーキをかけてくれる衝突被害軽減ブレーキ(以下、自動ブレーキ)。2020年に道路運送車両法が改正され、2021年11月から国産新型車では自動ブレーキの搭載が必須となりました。

自動ブレーキシステムでは、対象物を検知するための「眼」となるセンサーが不可欠。クルマのセンサーは使い分けがなされており、対象物の距離や位置などによって単眼カメラやミリ波レーダー、赤外線レーザーを搭載するのが一般的です。

これらのセンサーにはそれぞれ特長があるため、複数のセンサーを併用することでそれぞれの弱点を補完し、より安全性能を高めています。

このように、自動ブレーキは非常に優れたシステムですが、必ずしも事故を防いでくれるわけではありません。環境や条件によっては、作動しないケースもあるため注意が必要です。

自動ブレーキの搭載により事故は減っているの?

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そもそも、自動ブレーキの搭載が必須となったのは、居眠り運転による事故や高齢ドライバーによる事故などが多発し、社会問題化したため。自動ブレーキ搭載を義務化することによって、これらの事故を防ぐ目的があります。

実際に自動ブレーキが広く普及したことで、交通事故の類型で最も多い「追突事故」は年々減少しており、2016年に184,576件あった追突事故は、2021年には93,098件まで減少しています。

交通事故分析センターの研究結果でも、低~中速域にかけて自動ブレーキによる追突事故低減効果が得られていることが判明しているため、事故を防ぐための有用なシステムであることは間違いないでしょう。

統計年 交通事故件数(追突) 2016年 184,576件 2017年 167,845件 2018年 149,561件 2019年 126,062件 2020年 95,520件 2021年 93,098件

警察庁『事故類型別交通事故件数の推移』より作成

環境や条件によっては作動しないケースがある

【夜】対歩行者プリクラッシュセーフティ(トヨタ)

しかし、自動ブレーキは事故低減に有効なシステムではあるものの、場合によっては作動しないこともあるため注意が必要です。

国土交通省は、自動ブレーキが作動しない恐れのある局面を再現し、実際にテストしている動画をホームページ上で公開しています。動画内では、以下のシチュエーションにおいてテストが行われています。

規定の速度を超えて走行

街灯しかついていない暗い道路を走行

早朝や夕方など、逆光の太陽が眩しい道路を走行

薄暗い夕立ちの道路を走行

滑りやすい路面を走行

急な下り坂を走行

1~4のシチュエーションでは、障害物をうまく検知できなかった、あるいは検知していても、外的要因によって本来の性能が発揮されなかったため、障害物に衝突。

5~6のシチュエーションでは、自動ブレーキは作動しているものの、制動距離が伸びてしまったために、止まりきれず衝突してしまいました。

このように、走行中の環境や条件によっては、『障害物を正しく認識できない』『衝突を回避できない』といった場面があります。自動ブレーキで事故を完全に防ぐことはできないため、自動ブレーキに依存せず、ドライバー自身が注意を払って運転する必要があるのです。

自動ブレーキは”完全無欠な装置”ではない

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自動ブレーキは機能的な問題のほかにも、ドライバーの認識の面にも問題があるといわれています。

過去にJAFが実施したアンケートによれば、半数弱のドライバーが自動ブレーキを”過信”していることが判明しました。交通事故分析センターも、研究結果において「装置に対する正しい知識を伝えるための啓蒙活動が必要」としており、自動ブレーキの機能を正しく理解することが求められています。

最近のクルマは、単眼カメラやミリ波レーダーなどを組み合わせており、年々安全性が高まってきているのは間違いありません。

各自動車メーカーは「トヨタセーフティセンス」「アイサイト」「スマートアシスト」など、優れた安全装置を開発していますが、これらはあくまでも万が一のときの”補助装置”。有能な装置ではあるものの、万能ではないことをしっかりと認識しておくことが大切です。

非常に暗い道路や滑りやすい道路、逆光や雨によって視界が悪くなっている道路などを走行する場合、自動ブレーキでは衝突を回避できないこともあるため、こういったシチュエーションではより一層注意を払いながら運転しましょう。