トイレットペーパーは「値段上がらず」、お米は「秋に3割安」…誰も教えてくれなかった「物価予想」ビールが安くなる意外な理由とは
ホルムズ海峡の事実上封鎖による原油高、異常気象、さらには円安など、先行きへの不安を煽るニュースが連日飛び交っているが、結局のところ、私たちに身近な日用品や食品の価格はどう変わる可能性があるのか。
家計直撃の値上げ品目から意外な値下げ品目まで専門家たちに取材し、 今後1年の気になる価格動向を「雨」「曇り」「晴れ」の3分類で予測した。
■値上げ不可避の「コンドーム」「マグロ」「小麦」
まずは「雨」模様となった品目から。やはり、原油やナフサ価格の高騰が値上げ予想の最大要因となった。
「5月下旬から3割以上の値上げが確定のゴミ袋やポリ袋は代替が利かず、家計に痛い打撃です」
こう語るのは、外国為替ディーラーや東京金融取引所などを渡り歩き、ラジオDJや経済番組のキャスターとしても活動する「DJ Nobby」氏(以下Nobby氏)だ。
同氏は、ほかの日用品への波及もすさまじいと解説する。
「たとえば、洗濯用洗剤やシャンプーやリンスは、ボトルがポリエチレン製で、中身の界面活性剤も石油由来のエチレンから作られるため、原油高とナフサ不足のダブルパンチを受けています」
経済政策や企業の経営戦略に詳しい生活経済ジャーナリストの柏木理佳氏は、「石油由来成分配合のシェービングクリームや歯磨き粉、ナイロンやポリエステルといった化学繊維を使った衣類全般のコストも上がる」と警告する。
同じく、石油由来製品のコンドームも大雨だ。
「世界最大手のカレックス社は、最大3割の値上げの可能性を明言しています」(Nobby氏)
原油高騰は、燃料費として食卓も直撃する。
「船の燃料代高騰で、遠洋漁業のマグロやカツオへの価格波及が十分に考えられます。輸送時の鮮度を保つのに欠かせない発泡スチロールや、夜間輸送コストも約3割上がり、かまぼこなど加工品は1割ほど上がっています」(柏木氏)
農業への影響も深刻だ。
「野菜類は、ビニール袋代やガソリン代が上昇。猛暑で収穫減が予想される夏野菜は、3割高の恐れがあります。果物ではバナナの追熟に使うガス代が、すでに1割上昇しています」(同前)
原油以外でも値上げラッシュは続く。まずは小麦製品だ。柏木氏が続ける。
「輸入小麦の政府売渡価格が、4月に2.5%引き上げられました。食パンや即席麺の店頭価格に転嫁される来年1〜2月には、2段階の本格的な値上げとなる可能性があります」
鶏卵も厳しい。
「鳥インフルエンザなどの影響で、1パック300円超えの高止まりが続いていますが、クリスマス需要が重なる冬に向けては、最悪500円台になる現実的な懸念があります」(同前)
食用油も高騰が予想される。
「地中海の干ばつで、オリーブ油は600〜800円台が定着。サラダ油も原材料の大豆・なたね相場の上昇圧力が強く、年内の値下がりは見込めません。これらが直撃すれば、マヨネーズやドレッシングの値上げは不可避です」(Nobby氏)
肉類も買いづらくなる。
「飼料代や肥料の高騰に加え、円安で輸入肉が上がっています。その結果、国産肉へのシフトが起き、豚肉の卸売相場は過去最高水準に。牛肉も同様に高騰しています」(同前)
■横ばいで踏みとどまる「トイレットペーパー」「乳製品」
すぐには大幅な価格転嫁に至らず、横ばい推移が予測される「曇り」の品目もある。
トイレットペーパーは買い溜め騒動が危惧されたが、第一ライフ資産運用経済研究所・主席エコノミストの星野卓也氏は次のように分析する。
「原料は古紙やパルプで、直接的に石油は使われていません。直近のデータでも一時的な売り上げ増にとどまり、深刻なパニック買いには至っていません。買い溜めによる値上がりの悪影響のほうが大きいですが、現在は国の呼びかけが功を奏し、落ち着いています」
柏木氏も「紙は、国内製造のため急激に高騰する事態にはならず、適正な範囲の値上げにとどまるでしょう」と同意する。
牛乳はどうだろうか。
「牛の飼料高騰で高止まりしていますが、値上がりによる消費量減少が起きており、メーカーもこれ以上の価格転嫁は難しい。横ばい価格が維持されるでしょう」(同前)
Nobby氏も「値上げすると売れないジレンマに陥るため、急騰しないはず」と分析する。
チーズなどの乳製品については、やや状況が異なる。
「牛乳の消費量が落ちているぶんは、余った生乳がバターやチーズなどの加工品向けにまわされる。原料自体は余っているものの、エネルギーコストや物流費の上昇が製造原価を押し上げているため、値下がりしにくい。年内に緩やかな上昇はあり得ても、急騰はないでしょう」(同)
チョコレートも曇り空だ。
「カカオ不足と輸送費高騰で、前年比で7割近く値上がりした商品もありましたが、ここにきて風向きは変わりつつあります。国際カカオ価格は、西アフリカの天候回復で明確な下落トレンドです。
ただし、メーカーがすでに内容量を減らすなど製品構成を変えているため、店頭価格が目に見えて下がる展開にはなりにくい。『これ以上は上がらない』程度に受け止めるのが妥当です」(同)
■値下がり濃厚な「白米」「ビール」「イワシ」
今後1年で値下がりが期待できる「晴れ」の品目もある。
注目は白米だ。2024年の「令和の米騒動」では、急激に5キロ5000円超まで高騰したが、状況は一変している。
「じつは、令和7年産(2025年秋収穫)は全国的に豊作で、在庫が大幅に積み上がっています。農水省の作付見通し調査でも適正生産量を上回っており、一部証券会社からは『暴落リスク』すら指摘されています。今年の秋に新米が出回るころには、5キロで3500円程度まで下がる可能性があります」(Nobby氏)
柏木氏も「来年の春先までには2000円台になる可能性もある。小麦価格が上がれば、お米へのハードルはさらに下がるはずです」と、パンからの代替が進むことを予測する。
ビール党にも朗報だ。
「今年10月の酒税法改正で、ビール・発泡酒・新ジャンルの酒税が一本化されます。ビールは1缶約9円の減税となり、実売価格で5〜10%下がることが期待できます。ビール好きは堂々と飲める秋が来るでしょう」(Nobby氏)
海の幸で、例外的に「晴れ」マークがついたのがイワシだ。魚介類全般が輸送費高騰で苦戦するなか、「イワシは記録的な豊漁が続いており、昨年は千葉県の銚子漁港で前年同月比約1900倍の漁獲量を記録。この状況は今後も続く見込みで、缶詰なども安くなるかもしれません」(柏木氏)
コーヒーも先行きは明るい。
「2024年に急騰したコーヒー豆は、ブラジルの大幅増産を背景に国際相場は下落トレンドに入っています。生産から半年〜1年遅れて価格に反映されるため、店頭価格が安くなるのを実感できるのは年末から2027年初頭にかけてになるでしょう」(Nobby氏)
原油高騰の余波が広がるなかでも、気候や豊漁、あるいは税制改正の恩恵によって「晴れ」となる品目を見極めることが重要だ。
