ギルティ炭酸「NOPE」が爆発的ヒットも…50代の読者に問いたい「この怪しいフレーバーは1984年発売のSaSuKeにソックリではないか?」
サントリーから3月24日に発売された「罪と背徳の、ギルティ炭酸」を謳う「NOPE(ノープ)」の売れ行きが好調だという。同社によると、発売から1週間で出荷本数2000万本を突破し、これは令和以降に発売したサントリー炭酸飲料史上、最速なのだそうだ。
ネットではその味やCMも話題になっている。CMは刑務所のような場所で囚人が大量のジャンクフードを食べ、NOPEを飲み、その黒い炭酸の海に包まれる、といった内容で、NOPEの怪しげな世界観を表現していた。【中川淳一郎・ネットニュース編集者】
「SaSuKe」に似ている?
コーラやペプシによく似た褐色系のこの炭酸飲料。サントリーは同商品のコンセプトを以下のように説明している。

〈ニンゲンらしく生きるのは罪ですカ? 寝たい。食べたい。飲みたい。ちいさなギルティくらい許さなきゃ。良い人ぶるのはもうおしまい。ストレスを溶かそう。しあわセで心を満たそう。本能のままに生きる方が、すごくニンゲンらしい。その欲望は敵じゃあリません。生涯の友なのですよ。〉
つまり、暴飲暴食をすることや、背徳感のある飲料であるNOPEを飲むことは人間らしさの表れである、というのがコンセプトなのである。
そして肝心の味はというと、〈完熟・トロピカルフルーツやスパイス類、バニリンなど99種以上の魅惑の香りを複雑にブレンドしたNOPEオリジナルレシピ〉であり、さらに「魅惑のギルティアロマオイル」を配合しているのだという。
私も恐る恐る、NOPEを実際に飲んでみた。一口目でまず抱いたのは、背徳感ではなく「怪しいフレーバーだな」といった感想だった。それが何に似ているかといえば、ドクターペッパーであり、Mr. PiBB(コカ・コーラ社が米国で販売している炭酸飲料)であり、沖縄でよく見かける「ルートビア」であり、「チェリーコーク」的なのである。
何より、「そっくりじゃないか」と思ったのが1984年に同じくサントリーが発売した炭酸飲料「SaSuKe」だ。さて、このドリンクを覚えている読者は果たして何人いるだろうか。
当時小学生だった筆者の周囲ではSaSuKeのCMが話題となっていた。何しろ内容が意味不明なのである。クノイチが登場するCMはモノクロで、1960年代時代活劇風。彼女が江戸の街を走りながら、怪獣風の生物を頭上で抱えたり、巨大ガマガエルを召喚したりする。場面が切り替わり、牧師風の白人男性が電話を受けて「ナニ、サスケ?」と繰り返す。このカタコトな日本語を少年達はよくマネしたものだ。
ハマるか懲りるか
このSaSuKeのキャッチコピーは「コーラの前を横切るヤツ、冒険活劇飲料」で、CMでは「リン酸・カフェインは無添加で」とも謳い、コーラとは違うことを明確に意識していた。だが、売上が振るわなかったのか、わずか1年でこの商品は消えた。
パッケージは白と黒の市松模様であり、今回のNOPEのCMに登場する白黒の囚人服と若干似ている。1年間ながら強烈な印象を残した伝説の飲料SaSuKeが、今回のNOPEの発売により、その怪しくも懐かしい味を思い出す40代後半以降の人がそれなりにいたのではなかろうか。
ところでこの手の飲料は「ハマってしまい飲み続ける」か「一度飲んでもう懲りる」といったことになりがちだが、熱狂的なファンも少なからず誕生するものだ。
そんな「怪しい系飲料」の熱狂的ファンの一人で、「Dr.ペッパー(ドクペ)こそ、この世に存在する飲み物で一番ウマい」が自説のライター・編集者の漆原直行さんに、NOPEやドクペの魅力について伺った。まずは、NOPEの味について。
「おいしいと思いましたが、ドクペほどではない……というのが正直な感想。コカ・コーラよりも上。ペプシコーラと同格くらいな順位(もちろんドクペはその上)。チェリーコークが好きなので、似たテイストがあるNOPEには好感を持ちます。確かにSaSuKeにも似たところがあるので、世代的に郷愁感を少し覚えます。ただ、いうほど『ギルティ』感はないです。もっと振り切った味を期待していたので。後味の爽やかさも意識した印象。ちょっと日和ったのでは」
そんな漆原さんは、改めて「ドクペこそ至高」という理由を熱を込めながら語った。
「味が複雑で、個性が際立っているところが好きです。バチッとした甘みに重なるバニラやキャラメルの芳香が魅力的。そして、杏仁豆腐のような後味を残しながら、喉奧に香味がシュワシュワと流れ込んでいくのが心地よいのです。
コーラもおいしい飲み物ではありますが、味の複雑さ、奥深さの点でドクペには劣ります。甘いモノが好きなので、バニラ、キャラメル系の風味は当然好きです。だから、ドクペ好きはスイーツ好きな人が多いかもしれません。
ドクペは炭酸飲料ではありますが、コーラやサイダーなどとは異なるベクトルの飲料として捉えています。ドクペは孤高の存在。これだけでしか味わえないもの。『なんか、炭酸飲料が飲みたいな』と思うから飲むのではなく、『ドクペが飲みたい』と明確に意識して飲んでいるように思います。そういう意味ではルートビアに近いかもしれません。ルートビアも、独特ですよね。ちなみにルートビアも、僕は大好きです。
味に複雑さ、奥深さを追求するのが好きな人──つまりは探究心の強い人が怪しい飲み物の底なし沼にハマっていくのではないでしょうか」
NOPEの今後に注目
漆原さんが続ける。
「コカ・コーラって、トヨタ車みたいなんですよ。いちばん売れているし、実際イイ車(おいしい飲み物)なんですけど、良くも悪くも『無難』という印象。これが実に面白くない。コカ・コーラ基準でみると、ペプシのほうがちょっとクセがあるというか、個性を感じます。だからコーラなら、ペプシのほうが好きなんです。クルマなら、ホンダやスバル、かつての三菱のほうに惹かれてしまう。
別に個性的な人間アピールをしたいわけではないし、無理して奇をてらっているわけでもない。ただ、無難なものには惹かれない。楽しくない。だから、ナナメ上の商品、個性を感じる商品により魅力を感じてしまう。そういう心理もあるように感じます。
それに『炭酸飲料はなんだかんだ言ってコカ・コーラが最強』みたいな人って、妙に保守的で多数派に属していると安心できる、みたいな心性が強く、たいてい『ドクペが好き? マジで? 信じられない。あんな不味いモン』とか『あー、個性をアピールしたいのね、ハイハイ』みたいな少数派を軽んじ、小バカにしたような物言いをするタイプが多いような印象もありますね。『数こそ正義』『勝てば官軍』みたいな傲慢さが見え隠れします。
もちろん『ドクペは味が好きだから飲んでいる』というのが一番の理由ですけど、広く『食』全般に対する興味の深さ、好奇心の強さが背景にはあるように思います。そして、多数派、勝ち組に対する反骨心や反感すらも、多少含んでいるかもしれません。無難に生きて、何が楽しいの、と」
最後は、何やら生き様や哲学的な議論に発展してしまったが、それほどまでに怪しい飲料は一部の好事家の心を掴んで離さないのだろう。NOPEは果たしてそのような存在になれるのか、引き続き注目していきたい。
中川淳一郎・ネットニュース編集者
デイリー新潮編集部
