〈コロナ検査バブル検証〉「感染者が増えると『キター』って感じを繰り返した3年間で…」PCR検査職員が決意の告発「自分たちのやったことが医療機関として正しいことだったのかわからなくなってきた」

「うちの医者や理事長なんかは『頼む、もう一回波が来てくれ』とか言って毎日、手を合わせていました」そう告白するのは、都内の医療法人に勤める40代男性。男性の職場は無料PCR検査場の運営やコロナ禍での往診もおこなってきた。男性は国が3200億円かけ、これまで進めてきた“コロナ対策”に疑問を抱いている。

国が3200億円の予算を投じた無料で検査ができる事業

「陽性者の数が減っていくとテンションだだ下がり、上がっていくと第○波キターって感じを繰り返してきた3年間でした。でも5類に引き下げられる5月で無料検査が終わるので、PCRバブルも赤信号ですね」

新型コロナウイルス感染症のパンデミック宣言をしたWHO(世界保健機関)が検査法として指定したことで、世界中の誰もが知るところとなったPCR検査法。その内容や信憑性は別にして、ここまで急速に浸透した「病気の検査方法」は歴史上初めてだろう。

そしてそれは、医療関係者にとって濡れ手に粟のビジネスチャンスでもあった。

「マスク」の装着が、事実上の強制から理由もなく「自己判断」に委ねられることになったことも、狐につままれたような気分だ。何が正しくて何が正しくないのかモヤモヤは収まらない。

しかしその裏で、確実にボロ儲けしている連中がいることだけははっきりしてきた。衝撃の告白から、「コロナ禍」という名のもとのバブルの検証の扉を開けてみよう。

告発する40代男性(撮影・集英社オンライン)

冒頭の証言は「自分たちのやってきたことが医療機関として正しいことだったのかわからなくなってきた。きちんとさらけ出して、検証するべきだと思いました」と集英社オンライン編集部ニュース班に連絡をくれた、40代の男性のものだ。詳細なインタビューに応じてくれた男性の口からは、驚くべき「PCRバブル」の実態が次々と飛び出した。

「私が所属している医療法人は、東京都に指定を受けたPCRのオフィシャル検査場を運営しています。みなさんも外出時に駅前のテナントや公園のテントに『無料PCR』のノボリを立てた検査場を目にされてきたと思いますが、あれの一つです。うちはクリニックに自前のPCR検査機を持っているので、検査場で回収した検体を運んで機械にセットし判定する作業を繰り返してきました」

PCR検査はいわゆる新型コロナが流行し始めた2020年の5月以降、症状や感染者との接触歴の有無にかかわらず、公的保険が適用されることになった。医師の判断で打出の小槌が振れるPCRバブルの誕生である。

さらに21年12月からは国が3200億円の予算を投じ、都道府県が実施主体となり、感染に不安を持つ住民が無料で検査ができる事業がスタートした。全国に約1万3千件の無料検査場が設置され、事業者にはPCR検査1件あたり上限9500円、抗原検査同4000円の補助金が支払われる仕組みが整ったわけだ。

男性が続ける。

無料PCR検査場(※写真はイメージ)

「一番忙しかった去年の7~8月ごろは、PCRの無料検査だけで毎日150人は来られていました。感染の波が下火になるにつれて検査に来られる方も減ってきて、年が明けてからは一日50人というところですね。若い人は少なくて、40~50代の方が多いです。

検査して陽性判定が出る割合もガクッと減っていて、最近は陽性者ゼロという日も結構多く、収束しつつあることを実感していますね。ビジネス的には喜ばしくないことなので、うちの医者や理事長なんかは『頼む、もう一回波が来てくれ』とか言って毎日、手を合わせていましたよ」

理事長はマイカーを何千万円もする超高級外車に乗り換えた

繁忙期と比べて「客」が3分の1に減った現状に対応すべく、10人いたアルバイトも4人に減った。実際、新型コロナが感染症法上の分類で2類から5類に引き下げられる5月7日をもって、この無料検査も終了する。彼らにとっては「憂き目」なのだろう。

「そうなんでしょうね。繁忙期はPCR無料検査だけで毎月4千万円ぐらい売り上げがあったわけですから。この間、うちの理事長はクルマを何千万円もする超高級外車に乗り換えたし、海外に豪遊しに行ってほとんど帰ってきませんでした。まあ、コロナで儲けていたのはこの無料検査だけじゃありませんしね」

