『ばけばけ』写真提供=NHK

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 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

参考:『ばけばけ』第30話、タエ(北川景子)と三之丞(板垣李光人)が松江に戻ってきた理由

 第6週では、花田旅館の主人・平太(生瀬勝久)との軋轢をきっかけにヘブン(トミー・バストウ)が新たな住まいを探すことに。異国の地でひとり暮らしを始めるヘブンのために、錦織(吉沢亮)は身の回りの世話ができる女中探しに奔走する。

 女中といっても、錦織が求めているのは“どっちもできる女性”。朝ドラで扱うにはかなりセンシティブな内容で、制作統括の橋爪國臣は「わかる人にはわかる。わからない人にはわからない」という絶妙なラインを狙ったと語る。

「子どもも観ている時間帯なので、言葉遣いは意識しました。ただ、脚本のふじき(みつ彦)さんは何事も笑いを交えつつ表現するのが得意な方。その辺りは面白く書いていただけていると思いますし、直接表現しない良さもあると感じています。あのセリフは知事(佐野史郎)が喋っていますが、今の時代も偉い人たちは本当のことを明言せずに、どちらとも取れるような言い方をすることがある。そういったキャラ付けにもなっていると思います」

 トキが頑なに拒否する“夜の仕事”だが、「トキは『洋妾(ラシャメン)になりたくない』と錦織の依頼を拒みますが、ただ職業や生き方を否定するような描き方にはしたくなくて、表現には配慮しました」と話した。

 一方、橋爪は「小泉セツさんが本当にラシャメンだったかは、記録に残っていないんです」とも語り、こう続ける。

「いろいろな資料の中にはラシャメンだったのかもしれないと読み取れる資料もありますが、小泉家にとっては隠したい歴史であって。小泉八雲の息子である一雄さんの著書『父小泉八雲』にも清廉潔白だったと書かれていますし、伝記でもそういった表現が多いんです。ですから、そこに踏み込んだドラマだと思います。『清廉潔白で、好きだから結婚しました。シンデレラの王子様が来ました!』ということではなく、いろいろな苦労がある時代の中で生きていかなければいけない。そういった生き様が、この作品の重要なテーマだと思っています」

 ドラマ制作にあたり、八雲・セツ夫妻のひ孫にあたる小泉凡氏にも、この展開の意図やスタッフの思いを説明。「凡さんは『資料を見る限りそうだと思うし、そのテーマはとても理解ができるので、ぜひ書いてください』とおっしゃってくださいました」と、許可を得て脚本を作り上げた。

「とはいえ佐野史郎さんからは、『君たち攻めたね、大丈夫か?』と言われました(笑)。『みんな知ってはいたけれど、隠してきたことだよ』と。ですが、(トキを主人公にするからには)そこは逃げずに正面から向き合っていきたいなと思って台本にしました」

 ちなみに、ヘブン付きの女中の給金は20円。第6週ではそれと比較するように、しじみは1合2銭、むき身が4銭、花田旅館で働く女中の月収は90銭、新米教師の月収が4円と、お金の価値についても丁寧に描かれてきた。

 橋爪は「今とは貨幣価値がまったく違うので、そのまま20円と言っても誰もわかりませんし、彼女たちの生活感に、お金の価値は大きく関わると思っていて。“これだけ働いても、食べる分しか買えない”といったことがよりリアルに伝わるだろうと、当時の物価や記録を参考にしながら金額を決めていきました」と明かす。

 ものによって物価は変わるため一概には言えないが、当時の1円はおおよそ現在の3~4万円程度。「20円というと、およそ月収70~80万円。年収で1000万近い金額になるので、当時の女性にとっては破格の給料だと思います」とした。

 第29話では、「家族のために」と女中になることを断ったトキだが、ここからどんな心境の変化が起こるのか。ふじきならではの匙加減にも注目しながら、物語の行方を見守りたい。(文=nakamura omame)