党内には「反高市」の不穏なムード(左から麻生太郎・副総裁、鈴木俊一・幹事長/時事通信フォト)

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 先の衆院選を圧勝に導いた高市早苗・首相は、自民党で「一強体制」を築いたように見えたが、ここにきて異変が起きている。党執行部や側近との対立が深まり、看板政策をめぐる反発も表面化している。そうしたなか、解体されたはずの「派閥」までもが息を吹き返し、もともと無派閥の高市首相への包囲網となりつつある。"獅子身中の虫"だらけとなった党内では、誰が、何を狙っているのか――。【全3回の第1回】

【図解】「高市おろし」を狙う“獅子身中の虫”289人相関図

麻生・鈴木ラインが掌握する自民党執行部と火花

 総選挙で延期されていた自民党大会が4月12日に開かれた。会場には早苗グッズなどが当たるカプセルトイが20台並べられ、ゲストの世良公則がヒット曲「燃えろいい女」のサビを「燃えろ、サナエ〜」と歌うと首相も立ち上がってノリノリ。党をあげた「サナ活」で異様な盛り上がりとなった。

 この「高市一強」を誇示する演出とは裏腹に党内は「反高市」の不穏なムードが漂っている。

 党大会の前々日、高市首相は官邸で麻生太郎・副総裁、その義弟の鈴木俊一・幹事長、萩生田光一・幹事長代行と1時間ほど昼食を共にした。

「総理と党執行部の緊張関係が高まっているため、萩生田さんが『麻生さん、鈴木さんとメシを食って腹を割って話をしたほうが良い』と総理に勧めたと聞いている。しかし、話は全く弾まなかったようです」(官邸スタッフ)

 総選挙での圧勝以来、高市首相と麻生・鈴木ラインが掌握する自民党執行部は水面下で激しく火花を散らしている。

「選挙後の人事で総理が麻生氏を衆院議長に"棚上げ"しようと工作して不興を買ったのをはじめ、鈴木幹事長ら執行部に『予算案の年度内成立』を命じ、国会運営を担う梶山弘志・国対委員長が強く反対すると、総理は相当、腹に据えかねた様子だった。鈴木幹事長や萩生田さんがなだめたが、梶山さんのほうが、国会運営の現実がわかっていない総理と距離を置くようになったという」(自民党ベテラン議員)

 3月の訪米前にはコバホークこと小林鷹之・政調会長とも衝突した。

 小林氏はNHKの『日曜討論』(3月15日)でホルムズ海峡を通る船舶の護衛に自衛隊艦船を派遣することに、「紛争が続いている状況では慎重に判断すべきだ」と反対論を展開。後日、小林氏は官邸に呼び出されたという。

「総理は自衛隊派遣の可能性を探っていたが、小林政調会長ら執行部は強硬に反対した。党執行部の賛成が得られず、総理は日米首脳会談で派遣の約束をすることを断念することとなった」(前出の自民党ベテラン議員)

 予算の年度内成立という無理難題を押し付けられた執行部からすれば、首相が前向きだった自衛隊派遣を潰すことで"意趣返し"したことになる。

 自衛隊派遣をめぐって安倍内閣の首相秘書官兼首相補佐官を務めた今井尚哉・現内閣官房参与が官邸で高市首相と大喧嘩したとされる騒動を『週刊文春』『週刊新潮』(4月16日号)などが報じた。

「高市首相は国会で『完全な誤報』と答弁して、火消しに躍起になるという異例の対応を取った。総理と今井さんとの間に距離があることが、周辺から意図的に大袈裟にリークされたという見方もある」(官邸関係者)

 孤高を好む首相は官邸のごく一部の側近しか入ることができない「隠し部屋」と呼ばれる部屋に籠もることが多い。限られた側近と周辺の扱いの差が騒動の火種となっている可能性もありそうだ。

 高市首相の強権発動に対し、自民党執行部が「高市包囲網」を敷き、総理周辺でも互いの緊張関係が高まっているのは間違いなさそうだ。

看板政策にも自民党内から次々と反旗

 首相の看板政策にも自民党内から次々と反旗が翻り出した。

 冤罪被害を防止する再審制度見直し問題(刑事訴訟法改正)では、弁護士でもある稲田朋美・元政調会長が政府案に「自民党は検察の守護神ではない」と反対。政府は法案提出先送りに追い込まれた。

 首相の"悲願"とも言える「国旗損壊罪」創設でも巻き返しが起きた。高市首相は罰則付きの刑法改正を主張してきたが、反対派の岩屋毅・前外相は「必要ない」と主張し、党内では刑法改正ではなく、「罰則なし」の議員立法にする議論が強まっている。

(第2回に続く)

※週刊ポスト2026年5月1日号