新型コロナウイルス(※写真はイメージです)

男性が勤めるクリニックは在宅医療も行っており、以前から在宅往診で医師を派遣することが特徴の一つだった。コロナ対応となると、さらにここに「ドラ」が乗ってくるという。

PCR検査だけやりに来てくれという依頼も結構あります。これは患者さんにとっては無料ではなく健康保険適用になりますが、夜間往診帯に、多い時で30件ぐらいはこれがあって、検体回収して機械にかけて判定し、結果をお伝えするサービスです。これはこれで補助金が出ますし、陽性判定が出たら患者さんは『コロナ患者』になり、公費負担で1円もかからない。医療機関には保険請求プラス補助金が入ってくる仕組みになっているので、陽性者の往診に行くと1人あたりなんだかんだで10万円ぐらい入ってきます」

陽性だからといって症状があるとは限らない。隔離期間が終わるまで何の症状も出ないケースがあるのは、この「病気」に関しては既に周知の事実だろう。医療機関にとっては純利を得る貴重な手段だ。麻雀で言えば、最小役なのにドラだけで満貫を上がるようなお得感がある。よく出来たビジネスモデルだ。

男性がさらに詳細を語る。

往診する医師(※写真はイメージ)

「コロナにかかると、家から出られなくなってしまうので、往診してあげると患者さんからは感謝の言葉しかいただかない。症状があったとしても、今どきはただの風邪がほとんどですから、一応、血中酸素濃度を測って『安静にして栄養つけてください』と言うぐらいです。それでも診察料が6~7万円、補助金が陽性者1人あたり3~4万円になるので、トータルで10万円ぐらいになるんですよ。金額は、東京都さまが定めたことなので、文句も言えませんし」

「再検査します。何なら往診もできますよ」と営業をかけた

無料PCRにしても往診にしても、結局は我々の血税が巡り巡って充当されているのだから絶句するしかない。

「申し訳ないぐらい儲かってます。私が担当なので間違いない数字なんですけど、その補助金だけで毎月2千万円から4千万円は請求かけてきましたからね。もちろん無料PCR検査の分は別ですよ。陽性者が増えれば増えるだけ儲かる衝撃のシステムです」

儲かるビジネスだが、検査の信頼度はどうなのか。

「不正な検査をしていることは断じてありませんが、偽陽性は少なくありません。うちの機械は一度に100体近い検体をかけられるんですが、機械の内部に汚染が広がると全部が陽性になったりすることもあります。

逆のケースもあります。判定は機械が弾き出す色のデータとCt値と呼ばれる数値、あとはグラフの推移という3項目について行い、3つ揃うと陽性確定なんですが、2項目陽性の場合は陰性とはいえ怪しいので『再検査します。何なら往診もできますよ』と営業をかけます。大体が不安なかたなので、もう一回来られるケースが多いですね。そうなれば補助金ももう一件分増えますし、往診に行こうものなら例によって10万ぐらい儲かりますんで。患者さんからすると『こんな夜遅くに家までわざわざありがとう』って感謝しかされないので、罪悪感もなかった」

告発する40代男性(撮影・集英社オンライン)

この男性は事務職員だが、個々の医師にとってもおいしいビジネスなのか。

「私が帯同していた夜間では、時給は1万円ぐらいなので一晩で10万円ぐらいになります。コロナ陽性者といっても症状がある人でも経過観察ぐらいしかすることはないので『ご気分いかがですか。体温測りますね。お薬は必要ですか』と聞くぐらいで、あとは移動の車の中で寝ているだけ。だから仕事自体はキツイとは言い難いですね。お医者さん専門の派遣会社があってそこに登録している方に来てもらうんですが、みなさん喜んでました」

3年に及ぶ「新型コロナウイルス感染症との闘い」とは誰が何と闘い、誰が敗れて誰が勝ったのか。無症状感染、新生活習慣、専門家会議などのキーワードは「感染症対策」ではなく「セールストーク」だったのか。

今後、倫理観という観点からもきちんとした検証が必要である。

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取材・文 集英社オンライン編集部ニュース班