フランス代表歴代最多キャップ142試合の記録をもつリリアン・テュラム(36)が1日、現役引退を発表した。レキップ紙などが報じている。

 今オフにバルセロナとの契約が切れたテュラムは、パリ・サンジェルマン(PSG)で現役を続ける意向だった。6月末に2年契約に合意し、あとは契約前に“形式的”に受けるだけと言われる健康診断を経てサイン、という運びだったが、その際に心臓に異常が見つかり、契約は白紙撤回となった。

 テュラムは記者会見の席で、「遺伝的に心臓が大きいが、つねに心臓発作の危険がある病気ではない」と話した。再検査の結果、一時疑われた心臓肥大症ではないことが判明したという。「他のスポーツ選手同様、心臓の筋肉がかなり発達していた。たぶんそれが年を追うごとに程度を増して、年齢的に見ても難しい状態に達したのだろう」と説明している。

 まだプレーを続けられる状態にあり、PSGのビルヌーブ会長からも現役続行の説得を受けたが、家族の反対で引退を決意した模様だ。「母親との話し合いで、やめるときが来たと理解した。PSGと契約を結びたかったが、多くのことが問題になった。とくに家族のことだ。家族はやめてほしいと願った。大切な人たちに何らかの恐れを抱かせるとしたら、賢明ではないと考えた」と語る。10年以上前になるが、バスケットボール選手だった兄弟をプレー中の心臓発作が原因で亡くしていることが大きく影響したようだ。
 
 この1月間「やめようと思う日もあれば、続けようと思う日もあった。しかしもうこの決断を覆すことはない。とてもつらい。こんな形でキャリアを終えることになるとは思ってもみなかった」と苦渋の決断を振り返る。

 心臓に異常が見つかったあとの7月12日には、W杯優勝10周年のメモリアル・マッチに出場した。およそ15分プレーしただけで交代したが、大歓声に送られてピッチを去るテュラムの目には涙が光っていた。このときにおそらく、ほぼ引退を決めていたのではないかと思われる。「ドクターから大丈夫だと電話を受けて、他の選手にもそう伝えたが、監督もチームメイトも、なるべくプレーさせないように気を配っていた」と語る。自分だけでなく、自分を見る周りの目も変わってしまったことを理解したのだろう。

 夏の休暇中、海辺で子供たちと遊んだときも無意識のうちに全力疾走を避けていたという。子供たちには「PSGのマルディーニになる」と約束していたが、それを実現することができなかった。